前提

現場経費はデータで見られても、入金確認には紙が必要な専門工事会社

現場の経費は画面で確認できる一方、入金情報は紙に残っている。経理の電子化は、まだ途中の状態です。

ある専門工事会社では、長年の経理担当者が手書きで記録を続けていました。会社として経理を行っていないわけではありません。入出金の一覧は経営者も確認しています。ただ、記録がデータになっていません。

「昔からやっているので、いまだに紙に書いているんです」

一方、現場ごとの材料費や経費は、工事台帳で確認できます。こちらは、引き継ぎ先となる社内の担当者が入力しています。

「現場にどれだけ材料が入ったか、経費がかかったかは、すぐわかる。でも、実際にどこから入金されたかと思うと、わざわざ紙を見るんです」

経営者が進めたいのは、この紙の経理の電子化です。同時に、長年の担当者から次の担当者への業務移管も考えています。

ただ、その引き継ぎ先も忙しい。人員配置や材料発注を担い、現場にも出ています。経理だけに時間を使える状況ではありません。

課題

人員配置と材料発注を担う担当者に、紙の経理をそのまま渡せない状態

引き継ぎ先を決めても、その人が入力・集計・確認をすべて抱える形では、業務移管が進みにくくなります。

この会社では、次の担当者が「みんながどの現場に行くか」「材料を何から発注するか」を日々動かしています。そこへ、お金の計算や紙の記録の電子化が加わります。

「さらにお金の計算となると、なかなかそこまで行けていなくて」

経理を引き継ぎたい気持ちはあります。電子化したい意向もあります。それでも進まないのは、引き継ぎ先に余裕がないためです。

もう一つは、情報の分断です。経費は工事台帳、入金は紙。確認したい内容によって、見る場所が変わります。

ここで紙を表計算に置き換えるだけでは、入力先が増える可能性もあります。請求書の一覧と工事台帳の両方に、誰がどう反映するのか。そこまで決めなければ、次の担当者の手間は残ります。

電子化と引き継ぎは、別々に進めるよりも、「誰がどこまで担当するか」と一緒に整理する方が進めやすくなります。

背景

長年の手書き経理と、次の担当者に集まる現場運営の仕事

今の経理が長年の担当者によって回っていることと、次の担当者に仕事が集まっていることが、移管の難しさにつながっています。

手書きの記録は、これまで会社を支えてきたやり方です。紙であること自体を否定する必要はありません。ただ、経営者が画面から確認する使い方にはつながっていません。

引き継ぎ先には、すでに工事台帳の入力があります。人員配置も材料発注も担っています。経営者からは、その担当者の負担も軽くしたいという言葉がありました。

「自分がやらなくてもいいことはありますよね。入力だとか」

この言葉に、役割分担の手がかりがあります。社内事情を理解している人が確認すべき内容と、手順に沿って進められる入力作業は、必ずしも同じ人が担う必要はありません。

また、人に任せるための説明にも手間がかかります。

「自分ではできるけれど、人に説明するのが難しい」

入力を外へ任せても、経営者が毎回説明し、作業を管理するなら負担は残ります。対話では、担当者が変わっても使える手順書への関心も示されていました。

必要なのは入力する人を増やすことだけではなく、説明し直さなくても引き継げる業務の形を残すことです。

解決

見たい入出金情報を決め、請求書の入力・集計と社内の確認を分ける進め方

先に経営者が見たい情報を整理し、その情報を更新する作業と、社内で確認・判断する仕事を切り分けます。

ソフト選びから始めるより、「何が見られれば確認しやすいか」を揃える方が、役割分担も決めやすくなります。

まず、入金と支払いを分けて整理する

この会社で出ていたのは、「どこからいくら入ったか」と「今月いくら払う必要があるか」という情報です。加えて、現場ごとの経費を確認する工事台帳があります。

まずは、この三つをどこで確認するのかを整理します。特に、届いた請求書をデータにすることと、入金情報をデータで確認できるようにすることは、分けて考える必要があります。

