住宅改修を中心に、少人数で施主との直接契約を担う建設会社
施主支給は、材料の購入を施主に任せきる方法ではなく、商品の購入・決済と施工会社の仕事を分ける選択肢です。
兵庫県に拠点を置く、立ち上げから間もないある建設会社では、住宅の改修を中心に、施主と直接契約する工事を手がけています。経営の中心は数名の役員です。専門工事の協力業者と連携しながら、工事全体は自社で管理しています。
この会社が取り入れているのが、システムキッチンやユニットバスなど、金額の張る商品を施主が販売店から直接購入する方法です。施工会社は商品の適合確認や工事を担い、施工で利益を確保します。
代表者の考えは明確です。「商品に利益を乗せるのではなく、工事できちんと利益をいただきます」。ただし、その形を成り立たせるには、材料の購入先を変えるだけでは足りません。現地調査から商品選定、販売店との連携までを、一続きの仕事として整える必要があります。
受注が増えるほど膨らむ、材料代の支払いから工事代金入金までの立て替え
受注を増やせるかどうかは、工事の利益だけでなく、入金前にどれだけ材料代を支払うかにも左右されます。
この会社でも、取引先によって工事代金の入金までに時間がかかることが、資金面の課題になっていました。
「材料を一社だけで立て替えていたら、数を受けるほど、すぐに大きな金額になってしまいます」
資材が高騰すれば、同じような工事でも先に必要な資金は増えます。複数の現場が重なると、それぞれの材料代の支払いが積み上がります。工事ごとには利益を見込めても、入金までの間を支える資金は別に必要です。
とくに立ち上げ直後の小規模な会社では、受注の増加に合わせて立て替え資金を際限なく増やせるわけではありません。そこで検討したいのが、すべての材料を自社で仕入れる前提を見直すことです。
高額な住宅設備を施主が直接購入すれば、その商品代金を施工会社が立て替える必要はなくなります。ただし、立て替えが減ることと、施工会社の利益が残ることは、分けて確認する必要があります。
購入者が施主に変わっても残る、現地調査と商品の適合確認
商品を買う人が変わっても、その商品を現場に納められるかを確認する仕事は残ります。
この会社では、施主がショールームで商品を選ぶ前に、施工会社側で現地調査と適合確認を行っています。現場の写真に寸法を入れ、注意が必要な点も記載します。その情報を、訪問前に各メーカーへ共有しています。
施主は希望する設備を選べても、どの商品が現場に合うかまで判断できるとは限りません。床材であれば、適合する商品だけでなく、必要な面積やケース数も施工会社側で確認しています。
代表者は、こうした確認について「工事をするなら、もともと知っておかなければいけない情報です」と話します。以前から下請けの立場でも担ってきたため、この会社では、施主支給にしたから特別に仕事が増えるという認識ではありませんでした。
ただ、この条件は各社で異なります。自社ですでに行っている確認なのか、仕入れ先に任せていた確認なのか。ここを分けないと、立て替えだけ減らしたつもりが、確認や調整の負担を見落とすことになります。
購入先との関係も同様です。一般の施主への直接販売に対応しない商社もあるため、この会社では、自社が施工を請け負う案件について直接購入に対応してもらえるよう、複数の購入先と調整を進めていました。
高額商品の切り分けから、適合確認・購入先連携・施工利益までの整理
施主支給の導入は、「何を支給対象にするか」「確認を誰が担うか」「工事で利益が残るか」の順に整理すると判断しやすくなります。
すべての材料ではなく、支給対象の商品を切り分ける
まずは、金額の張る住宅設備など、立て替え負担への影響が大きい商品から検討します。この会社では、システムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台、トイレ、内窓などが対象として挙がっていました。
判断の軸は、商品の金額だけではありません。施工会社が適合を確認でき、施主が購入できる販売先があり、工事までつなげられることが前提です。
「施主に買ってもらいたい商品」ではなく、「確認から購入まで無理なく進められる商品」を対象にすることが出発点です。 自社で仕入れる資材が残る場合は、その支払い負担も合わせて見ておきます。
ショールームで選ぶ前に、現場の条件をメーカーへ渡す
商品を選んだ後で適合確認をするのではなく、現場の条件を先に共有する流れを整えます。この会社の進め方は、次の順序です。
- 施工会社が現地調査を行い、商品の適合条件を確認する
- 現場写真に寸法や注意点を記載する
- 施主のショールーム訪問前に、メーカーへ情報を渡す
- 選定された商品が現場に適合するか、施工会社が確認する
施主支給であっても、商品選定と施工は切り離せません。施主が購入する前の段階で、施工に必要な情報をそろえることが大切です。
施主への直接販売に対応できる購入先と連携する
購入先は、価格だけでなく、施主との直接取引に対応できるかで確認します。
この会社は、施主にとってメリットのある販売店や商社を紹介し、商品代金の決済は購入先と施主の間で行う形を取っています。一方で、商品の適合確認は施工会社が担います。
そのため、購入者、決済相手、適合確認の担当を関係者間でそろえておく必要があります。一般施主への販売に対応していない購入先なら、自社の施工案件としてどこまで対応してもらえるかを事前に確かめます。
商品利益を外した後の、工事の採算を確認する
導入の判断では、立て替え負担の軽減と、工事の採算を両方見ます。
商品販売による利益を取らないなら、現地調査、適合確認、メーカーへの情報共有、施主とのやり取りを含めて、工事側で利益を確保できるかが重要です。
もともと自社で担っている業務なら、施主支給に変えても負担は大きく変わらないかもしれません。一方、これまで購入先に任せていた確認が自社に移るなら、その仕事も織り込む必要があります。ショールームへの同行についても、この会社では遠方への対応が負担になり得ると捉えていました。
減らせる立て替え額だけでなく、残る確認・調整業務を含めて施工利益が確保できることが、導入の判断軸です。
まとめ
施主支給は、高額商品の立て替えを抑えながら、施工で利益を確保するための選択肢です。 ただし、購入を施主に任せれば業務が終わるわけではありません。
対象商品を切り分け、現地調査と適合確認を行う。寸法・写真・注意点をメーカーへ事前に伝え、直接購入に対応できる販売店とつなぐ。こうした仕事が整って、初めて工事として進めやすくなります。
受注を増やす前に、自社が立て替えている商品と、自社に残る確認業務を並べてみる。そのうえで施工利益まで確認すると、施主支給が自社に合う方法かを判断しやすくなります。
材料の立て替えと工事の採算を、一緒に整理するために
「うちの場合、どの商品を施主支給にできるのか」という段階から、資金負担と業務の両面を整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。材料費の立て替えについても、支払いと入金の時間差だけでなく、適合確認や購入先との調整、工事の採算を合わせて考えます。
何から整理すべきかわからない段階でも、ご相談いただけます。無理に導入やご契約をお勧めすることはありません。自社に合う進め方を考える整理先としてお声がけください。