社員面談を終え、急ぎの職人募集を先に進めている建設会社
社員の本音を聞くところまでは進んだものの、その後の改善が保留になっている建設会社の相談です。 住宅の改修工事などを手がけ、社員の現場監督と外部の職人・施工管理担当者が仕事を支えています。
先に実施した社員面談では、監督の業務負担や、社内での声のかけ方について意見が出ていました。相談を受け止める経営側にも、「せっかく相談してくれたことを、何とかしてあげたい」という思いがありました。
一方、現場では大工の確保が急ぎでした。改修工事が増え、外部の担当者からも、今の体制では厳しいという声が届いていたためです。経営者は、まず職人募集を進める判断をしました。
その間に、一部の社員から質問が来るようになりました。
「今後はどういうふうに進めるんですか」
面談をしたからこそ、社員はその先を見ています。経営者も、その期待を感じていました。ただ、どの声から手をつけるかは、まだ整理しきれていませんでした。
面談で出た要望と、職人募集を優先する理由がつながっていない状態
職人募集を優先する判断そのものよりも、面談で聞いた声を今後どう扱うかが伝わっていないことが課題でした。
経営者にとって、職人不足への対応は現場を支えるための具体策です。ただし、それは社員面談で出た要望を受けて決めたものではありませんでした。以前からの懸案に、外部の担当者からの声も重なった判断でした。
社員が話したのは、監督の負担や、相談しにくさ、管理職の声かけなどです。そこへの対応が見えないまま募集だけが進むと、社員には、自分たちの話がどう受け止められたのかがわかりません。
経営者は、面談に臨んだ社員の期待をこう捉えていました。
「これで何か変わるのか、改善されるのかと思って、面談に向けて話してくれた」
すべての要望に、すぐ答える必要はありません。ただ、「今取り組むこと」と「後で検討すること」を分け、その理由を返すところまでが、面談後の対応です。 そこが曖昧だと、経営側は動いているつもりでも、社員には改善の道筋が見えにくくなります。
電話の多さ、声かけ、既存の支援が一つの改善課題として混ざっていた状況
改善が進みにくかった背景には、性質の違う困りごとと、すでに行っている対応が混在していたことがあります。 「コミュニケーションをよくする」だけでは、次の行動を選びにくい状態でした。
たとえば、監督への連絡の多さです。午前中だけで数十件の電話が入るという話があり、メールも一日に大量に届いていました。担当者同士で直接やり取りできれば、中継する負担を減らせるのではないか。そんな提案も出ていました。
ただ、連絡手段がなかったわけではありません。事務担当と監督、監督同士、取引先との間などに、すでに複数のメッセージグループがありました。経営者自身も、その全体像を把握しきれてはいませんでした。
また、夜の連絡には、協力会社側の事情もありました。遠方の現場へ出て、事務所へ戻るのが夜になる。その後に段取りの連絡をするため、監督とのやり取りも遅くなっていました。単に「昼間に連絡してほしい」と伝えるだけでは、調整が難しい面があります。
一方、負担軽減が進んだ仕事もありました。警察への申請などを事務側で担うようにしたことで、監督が現場に集中しやすくなっていました。
「申請に行くだけで、三時間、四時間かかる」
その仕事を分担したことについて、社員からも役に立っているという声がありました。
管理職への支援も同様です。話を聞き進めると、経営者はすでに、経験豊かな外部の人に個別の指導を依頼していました。新たに研修を考える前に、その支援内容を確かめる必要があったのです。
「何もできていない」と捉えるのではなく、効いている対応、まだ試していない対応、既存の支援で扱っている内容を分けることが、再出発の土台になります。
経営者への個別ヒアリングから、幹部の合意と社員への回答へ進む手順
先に研修や連絡ツールを決めるのではなく、経営者の考えと社員の要望、既存の対応を整理してから、打ち手を選ぶ進め方が合っています。 この会社でも、まず経営者と個別に話す時間を設ける方針が確認されました。改善の成果が出た段階ではなく、そのための整理を始める段階です。
まず、経営者と個別に「当初の悩み」と「今の困りごと」を確かめる
個別ヒアリングでは、社員の発言を順に読み上げるより、経営者が何を変えたかったのかに立ち戻ります。今回、整理の対象になったのは次の内容です。
