社長も現場に出る6名規模の設備工事会社
社長が現場作業と見積もりを兼務する会社では、見積もりを進められる時間が限られます。 愛知県に拠点を置く、6名規模の設備工事会社もそうした状況にありました。
事務担当者は1名です。ほかのメンバーは社長も含めて現場に出ています。法人向けの設備工事を手がけ、遠方の現場にも対応しています。
見積もりは、主に社長が担ってきました。ただ、現場に出ながらの対応には、どうしても時間差が生まれます。
「見積もりに関しても、僕がメインでやっていたので。現場に出ながらなので、やっぱりタイムラグが発生してしまうんです」
そこで考えているのが、AIの活用です。社内にはデジタルに詳しい事務担当者がいます。その力を借りながら、見積もりをもう少し円滑に進められないか。相談の出発点は、そこにありました。
見積もりの対応が社長の空き時間に左右される状態
整理したいのは、AIを導入するかどうかよりも、見積もりのどこまでを社長以外で進められるかです。
社長が現場を知り、見積もりも見る。小規模な工事会社では、自然な役割分担です。現場の事情を踏まえて判断できる強みもあります。
一方で、見積もりの作業まで社長に集まると、現場対応中は進めにくくなります。社長の判断が必要な部分だけでなく、その前後の作業も待つ形になりやすいためです。
相談者が望んでいたのも、全社員に新しいツールを使ってもらうことではありませんでした。
「従業員全員に周知するというわけでもなく、その人ができればいいかなと思うんです」
まずは、デジタルに強い事務担当者が使えればよい。そのうえで、社長が抱えている見積もりの一部を進められるようにしたい。目的は、全社的なツール展開ではなく、見積もりが社長待ちになる時間を減らすことです。
デジタルに強い事務担当者がいても残る見積もりの属人化
デジタル操作に詳しいことと、工事の見積もりを判断できることは、分けて考える必要があります。
この会社の事務担当者は、以前からデジタルに詳しく、AIも使っています。一方、社長自身はツールの選定に不慣れだと話していました。
「AIもソフトも、いろいろなものがある中で、どういうものを使っていくか。僕が疎いので、詳しい従業員に任せている部分もあります」
使いこなせる人が社内にいるのは、心強いことです。ただ、操作を任せるだけでは、社長の見積もり業務がそのまま移るわけではありません。何を材料に作り、どこで社長に確認するか。その区切りも必要になります。
相談者は、AIに情報を教え込む取り組みにも触れていました。
「今の段階ではできないにしても、今後はできるようになるかな、というところがあります」
現時点では、見積もりの自動化が完成したわけではありません。使える範囲を探っている段階です。だからこそ、完成形を急ぐより、担当者とAIが進める範囲、社長が判断する範囲を少しずつ確かめる進め方が合いそうです。
見積もりの分担を決めてから担当者とAIで小さく試す進め方
最初の一歩は、ソフトを比較することではなく、社長が作っている見積もりを一つ取り上げ、作業と判断を分けることです。 以下は、検討・試行を進めるための整理案です。
社長が判断する部分と、担当者が準備する部分を分ける
見積もりを丸ごと任せるのではなく、社長が何を確認しているのかを事務担当者と共有します。
整理の軸は、次の三つです。
- 社長の工事経験や個別の判断が必要な部分
- 必要な情報と手順がそろえば、事務担当者が進められる部分
- AIに下準備をさせ、人が確認できる部分
たとえば、見積もりに必要な情報を整理する作業と、工事内容を踏まえて金額を決める判断は、切り分けて考えられます。どちらも一度に任せようとせず、まず社長に確認する前の準備をどこまで進められるかを見ます。
この段階で大切なのは、「担当者ができるか」だけで判断しないことです。何が分かれば進められるのか、何が分からなければ社長に戻すのかまで決めると、任せる範囲が具体的になります。
AIに渡す情報と、分からないときの扱いをそろえる
AIを試す前に、見積もりの材料を担当者と共有できる形にします。過去の見積もりを使う場合も、完成した金額だけでなく、どのような工事条件を前提にしたものかを確認します。
まず整理したいのは、次の内容です。
- 見積もりを作るために必要な情報
- 参考にしてよい見積もりと、その適用条件
- 情報が足りない場合に社長へ確認する項目
情報がない部分を、AIに推測で埋めさせないことも大切です。不明点は不明点として残す。そのほうが、社長も確認すべき箇所をつかみやすくなります。
AIやソフトを選ぶ際も、機能の多さより、事務担当者が扱えるか、社長が根拠を確認しやすいかを軸にします。必要な情報を入力できるかも含め、利用条件を確かめながら選びたいところです。
一つの見積もりで試し、社長が確認する
最初から実際の提出まで任せる必要はありません。内容を確認できる見積もり一つで、事務担当者とAIによる下準備を試します。出てきた内容は、社長が確認します。
見るのは、作成の速さだけではありません。確認や修正にどれだけ手間がかかったかも含めます。下書きが早くできても、社長が一から確認し直すなら、負担はあまり変わらないためです。
「AIが見積もりを作れたか」ではなく、「社長が最初から作るより、確認して仕上げるほうが楽になったか」で試行を評価します。
使えた部分は残し、判断が難しかった部分は社長の担当に戻す。その繰り返しで十分です。全社員に広げなくても、社長と事務担当者の間で一つ分担が増えれば、見積もりの進め方は変えられます。
まとめ
現場に出る社長のAI活用は、見積もりの完全自動化より、社長待ちの作業を一つ減らすところから始められます。
この会社には、デジタルに強い事務担当者がいました。目指していたのは、全社員のツール利用ではありません。社長が現場に出ている間にも、見積もりを少し進められる体制です。
そのために、まず社長の判断と準備作業を分けます。次に、必要な情報と確認する項目をそろえます。そして、小さく試し、社長の確認負担まで含めて見直します。
AIにすべてを任せられなくても構いません。社長が判断に集中できる範囲を、少しずつ増やしていく考え方です。
見積もりのどこから任せるかを整理したい方へ
「どのAIを選ぶか」が決まっていなくても、見積もりの分担を整理するところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場の動きや社内の役割分担も踏まえて整理し、実行まで支援しています。見積もり業務でも、社長に残す判断と、担当者やデジタル活用で進める作業を一緒に考えます。
「うちの事務担当者なら、どこまで任せられるだろう」「何から整理すればよいか分からない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はせず、自社に合う進め方を考えるための整理からお手伝いします。