社員6名で受注拡大と増員のバランスに悩む測量会社
仕事を増やしたい一方で、人を先に増やすにも踏み切れない。受注と採用を、別々には決められない会社の相談です。
兵庫県に拠点を置く、社員6名ほどの測量会社です。土木工事に伴う測量やデータ処理を手がけています。直近の年商は7,000万円ほど。以前は10名前後の体制で、年商1億円を超えた時期もありました。
現場からは、1〜2か月ほど人に入ってほしいという依頼があります。ただ、一度に出せる社員は限られます。工事に入れば、その間は別の仕事に動きにくくなります。
経営者の悩みは、単に仕事が足りないことでも、人が足りないことでもありません。
「取引先の開拓もそうですけど、人材もいない。そのあたりのバランスをどう取るかが、一番の課題です」
受注を増やすにも人が必要です。しかし、人を増やした後も仕事が続くとは限りません。この両方を見ながら、次の体制を考えているところです。
受注を待つと採用が遅れ、先に採ると閑散期の負担が増えるジレンマ
採用の必要性は見えていても、必要な時期と、費用を負担できる時期がそろっていません。
経営者としては、まず受注をもう少し増やしたい考えがあります。その手応えを見て、増員を判断したい。ただ、その順番にも難しさがあります。
「受注が増えたからといって、そのタイミングで人を採れるかといったら、難しいですもんね」
採用できても、すぐに今の社員と同じ仕事を任せられるわけではありません。本人も「即戦力にはならないでしょうから」と話しています。育成まで考えると、人を先に迎える必要も感じています。
一方で、先行採用にもためらいがあります。
「ただ、人を入れたのに仕事がないとなると、経営的には大打撃なので」
過去に採用した経験はあります。働く環境を整えることにも手応えがあります。それでも、採用までの時間と費用は軽くありません。
つまり、「受注が先か、採用が先か」という二択だけでは、どちらを選んでも不安が残ります。 必要なのは、どの程度の仕事が、いつ、どのくらい続けば増員できるのか。その条件を具体的にすることです。
売上が減っても拡大時の経費が残り、取引先と繁閑も重なる構造
増員に慎重なのは、仕事が薄くなった後も、拡大した体制の経費が残った経験があるためです。
以前は人をそろえ、売上も伸びました。しかし、現場の切り替わりなどで仕事が薄くなる時期がありました。直近は売上が以前より数千万円ほど減る一方、経費は大きな売上を前提とした状態が残っています。閑散期が重なると、赤字になるという状況でした。
「規模を縮小するべきなのか。それとも、走り続けて広げていくべきなのか」
この迷いには理由があります。仕事の依頼元を増やしても、取引先同士で忙しい時期が重なるからです。相手が閑散期なら、自社に回ってくる仕事も減ります。繁忙期には依頼が重なり、無理をして人を出すこともあります。
取引先の数が増えても、繁閑が同じなら、社員の稼働は安定しにくいままです。
また、仕事の取り方によって、人の拘束され方が違います。工事に継続して入る仕事は安定につながります。育成の場としても意味があります。ただ、毎日現場に入れば、ほかの依頼には対応しづらくなります。
一方、納期の範囲で自社が日程を調整できる測量業務もあります。同社には、1か月ほどの納期に対し、実作業は1週間ほどで終えられる案件もありました。ただし、そうした案件が十分な数あるわけではありません。
資金面も無視できません。同社では、完了まで入金を待つ案件を進めながら、日々の資金につながる小さな仕事もこなす必要がありました。人を長く拘束する受注が増えると、その小さな仕事に回せる余力まで減ってしまいます。
受注見込みと対応可能な業務量を並べ、増員の条件と時期を決める進め方
営業と採用の準備は並行し、実際に増員する判断は、仕事・人・資金を同じ期間で見比べて行うのが考えやすい進め方です。
受注が決まるまで採用について何も考えない。それでは、必要な時期に間に合わない可能性があります。反対に、売上目標だけを根拠に人を増やすと、仕事が薄い時期の負担を読み違えかねません。
まずは、今ある受注と見込み案件を、社員の稼働予定に重ねてみます。その際に確認したいのは、次の5点です。
- 受注見込み:確定している仕事と、まだ見込みの仕事を分け、開始・終了時期を確認する
- 繁閑の重なり:取引先が違っても、依頼が同じ時期に集中していないかを見る
- 既存社員の稼働余力:何人いるかだけでなく、いつ、誰が、どの業務に対応できるかを確認する
- 採用・育成期間:募集から入社までと、入社後に仕事を任せられるまでを分けて考える
- 資金余力:採用費や増える人件費を、閑散期や入金待ちの間も負担できるかを確認する
ここで大事なのは、受注金額をそのまま必要人数に置き換えないことです。同じ売上でも、毎日現場に入る仕事と、納期内で日程を調整できる仕事では、必要な稼働が違います。
増員の根拠にしたいのは、売上の大きさだけでなく、既存社員では継続して埋められない業務量です。
一時的に仕事が重なるのか。その後も人手不足が続くのか。長期の現場に社員を出した結果、別の仕事を受けられなくなっているのか。ここを分けると、必要な人数と時期を考えやすくなります。
採用側では、どの仕事を任せる人が必要なのかを先に整理します。過去の採用にかかった時間や、入社後に任せられるようになった仕事も振り返ります。そのうえで、必要な時期から逆算して準備を進めます。育成中は既存社員の手も必要になるため、その期間の受注対応も一緒に確認しておきたいところです。
資金面では、受注見込みどおりに仕事が入る場合だけでなく、開始が遅れる場合や、閑散期が重なる場合も見ておきます。その間も増員後の経費を負担できるか。難しければ、増員人数や時期を見直す判断につながります。
協力会社への依頼も、案件ごとに扱いを分ける必要があります。同社にはつながりのある会社がありました。ただ、二次下請で入る工事をさらに依頼すると、三次下請になります。元請が二次までに抑えたい方針なら、単純に外へ頼めば済む話ではありません。これは、すべての工事に共通する制限ではなく、元請の方針などによるものです。
一方、業務委託の測量なら、協力会社に作業を依頼し、自社が管理して納品する形も可能だと話しています。
協力会社を使えるかは、つながりの有無だけでなく、下請次数や元請の方針、自社が管理・納品を担える範囲まで確認して判断します。 外部に任せられる作業があっても、自社側の管理業務は残ります。その分も含めて、対応可能な業務量を見ることが大切です。
まとめ
受注と採用の順番に唯一の正解を求めるより、「この条件がそろえば増員する」という判断材料を持つことが、次の一手につながります。
今回の会社では、拡大時の経費が売上減少後も残った経験がありました。一方で、受注してから採用を始めても、確保と育成が間に合わないという悩みもありました。
まず整理したいのは、受注見込み、繁閑の重なり、既存社員の稼働余力、採用・育成期間、資金余力です。協力会社への依頼も、実際に使える案件かどうかを分けて考えます。
営業と採用は並行して準備し、増員は「継続して必要な業務量」と「閑散期を支えられる資金」の両方を見て決める。 この形なら、拡大か縮小かを一度に決め切らずとも、現状に合った人数と時期から検討できます。
受注と増員のバランスを、自社の稼働から整理するために
「うちの場合、どのくらい受注が見えたら採用に動けるのか」という段階から、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。受注と増員の判断でも、案件の見込みだけ、採用人数だけではなく、現場の対応余力や育成、経費の負担をつなげて考えます。
何から整理すべきかわからない段階でも大丈夫です。無理に支援の導入をおすすめするのではなく、まずは現在の受注と人員の状況を伺い、次に確認することから一緒に整理します。