前提

内装工事を担う少人数の会社で進めたい、新人を受け入れる体制づくり

新人を迎えるために整えたいのは、給与や休日の制度だけでなく、一緒に働く社員の受け入れ方です。 ある内装系の専門工事会社では、社長が制度の整理を進める一方で、新しい人への接し方をどう変えていくかが大きな課題になっていました。

日本人社員は社長を含めて10名弱で、外国人の仲間も働いています。社員の中心は30代後半から40代で、内装の下地・仕上げ施工を主力に、現場管理も担う会社です。仕事は、2〜3人の少人数で現場に入ることが多いといいます。

社長が目指しているのは、これまでと同じ働き方や価値観の人だけを迎える会社ではありません。

「全員が同じである必要はない。この人はこの人でいいと思っている」

家庭の事情で土曜日に働けない人も、その条件を会社として認めたい。ただ、以前には、月曜から土曜まで働く社員が、土曜日に休む社員を快く受け入れられないことがありました。「自分は働くのに、なぜあの人は休むのか」という感覚が、接し方にも表れていたそうです。

だからこそ、新しい人を入れる前に、違いを受け入れられる会社にしたい。社長の相談の中心は、制度づくりの先にある、現場で新人を支える社員の考え方と行動をどう育てるかという点でした。

課題

社長への「はい」と、新人に向き合うときの行動の隔たり

方針を伝えたときの返事だけでは、社員がどこまで納得しているかは分かりません。 この会社の社長も、伝える言葉がないのではなく、伝えた内容が現場の行動につながるかに難しさを感じていました。

「僕が言うと、みんな基本的に『はい』しか言わないんです」

異論があっても、その場では「はい」と答える。けれど、本心から納得していなければ、実際に新人と向き合うときには、自分の気持ちや従来の感覚で接してしまうのではないか。社長は、そこを問題として捉えていました。

ここでは、「方針を聞いた」「意味が分かった」「その方針で接することに納得した」を分けて考える必要があります。会社が異なる働き方を認めると知っていても、自分とは違う条件で働く人を受け入れることに引っかかりが残っていれば、接し方までは変わりにくいためです。

社長が求めていたのも、単に指示に従ってもらうことではありませんでした。

「心の底から納得できなければ、いざそのときには自分の気持ちでやってしまう」

目指すのは、社長の前で正しい返事ができる状態ではなく、社長がいない現場でも、会社の方針に沿って新人に向き合える状態です。そのためには、同じ方針を繰り返し伝えるだけでなく、社員がどう受け止めているのかを確かめる段階が必要になります。

背景

2〜3人の現場では、一人の接し方から新人が距離を取りにくい構造

少人数の現場では、一人の厳しい言動が新人の働きやすさを大きく左右します。 会社全体では受け入れる方針でも、日々一緒に働く相手との関係が難しければ、新人はその影響を受け続けることになります。

この会社でも、社長は「誰か一人でも厳しい接し方をする人がいたら、小さい会社だからこそ続かない」と懸念していました。大きな会社なら部署を変える選択肢があっても、2〜3人で現場を進める会社では、その相手と関わらずに仕事をすることは簡単ではありません。

一方で、社長が現場のやり取りを常に見られるわけでもありません。社員はそれぞれ現場へ出ており、事務所で毎日顔を合わせる職場とは違います。社長自身も、経営側だけが理解を深めても、現場の社員に伝わらなければ意味がないと話していました。

この二つが重なると、経営側には方針が共有できたように見えても、新人が接する相手の行動は変わっていない、という隔たりが残り得ます。

ただし、接し方が厳しい理由を、本人の性格や意欲だけで決めつけることもできません。別の少人数の設備工事会社では、コミュニケーション研修を受けたベテラン社員から、「正直、どう接すればいいのか分からなかった」「こういうことは教わったことがなかった」という声があったそうです。

仕事を教える技能があることと、相手に合わせた伝え方を身につけていることは別です。 方針への納得が足りないのか、接し方を学ぶ機会がなかったのか。この違いを確認できると、必要な教育も絞りやすくなります。

解決

社員の本音を確かめ、育成担当者の接し方から方針を現場に落とす進め方

第三者による社員ヒアリングを起点に、育成を担う人への教育と、方針の共有・浸透・仕組み化をつなげることが、検討の筋道になります。 最初から研修内容を決めるのではなく、経営と現場の間でどこに認識差があるかを見てから、対象者と取り組みを選びます。

