前提

約2,400店舗の設備情報をExcelと手入力で支える点検記録管理

設備点検の記録をまとめる仕組みは、入力画面だけでなく、顧客や現場を含めた役割分担とセットで考える必要があります。

ある設備保守会社では、多店舗展開する顧客の機器情報と点検記録を、Excelと手入力で管理していました。対象は約2,400店舗。各店舗には、空調や冷却設備などが25台前後あります。機器情報だけでも、約6万件になる規模です。

管理したい情報のつながりは明確でした。顧客があり、その下に店舗があり、店舗ごとに機器があります。さらに、機器ごとの簡易点検や修理の履歴を積み重ねます。

「これまでは、ちょっと力任せにやっていたので、なんとかならないかと」

この言葉に、見直しの出発点が表れています。やるべきことがわからないわけではありません。店舗数と機器数が多く、人の手で集めて入力する方法では、管理しきりにくくなっていたのです。

同社が考えていたのは、機器情報と点検・修理記録を一元管理する仕組みです。ただし、誰が使い、誰が更新するかは、まだ決まっていませんでした。

課題

記録する項目よりも決まっていない入力と確認の担当

課題の中心は、何を記録するかではなく、誰が情報を集め、入力し、確認するかが定まっていないことでした。

たとえば修理記録です。修理後には、作業内容や冷媒の充塡量などが書かれた完了報告書が届きます。その情報を拾い、機器ごとの記録へ入力する必要があります。

「完了報告書から拾って、うちなり顧客側なりが、入力していく場所なんです」

既存のメンテナンスシステムには作業内容を登録します。そのうえで、点検記録側にも必要な情報を入れます。同じ担当者が行うのか、別の担当者が行うのか。そこも未定でした。

簡易点検には、別の事情があります。対象設備では3か月に1回の記録を想定していました。

「いちいち我々の方で集約して入力するのは、やりたくないので、店長さんに直接入力してもらいたいですよね」

この方針なら、自社に集まる転記作業は減らせそうです。一方で、店舗ごとに入力者が増えます。誰がどの店舗を見られるのか。入力された情報を誰が確認するのか。画面を用意するだけでは、ここは決まりません。

背景

店舗・顧客側の管理部門・修繕会社で異なる情報の持ち方

入力担当を一律に決めにくいのは、点検・修理・店舗情報の変更で、情報を持っている相手が違うためです。

修理の流れには、店舗、顧客側の設備管理部門、同社などの修繕会社が関わっていました。顧客側で修理することもあれば、別の修繕会社へ依頼することもあります。

そのため、修理記録を同社だけで登録する前提にはできません。

「修繕会社が登録するのか、顧客側が登録するのか。この辺も全然決まっていないです」

さらに、新店や閉店、店舗のブランド転換に関する情報もあります。こうした情報は、修理を管理する部門だけでは把握できない場合がありました。最初に店舗一覧を登録しても、その後の変更を誰から受け取り、誰が更新するかが残ります。

ブランド転換では、店舗名や店舗IDが変わっても、空調機や冷蔵設備は残ることがあります。店舗情報を切り替えただけで機器の履歴まで途切れると、せっかく集めた記録を引き継げません。

「運用の方が、結構肝になるんです」

この言葉の通り、必要なのは単なる入力先の変更ではありません。情報が生まれる場所と、記録を管理する担当を、業務ごとにつなぐ整理です。

解決

簡易点検・修理報告・店舗情報を分けた役割設計

まずは業務を3つに分け、入力担当・確認担当・閲覧範囲をそろえるところから始めると、必要な画面や連携も考えやすくなります。

この段階では、すべての担当を自社で引き受ける必要はありません。顧客側と決めるための案をつくり、未決定の箇所を見えるようにします。

簡易点検は、店舗での直接入力と確認の分担を決める

簡易点検では、店舗責任者による直接入力が検討されていました。自社で毎回集約し直す負担を減らすには、この方向を軸に考えられます。

ただし、直接入力と確認は別の役割です。店舗側が入力した後、顧客側の管理部門が確認するのか、自社が確認を担うのかを決めます。店舗責任者に見せる範囲も、担当店舗の機器と記録を基本に整理できます。

