少人数の内装工事会社が目指す、土日休みの人も迎えられる職場
会社が土日休みを認めることと、現場で土日休みの社員が受け入れられることは、別の課題です。 内装仕上げを中心に、造作工事や現場管理も担うある専門工事会社では、この違いが新しい人を迎えるうえでの悩みになっていました。
日本人の社員は経営者を含めて10人弱で、外国人の社員も働いています。主力は30代後半から40代で、現場は二人、三人といった少人数で動くことが多い会社です。
経営者は、これまでの働き方を全員に求めたいわけではありません。「土日休みがいいという人も、その人の価値観として受け入れたい。全員が同じである必要はない」と考えています。給与体系や休日の取り方も、少しずつルールとして整えようとしていました。
ただ、周囲の社員には、月曜日から土曜日まで働いてきた感覚が根強く残っています。労働時間についてあまり考えてこなかったという振り返りもあり、経営者が目指す受け入れ方と、現場で当たり前になっている働き方には隔たりがありました。
ここで考えたいのは、全員を一つの働き方にそろえることではありません。法令遵守を前提に、本人の希望と現場運営をどう両立させ、その違いを社内でどう受け止められるようにするかです。
土曜日に休む社員への冷遇が、新しい人の居場所を狭める構造
休日の違いが「働く意欲の違い」として受け取られると、会社が認めた働き方でも、本人は現場になじみにくくなります。
この会社では以前、家庭の事情で土曜日に働けず、土日休みで勤務する社員がいました。ところが、月曜日から土曜日まで働く周囲の社員は、その違いを受け入れられなかったといいます。
「俺が働いているのに、お前はなんで休みなんだ、となってしまうんです」
経営者が気にしていたのは、単に休日の希望が合わないことではなく、その社員が周囲から冷たく扱われたことでした。会社として勤務条件を認めても、日々一緒に働く人が認めなければ、働き続けやすい環境にはなりません。
少人数で動く現場では、一緒に働く相手との関係を避けることも難しくなります。経営者も「二人、三人で現場をやっているので、関わらずに働くのは無理」と話していました。休日の違いを理由にした冷遇が、そのまま本人の居場所の狭さにつながりやすい条件です。
そのため、土日休みを希望する人を採用できるかだけでなく、入社後にその働き方で無理なく続けられるかまで考える必要があります。ただし、過去の社員が実際にその理由で退職したとまでは確認できません。経営者が抱いていたのは、同じ状況が続けば、新しい人が入ってもなじめず、定着しないのではないかという懸念でした。
同じ日数働く感覚と、社長に「はい」と答える現場の距離
背景にあるのは年齢差だけではなく、「自分たちと同じように働くこと」が仲間としての基準になっていることです。
経営者は自社について、「小さい会社だから、特に村意識が強い」と表現していました。長く一緒に仕事をしてきた少人数の組織では、これまで共有してきたやり方が、言葉にしなくても通じる基準になります。一方で、その基準と異なる人が入ると、事情や希望を確認するより先に、「なぜ自分たちと違うのか」という見方になりやすいと読み取れます。
土曜日に休む社員への反応も、その表れです。家庭の事情で働けないことと、仕事に向き合う姿勢は同じではありません。それでも、出勤日数が目につくと、違いそのものが不公平に感じられてしまいます。
ここで、周囲の不満をすべて価値観の問題として片づけないことも大切です。休日の違いそのものが気になるのか、それとも現場の組み方や給与の扱いに納得できないのかで、整理すべき内容は変わります。この会社で土曜日の負担が実際に誰かへ偏っていたかは確認できていないため、そこは社員の声を聞いて確かめるべき点です。
さらに、経営者が方針を伝えれば理解が進むとも限りません。
「僕が言うと、みんな基本的には『はい』しか言わないんです。異論があっても、とりあえず『はい』と言う。それではだめだと思うんです」
現場へ出る社員とは顔を合わせる機会も限られます。経営者自身も、「こちらばかりの意識が高くなっても、現場の職員がついてこられない」と感じていました。
方針への返事と、現場で違う働き方の人を受け入れる行動は分けて確認する必要があります。 制度の説明だけでなく、社員が何に引っかかっているのかを言葉にできる機会が求められているのです。
働き方のコースと休日・給与のルールを、現場の理解と一緒に整える進め方
本人の希望を尊重する方針を先に共有し、現場で成り立つ条件を確認しながら、休日・給与・チーム編成を一体で整理することが出発点です。 コースを作ることだけを目的にせず、違う働き方でも一緒に仕事を続けられる状態を目指します。
まずは、経営者が考える「全員が同じである必要はない」という方針と、社員が感じている不公平感の中身を並べてみます。社員への聞き取りでは、賛成か反対かだけを尋ねるのではなく、土日休みの人を迎えるときに何が気になるのかを確認します。