第三者のヒアリングで「はい」の内側を確認する

第三者を入れる意味は、社長に代わって同じ方針を強く伝えることだけではありません。社長との関係では言いにくいことも聞き、社員が何に納得し、何に引っかかっているのかを整理することにあります。

ヒアリングでは、相談にあった具体的な論点に沿って、次のような認識を確認することが考えられます。

  • 会社が異なる働き方を認める方針を、社員はどう理解しているか
  • 自分とは違う条件で働く人に対して、どのような受け止め方をしているか
  • 新人に教える立場になったとき、接し方のどこに難しさを感じるか

これは、方針に賛成か反対かを判定するための聞き取りではありません。方針そのものへの認識差と、実際の接し方に関する困りごとを分けるための確認です。現場がすでに受け入れられている点も含めて整理すれば、変えるべき部分を必要以上に広げずに済みます。

育成を任せたい社員を見極め、教育の対象を絞る

全員に方針を共有することと、全員に同じ教育をすることは分けて考えられます。この会社の社長も、人を育てられる社員はまだ少なく、重点的に教育したい相手には目星がついていると話していました。

対象者を考える際には、施工技能だけでなく、周囲への配慮や、新人に向き合う姿勢も判断軸になります。社長自身も、作業ができるだけでなく、周りのことを気にかけられる人を大切にしたいと考えていました。

その候補者に対して、ヒアリングで見えた認識差や困りごとに合わせ、コミュニケーション研修などを検討します。方針への理解を深める必要がある人と、理解はしていても伝え方を学ぶ必要がある人では、教育で重きを置く部分が異なります。

誰に何を学んでもらうかは、役職や経験年数だけでなく、新人育成で担ってほしい役割から決めることが大切です。

技能指導は社内、接し方の教育は外部と役割を分ける

外部の力を活用しても、施工技能の指導まで一括して任せられるとは限りません。この相談でも、技能面は社内で担い、考え方やコミュニケーションの教育には外部の知見を取り入れる役割分担が論点になりました。

現場の技能・知識を教える役割は社内に残しつつ、育成を担う社員自身が、人との向き合い方を学ぶ。その組み合わせであれば、社内にある施工の強みを活かしながら、これまで学ぶ機会の少なかった領域を補えます。

外部に依頼する際も、「社員の意識を変えてほしい」だけではなく、会社が大切にしたい受け入れ方と、社内で担う技能指導の範囲を共有することが、取り組みを具体化する前提になります。

方針の共有、現場への浸透、仕組み化を分けて進める

取り組みは、方針を共有する段階、現場に浸透させる段階、仕組みに落とす段階に分けて捉えます。

まず、異なる働き方や価値観を認めるという会社の姿勢を共有します。次に、社員の受け止め方を確認しながら、育成担当者への教育を通じて、新人への接し方につなげます。その先で、育成や定着を支える仕組み、必要に応じた評価制度への反映を検討する流れです。

この順番であれば、理念や制度を整えたことだけで一区切りにせず、「現場でどう受け止められているか」に立ち戻れます。研修を実施したかではなく、社長がいない場でも新人を支える行動につながっているかを、取り組みの軸に置きます。

まとめ

社長への「はい」を現場の行動につなげるには、方針を伝えることと、社員が納得して実践できるようになることを分けて考える必要があります。

2〜3人で動く建設現場では、一人の接し方の影響が大きく、新人が相手と距離を取ることも簡単ではありません。だからこそ、第三者のヒアリングで経営と現場の認識差を確かめ、育成を担う社員を見極めて、必要な教育につなげる意味があります。

技能は社内で教え、接し方の教育には外部の知見も活用する。その役割分担を土台に、方針共有から浸透、仕組み化へ進めていくことが、新人を育てる会社づくりの一歩になります。

新人を支える社員教育の整理から

「方針は伝えているけれど、現場がどう受け止めているか分からない」という段階から、整理を始められます。 全社員への方針共有が必要なのか、育成担当者への教育を優先するのかも、会社ごとの状況を見ながら考えることができます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新人の受け入れについても、社員へのヒアリングや育成を担う人の役割整理を通じて、自社に合う進め方を一緒に検討します。

「うちの場合は何から整理すればよいか」というご相談でも構いません。無理にサービスの導入をお勧めすることはありませんので、現在の状況を整理する機会としてご相談ください。

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