- 社員面談を始める前に、経営者が困っていたこと
- 面談で社員の声を聞き、改めて気になったこと
- 業務分担や外部からの指導など、すでに行っている対応
- その対応でよくなったことと、今も残っている困りごと
経営側で社員の相談を受けている人にも、個別に話を聞く進め方が検討されました。近い関係でも、同じ課題を同じ重さで見ているとは限りません。まず、それぞれの認識を確かめます。
新しい支援を足す前に、何がすでに動いているかを確認することが、対応の重複や方針のずれを防ぎます。
次に、経営幹部で「何を先に変えるか」をそろえる
個別に聞いた内容をもとに、経営者、管理部門を担う人、現場の中核となる幹部で、課題認識をそろえます。
ここでは、「職人が足りない」と「社員が相談しにくい」を同じ対策で解こうとしないことが大切です。募集で対応することと、社内の仕事の進め方で対応することを分けます。
判断軸は、社員のどの負担を減らすのか、自社で変えられる範囲はどこか、すでに有効な対応を活かせるかです。
職人募集の結果を待つ間にも、社内の業務分担や聞き方の整理は進められます。募集が落ち着いてからと一括りにせず、並行できることを選んでいく考え方です。
打ち手は、連絡の負担と声かけの問題を分けて選ぶ
電話の中継が負担なら、既存のメッセージグループで誰と誰がつながっているかを確認します。そのうえで、担当者同士で直接やり取りできる部分を検討します。グループを増やす前に、今の連絡経路を確かめる順番です。
夜の連絡が負担なら、協力会社の現場移動や帰社時間も聞きます。相手の事情を確認し、自社側の進め方と合わせて調整します。まだ試していないことと、調整したが難しかったことも分けておきます。
業務量の負担なら、申請業務を事務側へ分担したように、すでに効果のある対応を土台にします。監督が担う必要のある仕事と、分担できる仕事を改めて確かめる方向です。
相談の受け止め方や声かけが課題なら、現場監督を対象に、聞き方や言葉の使い方を学ぶ短い勉強会も選択肢になります。ただし、既存の個別指導で何を扱っているかを確認し、足りない部分に絞ります。
連絡方法の問題は連絡経路へ、業務量の問題は分担へ、相談しにくさは聞き方・声かけへと、困りごとに対応する手段を選びます。
最後に、発言者を守りながら社員へ対応方針を返す
面談の内容は、本人にそのまま伝えればよいわけではありません。この会社では、経営者が管理職へ、事務担当が怖がっていると伝えたことがありました。その後、管理職が事務担当へ働きかけたという話も出ていました。
改善してほしいという意図でも、誰の相談かがわかる形で伝わると、次は話しづらくなる可能性があります。
個人の訴えをそのまま渡すのではなく、会社として改善したい行動に整理して伝える配慮が必要です。 少人数の職場では、名前を伏せても、役割や出来事から発言者がわかることがあります。共有してよい内容かを、先に確かめます。
社員へは、個別の相談内容を広げずに、取り組む課題、当面の対応、保留する内容と理由を返します。すぐ解決できないことも、検討の対象から消えたわけではないと伝われば、次の話につなげやすくなります。
まとめ
社員面談後に必要なのは、出てきた要望をすべて実行することではなく、経営として優先順位を決め、その対応方針を返すことです。
急ぎの職人募集を優先する場面はあります。それでも、面談で聞いた声への対応まで、すべて止める必要はありません。
まず経営者と個別に話し、当初の悩み、社員の要望、既存の支援を整理します。次に幹部間で認識をそろえ、連絡方法、業務分担、聞き方・声かけの中から、課題に合う対応を選びます。
その際は、相談した社員が特定されないように配慮します。「話してもらう場」と「会社として対応を決める場」をつなぐことが、本音を具体策へ変える一歩になります。
社員面談の声を、次の対応方針に整理するために
「面談の記録はあるけれど、何から動けばよいかわからない」「すでに頼んでいる支援との役割を整理したい」。そんな段階から、考え始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。社員面談後の課題についても、経営者の考えと現場の声を整理し、自社に合う進め方を一緒に考えます。
施策が決まっていなくても、「うちの場合は何から整理すべきか」というご相談で構いません。 無理な営業はいたしませんので、状況を整理する相手が必要なときに、お気軽にご相談ください。