少人数でリノベーションを総請負する工務店の外注体制
専門工種を協力会社に任せることと、現場を任せきりにすることは、分けて考える必要があります。 自社だけですべてを施工しなくても、どこを自社が担い、何を確認するかが明確であれば、協力会社の力を借りながら品質を守る体制はつくれます。
神奈川県内を主な商圏とする、6名ほどの工務店も、そうした分担で住宅のリノベーションを手がけています。年商は1億円前後で、個人のお客様から直接受ける工事が中心です。塗装や屋根だけに絞るのではなく、水回りや内装まで含めて住まい全体の改修を請け負っています。
社内には現場管理と大工工事を担う人がおり、社長は設計・積算、お客様との打ち合わせを担当しています。一方、塗装、屋根、ガス、水道、電気、クロスなどは、それぞれの専門工事会社に依頼しています。
つまり、外注を使わない会社ではありません。むしろ、専門工種ごとの協力体制が、総請負の仕事を支えています。そのうえで社長が避けているのが、自社の関与を薄くしたまま工事の大部分を外へ任せる進め方です。
その背景には、忙しい時期に外注し、最後は自社で手直しに入った経験がありました。
外注で空けたはずの手が最後の手直しに戻る構造
外注費だけで採算を見ると、後から発生する自社の管理・手直しの負担を見落とします。 施工を任せたことで一度は手が空いても、仕上がりに問題があり、自社が最後に直すなら、外注によって減らしたかった負担が戻ってきます。
社長は、過去の経験をこう振り返っています。
「忙しいときにやったことはあるんですけど、最後はうちのほうが手直しに行くことになったんです」
ここで問題になるのは、手直しにかかった費用だけではありません。自社の人が補修に入る時間も、その工事に必要だった施工負担です。見積もりの段階では利益が残る計算でも、外注費に自社の確認や補修の工数を加えれば、採算が悪化し、赤字につながる場合があります。
ただし、この工務店の外注工事が実際にいくらの赤字だったかまでは確認できていません。読み取れるのは、社長が「それなら、外注に出さないほうがいい」と考えるほど、仕上がりと手直しの負担を問題にしていたことです。
外注を増やして施工量を確保する判断そのものが悪いわけではありません。「何件施工できるか」だけでなく、「自社が最後まで確認できるか」をセットで見ることが、採算を守る出発点です。
大工工事と現場管理を担う自社の関与が品質を支える体制
この工務店の品質は、協力会社の施工力だけでなく、自社が大工工事と現場管理に関わることで支えられています。 外注先を確保するだけでは、そのまま同じ品質で受注量を増やせるとは限りません。
社長自身は大工出身で、現在も社内には施工を担う人がいます。とくに中心となる大工については、「スピードは早いし、仕上げは良い」と評価していました。自社が施工の中核を持ち、必要な専門工種を外へ依頼する形です。
一方で、社長は次のようにも話しています。
「少しうちのほうがやったあと、残りを全部任せるようなことはしません。工事がおかしなことになってしまうので」
この発言から見えるのは、自社で一部分を施工したかどうかよりも、その後の工事にどこまで関わるかを重視している姿勢です。最初だけ現場に入り、残りの施工や仕上がりの確認が薄くなれば、自社が期待する状態と実際の仕上がりに差が生まれても、最後まで気づけない可能性があります。
ただし、過去の手直しが、発注時の説明不足によるものか、施工力の不一致か、途中確認の不足かは、発言だけでは特定できません。だからこそ、同じ経験を振り返る際も、外注先の良し悪しだけで片づけず、任せた範囲と自社の確認範囲を分けて整理することが大切です。
社長の「それなりの仕事しか取りません」という受注方針も、この体制とつながっています。施工する人が見つかることと、自社の品質を守って引き渡せることは、同じではないからです。
発注範囲と途中確認を決めたうえで管理できる量を受ける進め方
外注の判断は、依頼先探しより先に「自社に何を残すか」を決めるところから始めます。 この工務店の経験を自社に置き換えるなら、施工範囲、品質の共有、途中確認、最終的な採算の順に整理すると、任せ方を具体化できます。
以下は、すでに実施されている改善策の紹介ではなく、最後に自社で手直しをする状態を減らすための整理事項です。
自社施工・外注施工・自社管理の範囲を分ける
