少人数の内装工事会社で、月末の請求確認を人の手で回している現状
日々の業務は回っていても、月末から支払前までの請求確認には、負担が集中していました。
相談を寄せたのは、少人数で運営する、内装工事を中心とした専門工事会社です。職人の配置や出面の情報は、社内の共有サーバーに置いたExcelで管理しています。一方、職人から届く請求書は、それぞれ独自の書式です。提出経路も揃っていません。
手書きの伝票をパソコンに入力する作業も残っています。Excelで作るようになった伝票も、結局は印刷して使っているといいます。
「正直、まだマンパワーで回っている。めちゃくちゃ困っているわけではない」
全面的に仕組みを入れ替えるほどではない。けれど、楽にできるところは変えたい。そんな現在地です。
とくに負担が見えたのが、月末の請求確認でした。月末で締めた後、翌月の早い時期に支払うため、確認に使える時間が限られています。その間に、出面の予定と実績、届いた請求書を突き合わせています。
書式の違う請求書と出面の照合が、支払前の短い期間に集中する負担
大変なのは入力だけではなく、書式の違う請求書から必要な情報を拾い、出面と照合して支払える状態にすることです。
「しかも、届くものが全員違うフォーマットなんです」
この言葉に、確認作業の難しさが表れています。同じ位置を見れば必要な情報が分かるわけではありません。職人ごとに、どこに何が書いてあるかを確認するところから始まります。
さらに、請求書の数字を転記すれば終わりでもありません。予定していた出面と実際の出面を擦り合わせ、請求内容との一致を確かめる必要があります。
「振込業務で間違いがないか、チェックする。予定と実績を擦り合わせるので、月末がすごく忙しい」
受け取り、読み取り、転記、照合。その先に支払前の確認があります。これらが短期間に重なるため、文字入力だけを速くしても、負担全体が軽くなるとは限りません。
まず見たいのは、どの作業に時間がかかっているかです。請求書を集めるところなのか。書かれた内容を拾うところなのか。それとも、出面との不一致を確かめるところなのか。ここを分けると、改善の入り口を選びやすくなります。
請求書の受け口が揃わず、紙とExcelの間を人がつないでいる業務
書類は一部デジタルになっていても、受領から照合までがつながっていないことが、手作業を残す背景にあります。
この会社では、伝票の作成にExcelを使い始めています。それでも、印刷したものを扱い、パソコンの前で入力する作業が残っていました。
「受け口も何もない、という感じです」
提出先や受け取り方が定まっていなければ、書類をデータに変える前の整理も人が担うことになります。請求書の書式が違うことに加え、会社側で受け取った後の流れも揃っていない。そこに改善の余地がありました。
経営者自身は、AI活用に前向きです。ただ、できることが多いほど、何から始めるか迷うとも話していました。
その中で、請求書の受け取りについては具体的な考えが出ています。
「LINEでも何でもいいから、画像で送ってくれれば」
全員に新しいシステムを使ってもらう前に、まず届く場所を揃える。この考え方なら、職人それぞれの請求書を受け取りながら、会社側の作業を整理できます。
ただし、窓口を揃えるだけで照合まで自動になるわけではありません。今の担当者が何を見て、何を確認しているのか。その途中経過まで把握することが、次の改善につながります。
提出窓口を揃え、一部の受領・転記業務からAI活用を進める手順
最初から書式やシステムを全面統一するのではなく、受け取り方と必要情報を整理し、作業を分けて試す進め方が考えられます。
最初の一歩は、提出窓口を決めることです。LINEなど、職人が使える経路を選びます。画像やPDFで受け取る場合も、どこへ送ればよいかを明確にします。
同時に、照合に必要な情報を整理します。確認する項目としては、職人名、対象期間、現場、出面、請求金額などが考えられます。実際にどの項目が必要かは、今使っている請求書と出面表を見ながら決めます。書式を揃えることより、確認に必要な情報が揃うことを先に目指します。
次に、現行業務を次のように分けます。
- 受領: 届いた画像・PDFを、決めた場所に集めます。
- 文字認識: 書類から必要な情報を読み取ります。
- 転記: 読み取った内容を、現在の出面表や確認用の一覧へ移します。
- 照合: 出面の予定・実績と請求内容を突き合わせます。
- 確認・承認: 読み取り結果や不一致を人が確認し、支払を承認します。
この分け方をしたうえで、まずは一部の受領・転記業務を切り出します。社内で担当を分ける方法も、社外に任せる方法もあります。いきなり振込まで渡す必要はありません。
切り出す範囲は、「繰り返しが多いか」「手順を説明できるか」「元の書類で結果を確認できるか」で選びます。
届いた請求書を一覧にする作業なら、元の書類と転記結果を見比べられます。一方、支払ってよいかの判断まで含めると、確認すべき事情が増えます。支払までの時間が短い会社では、とくにこの境目を先に決めておくと進めやすくなります。
切り出した業務は、まず今の手順どおりに動かします。担当者がどこで止まり、何を確認しているかを把握します。通常の手順と、追加確認が必要な例外を分けてから、AIを使う箇所を選びます。
画像やPDFの文字認識、一覧への転記、照合結果の整理は、AI活用の候補です。ただし、書式が違う書類や手書きの読み取り精度は、実際の請求書で確かめる必要があります。
AIに任せるのは確認材料を整えるところまでとし、読み取り結果、不一致の理由、支払承認は人が確認する形から始めます。
予定と実績に差があっても、それだけで請求が誤りとは判断できません。不足する情報をAIに補わせず、元の書類や担当者への確認に戻せるようにします。
試した後は、入力時間だけでなく、確認や修正にかかった時間も見ます。転記が速くなっても、読み取りの修正が増えれば負担は残ります。支払前の確認を含めて楽になったかを見ながら、対象を少しずつ広げる進め方です。
まとめ
月末の請求確認を軽くするには、職人全員の書式を変える前に、会社側の受け取りと照合の流れを揃えることが出発点です。
職人ごとに違う請求書。Excelで管理する出面。支払前に集中する確認。この三つを、一度に新しいシステムへ移す必要はありません。
まず提出窓口と必要情報を整理します。次に、受領・文字認識・転記・照合・承認を分けます。その中から、手順を説明でき、結果を確かめやすい業務を一つ選びます。
現行業務の手順と例外を把握してからAIを使い、人が判断する部分を残すことが、無理なく進めるための判断軸です。
今のやり方で回っている会社でも、月末に集まる作業を一つ切り出すだけなら、次の一手を考えやすくなります。
自社の出面・請求確認で、切り出せる作業を整理するために
「うちなら、どの作業から分けられるか」という段階から、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
出面・請求確認では、現在の請求書の届き方やExcelへの転記、支払前の確認手順をもとに、社内に残す業務と切り出せる業務を一緒に整理します。システム導入ありきではなく、今の業務を見ながら改善の入り口を探す支援です。
何から整理すべきか決まっていなくても構いません。無理にサービス導入を勧めることはありませんので、自社の場合の進め方を考える場として、お気軽にご相談ください。