整理する項目は、次のように分けると話が混ざりにくくなります。
- 本人が希望する休日と、家庭の事情などによって働けない日
- 現場を動かすうえで必要な勤務日と、二人・三人の組み合わせ
- 勤務条件が異なる場合の給与の扱い
- 休日の違いに対する社員の受け止め方
この確認によって、勤務条件や配置で解決する部分と、相手への接し方を変える部分を分けられます。「土曜日に休む人を認めましょう」という一言で、すべてを解決しようとしなくてよくなります。
次に検討したいのが、働き方を複数のコースに分ける方法です。別の専門工事会社には、完全週休二日を希望する人と、より多く働いて収入を得たい人でコースやチームを分け、本人の事情が変われば移れるようにしている運用例がありました。
コース分けの判断軸は、本人が望む働き方と、その条件で現場を無理なく運営できるかの両立です。 休日の希望だけで決めるのではなく、この会社のように少人数で現場を組む場合は、誰と組めるかまで確認してから制度に落とし込みます。人数や配置の条件が合わなければ、他社と同じコースやチーム分けをそのまま採用する必要はありません。
また、入社時の選択を固定しないことも重要です。収入を重視していた人が家庭の事情で休日を増やしたくなることもあれば、その逆もあります。コース変更を認める場合は、本人の希望をどう確認し、現場の配置と給与の変更をどう合わせるかまで、ルールとして整理しておきます。
給与体系と休日ルールは、別々に説明しないほうが理解しやすくなります。何日休めるのか、その働き方では給与がどう扱われるのか、変更した場合は何が変わるのかを、一続きで確認できる形にします。休日が違うことを理由に一律に給与差をつけるのではなく、勤務条件と給与の根拠を整理することが先です。
なお、「たくさん働きたい」という本人の希望があっても、法令を超える働き方を認めるコースにはできません。 労働時間、休日、時間外労働、賃金の扱いは、制度上の記載と実際の運用の両方を確認し、必要に応じて社会保険労務士などに確認したうえで整えます。
制度と並行して、既存社員の理解を得る機会も設けます。この会社では、社長からの説明だけでは本音が出にくいという認識があったため、第三者による社員への聞き取りや、コミュニケーション・チームづくりの研修が選択肢になります。
その際は、多様性という言葉だけで終わらせず、実際に起きた「家庭の事情で土曜日に働けない人をどう受け入れるか」を共有することが大切です。経営者が重視していた「人は自分とは違う」という理解を、休日の違いを理由に冷たく扱わないという日々の接し方につなげます。
全員への方針共有に加え、新しい人と組む社員や、現場で受け入れを担う社員から重点的に理解を深める進め方も考えられます。経営者自身も、重点的に働きかけたい社員を思い描いていました。ただし、その人たちだけに任せるのではなく、会社として認めた働き方を尊重する方針は全員で共有します。
進め方は、方針を共有し、社員の声を聞き、その内容を制度に落とし込み、現場での受け止め方を確かめる流れです。 返事が「はい」だったかではなく、休日が異なる人と実際に一緒に働ける状態になったかを見ていきます。
まとめ
土日休みの社員を受け入れるには、休日の制度と、違う働き方の人への接し方を両方整える必要があります。
この会社の悩みは、土日休みを認めるべきかという迷いではありませんでした。経営者はすでに認めたいと考えており、その方針を現場でも自然に受け入れられるようにしたいと考えていました。
次の一手は、社員が感じる不公平感を聞き取り、本人の希望、少人数の現場編成、休日と給与の条件を整理することです。そのうえで、自社の人数と現場に合うコースを検討し、事情が変われば働き方を見直せるようにします。
全員の働き方を同じにする代わりに、働き方が違っても、会社として認めた条件と相手への尊重は共通にする。 その土台があれば、新しい人も、今いる社員も、自分に合う働き方を考えやすくなります。
土日休みを受け入れる条件を、自社の現場から整理するために
「うちの人数でコースを分けられるのか」「給与や休日の整理と、社員への説明のどちらから始めるか」という段階から、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場運営、採用・組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。働き方の違いを受け入れる体制づくりでも、経営者の方針と社員の声を踏まえ、自社に合う進め方を一緒に考えます。必要に応じて、組織づくりの知見を持つ顧問とともに検討することも可能です。
制度の形がまだ決まっていなくても構いません。無理な営業は行いませんので、何から整理すべきか迷っている段階でも、ご相談ください。