入力を現場に移すときは、確認まで曖昧に移さず、誰が受け止めるかを決めることが大切です。

修理記録は、完了報告書から誰が登録するかを決める

修理記録では、完了報告書を起点にします。作業内容や充塡量など、必要な情報がどこに書かれているかを確認し、登録担当を決めます。

判断軸になるのは、修理した会社が直接登録できる運用にするか、報告書を受け取る側で登録をまとめるかです。

  • 修繕会社が登録する場合は、顧客側または自社のどちらが確認するかを決めます。
  • 顧客側や自社が登録する場合は、完了報告書を受け取ってから記録するまでの担当を決めます。
  • 既存システムへの作業内容登録と、点検記録への登録を、同じ担当者が行うかも確認します。

どちらを選ぶかは、修理の依頼先と、報告書を受け取る担当を見ながら考えます。協力会社にも入力画面を渡すかどうかは、機能ではなく、登録と確認をどこで担うかから決める順序です。

顧客・店舗情報は、既存システムを正本にする

顧客名や店舗情報については、同社には明確な方針がありました。

「顧客とか店舗情報は、とにかくメンテナンスシステムから流れ込んでくる形にしたい」

既存システムを正本とし、新しい点検管理側はそれに合わせて更新する考え方です。両方で個別に修正するより、どちらを正しい情報として扱うかが明確になります。

店舗情報の変更は月に十数件程度を想定していました。この頻度なら、常時自動連携する方法だけでなく、CSVで取り込み、変更内容を確認して反映する方法も候補になります。

決めたいのは、CSVを出力する担当、取り込む担当、変更を確認する担当です。あわせて、新店・閉店・ブランド転換の情報が、正本側へ届く経路も確認します。

また、ブランド転換後も設備が残る場合は、店舗IDとは別に建物を識別するIDを持ち、機器の履歴をつなぐ考え方が挙がっていました。これは、店舗情報の更新方法と一緒に整理したい部分です。

役割を決めたうえで、利用者数と蓄積量を見積もる

役割分担によって、必要なアカウント数も、管理するデータ量も変わります。

店舗責任者が直接入力するなら、店舗数に応じた利用者が発生します。協力会社にも登録を任せるなら、その分も加わります。自社内だけで使う仕組みとは、確認すべき条件が違います。

機器情報は約6万件。そこに定期的な点検記録と、修理の都度の記録が積み重なります。過去の履歴を設備更新の判断にも使いたいなら、初期データだけでなく、蓄積後の量も見ておきたいところです。

運用開始の区切りも必要です。同社では、年度初め以降の修理分から確実に登録し、その前提となる機器情報を集める方針を考えていました。過去のExcelをすべて移すことと、新しい記録をきちんと残すことを分ける進め方です。

まとめ

設備点検の記録入力を減らす第一歩は、入力画面を増やすことではなく、業務ごとに役割を分けることです。

簡易点検は、店舗で直接入力し、誰が確認するか。修理記録は、完了報告書をもとに誰が登録するか。顧客・店舗情報は、既存システムを正本として誰が更新するか。この3つを分けると、顧客や協力会社と決めるべきことが具体的になります。

そのうえで、閲覧範囲、利用者数、記録の蓄積量を確認します。更新頻度によっては、CSV連携も現実的な選択肢です。

全部を一度に決めきらなくても構いません。まずは、今の入力作業を誰が引き受けているかと、今後の担当が未定の箇所を並べる。そこから、仕組みに任せる部分と、人が確認する部分を話し合いやすくなります。

点検記録の入力分担を整理したいときに

「自社でどこまで担うか」が決まっていない段階から、業務整理は始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場業務や組織、デジタル活用まで横断して整理し、実行を支援しています。設備点検の記録管理でも、入力画面の検討に先立ち、顧客・現場・協力会社との分担や、既存システムとの使い分けから一緒に考えます。

「うちの場合は、誰に何を任せればよいか」「何から整理すればよいかわからない」という段階でもご相談いただけます。無理に導入や契約を勧めるのではなく、現状に合う進め方を整理するところからお手伝いします。

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