請求書の一覧ができても、それだけで入金情報の分断が解消するわけではありません。紙で確認している入金情報を、どこへ入力し、誰が更新するのか。この点も業務移管の対象に含めます。

請求書は一覧にするところまでを切り出す

対話で提案されていたのは、届いた請求書を一枚の表計算シートにまとめる方法です。入力項目は、次の四つです。

  • 現場名
  • 取引先
  • 請求金額
  • 請求日

この情報を入力し、集計して一覧にするところまでを、入力担当者や外部の事務担当者に任せます。その一覧を使った確認・判断は、社内の担当者が担います。

次の担当者には「全部を入力する役割」ではなく、「整理された情報を確認する役割」を残す考え方です。

人員配置や材料発注を抱えていても、入力と集計が切り出されれば、経理を引き継ぐ際の負担を軽くできる余地があります。

表計算か会計ソフトかは、入力担当と工事台帳への反映まで含めて選ぶ

表計算で一覧を作る方法も、クラウド会計ソフトへ入力する方法も、選択肢として挙がっていました。経営者は、会計ソフトの自動化機能にも関心を持っています。

一方で、入力を任せられるなら、ソフトを選ぶ視点も変わります。

「手入力が必要でも、その作業を代行してもらえるなら、選ぶ幅が変わってきますよね」

判断したいのは、自動化機能の多さだけではありません。次の点を一緒に確認します。

  • 経営者が見たい入出金情報を確認できるか
  • 入力を誰が担当するか
  • 現在の工事台帳へ、誰がどう反映するか
  • 初期設定と導入時期をどう進めるか

表計算で始める場合も、工事台帳との二つの入力先をどう扱うかが論点になります。会計ソフトを導入する場合も、工事台帳への反映まで自動で済むとは決めず、実際の流れを確認します。

「便利なソフト」よりも、「今の担当者で更新を続けられ、経営者が必要な情報を見られる組み合わせ」を判断軸にします。

手順書を残し、安定した作業から移管する

入力を任せる際は、資料の共有先、入力先、集計方法、確認を依頼する相手を揃えます。その流れを手順書に残します。

外部へ任せる場合は、入力作業だけでなく、業務整理や作業の管理まで支援に含まれるかも確認したいところです。経営者が一人で指示を出し続ける形を避けるためです。

最初から経理全体を移す必要はありません。請求書の入力・集計など、切り出せる作業から始めます。更新と社内確認が安定したら、次に移せる業務を整理します。

担当者を替えるだけでなく、担当者が替わっても使える手順を残すことが、引き継ぎを支えます。

まとめ

紙の経理を多忙な担当者へ引き継ぐときは、電子化する範囲と役割分担を一緒に決めることが出発点です。

現場経費はデータで見られる。入金は紙を確認している。次の担当者は、人員配置と材料発注で忙しい。この状態なら、経理を丸ごと渡すより、入力・集計と確認・判断を分ける余地があります。

まず、経営者が見たい入金・支払い情報を整理します。次に、請求書の現場名・取引先・金額・日付を一覧にする作業を切り出します。紙に残る入金情報の更新先も、別途決めます。

表計算か会計ソフトかは、入力担当者と工事台帳への反映方法まで含めて考えます。手順書を残し、回るようになった作業から移していく。その進め方なら、今の業務を支えながら次の担当者へつなげやすくなります。

紙の経理と工事台帳のつなぎ方を、自社の役割分担から整理する

「うちの場合は何から整理すればよいか」という段階から、経理の電子化と業務移管を相談できます。

ネクスゲートは、中小建設会社・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。紙の経理、現在の工事台帳、担当者が抱える仕事を踏まえ、社内に残す確認と切り出せる入力作業を一緒に考えます。

ソフトの導入や外部への委託を決めていなくても構いません。まずは、経営者が見たい情報と、次の担当者の負担を整理するところから始められます。無理に導入を勧めることはありませんので、自社に合う進め方を気軽にご相談ください。

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