最初に、大工工事など自社が施工する部分と、電気・水道・クロスなど協力会社へ任せる部分を分けます。そのうえで、外注する部分についても、誰が施工内容や仕上がりを確認するのかを決めます。
ここでの判断軸は、「施工を任せられるか」と「管理まで手放してよいか」を混同しないことです。自社の品質を支えている仕事まで外へ移すなら、その代わりにどのように確認するのかが必要になります。確認する人も時間も確保できない場合は、依頼範囲や受注量を見直す判断につなげます。
発注前に施工範囲と求める仕上がりを共有する
依頼する前には、施工してもらう範囲と、自社が引き継ぐ範囲をそろえます。あわせて、お客様と約束している内容のうち、その工種に関わる仕上がりの条件を共有します。
「きれいに仕上げてほしい」という依頼だけでは、自社と相手が同じ完成状態を思い描いているか確認できません。何をどこまで施工し、どの状態になれば完了とするかを、発注前にそろえることが要点です。
すべての工種に一律の細かなルールを増やすより、まずは過去に自社が手直しした箇所について、何が期待と違ったのかを整理すると、共有すべき条件を絞れます。
最後だけでなく工程の途中で確認する
完成後に初めて仕上がりを見るのではなく、依頼範囲に応じて、途中の確認時点を決めます。目的は、外注先の作業を細かく縛ることではなく、自社と相手の認識の差を、工事が進みきる前に確かめることです。
発注前の段階で「誰が、どの工程で、何を確認するか」を共有しておけば、管理に必要な時間も見込めます。そこで確認時間を確保できないなら、施工する人手が足りていても、現状の体制では受けきれない可能性があります。
手直しまで含めて外注の採算を振り返る
工事後は、外注費だけでなく、自社が確認や手直しに使った時間も含めて採算を見ます。少なくとも、次の三つを分けておくと、次回の判断に使えます。
- 外注先へ支払った費用
- 自社が管理・確認に使った工数
- 自社が手直しに使った工数と追加費用
手直しが発生した場合は、施工範囲が曖昧だったのか、求める品質が伝わっていなかったのか、途中で確認できなかったのかを振り返ります。依頼先を変えるべき問題と、発注・管理の方法を変えるべき問題を分けるためです。
管理や補修まで含めて利益が残るかどうかが、外注を続ける判断軸です。 外注先が施工できるという理由だけで受注を増やさず、自社が確認できる範囲に収めることも、十分に前向きな経営判断です。
なお、品質管理上の「任せきり」と、建設業法上の「一括下請負」は同じ意味ではありません。建設業法第22条は一括下請負を原則として禁止しており、該当性は工事への実質的な関与などを踏まえて判断されます。また、公共工事や共同住宅の新築工事など、発注者の承諾による例外が認められない工事もあります。自社で一部を施工したことだけで適法と判断せず、具体的な発注形態は国土交通省の最新資料や許可行政庁に確認する必要があります。
まとめ
品質と採算を守る外注は、施工を外へ任せながらも、自社が担う管理を明確にすることから始まります。
専門工種ごとの協力体制は、少人数の工務店が住まい全体の改修を請け負ううえで大切な力です。一方、忙しさを理由に自社の関与まで薄くすると、最後の手直しで負担が戻り、外注による効果が小さくなります。
まずは、過去に自社が手直しへ入った工事を振り返り、任せた施工範囲、事前に共有した仕上がり、途中の確認、自社に戻った工数を整理してみるとよいでしょう。そこから、依頼先を見直すのか、任せ方を変えるのか、受注量を抑えるのかが見えてきます。
仕事を増やすことだけが選択肢ではありません。管理できる量を受け、約束した品質で引き渡し、利益を残す。その範囲を確かめることが、無理のない外注活用につながります。
自社に合う外注範囲と受注量の整理
「どこまで協力会社に任せ、何を自社に残すか」は、施工体制と収支を一緒に見ると整理しやすくなります。 外注先を増やすべきか迷っている段階でも、まずは現在の仕事の分担と、管理・手直しにかかっている負担を確かめるところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。外注の活用についても、協力会社の数だけではなく、自社の施工・管理体制と採算を踏まえて、次に取り組むことを一緒に考えます。
「うちの場合はどこから整理すればよいか」という段階でも構いません。無理に支援をおすすめすることはありませんので、状況を整理する相手が必要な際はご相談ください。