売上が伸びる一方で、経理も事務も社長一人が担う専門工事会社
税理士に相談できることと、日々の経理が社長の手を離れることは、別の話です。 ある専門工事会社でも、その間を埋める役割が必要になっていました。
売上は年間で1億円台後半の規模です。翌年度には、2億円台の工事が決まっています。一方で、財務や事務は社長一人が担当していました。月ごとの数字も、まだ十分に出せていない状態です。
創業前から付き合いのある税理士はいます。お金の相談にも対応してくれます。それでも、帳票や日々の仕事の流れを作るところまでは進んでいませんでした。
社長が求めていたのは、経理を何もわからないまま任せることではありません。
「私もちょっと勉強したいので、教えてもらいながら、アドバイスをもらいながら」
仕組みを作る過程で、自分も理解したい。ただ、入力や事務作業は少しずつ手放したい。最後は数字を見て判断できる体制にしたい。そんな相談です。
「こうした方がいい」と言われても、その仕組みを作る担当者がいない状態
足りなかったのは助言だけではなく、助言を帳票や設定に変え、実際に動かす担当者でした。
その違いが、はっきり表れた言葉があります。
「その仕組みはこうした方がいいですよってアドバイスをいただいても、その仕組みすら作れないんですよ、こっちは」
何を改善したいかが、まったく見えていないわけではありません。社長には、具体的な希望がありました。
会社のクレジットカード情報を会計ソフトに連携させたい。上がってくる領収書や駐車場代も整理したい。可能ならAIなどを使い、振り分けや入力の手間を減らしたい。
ただ、その希望を実現するには、今の資料や連絡方法を確認する人が必要です。帳票を作る人も、ソフトを設定する人も必要になります。導入後には、日々の処理を続ける人も欠かせません。
ここが曖昧なままだと、改善案が増えても、社長の作業は残ります。「何を使うか」は決まっても、「誰が使える状態にするか」が決まっていないためです。
税理士の助言と、領収書を集めて入力する実務の間にある空白
相談相手はいても、経理業務を組み立てて運用する役割までは埋まっていませんでした。 税理士への不満だけで捉えると、この構造を見落としやすくなります。
社長は、税理士についてこう話していました。
「相談していけば、全然対応してくれますね」
お金の知識があり、補助金なども相談できる相手です。一方で、社内の仕組みづくりについては「アドバイスするぐらい」という受け止めでした。税理士側も複数の会社を担当しています。社長自身も出張が多く、必要なときに呼んで相談する関係になっていました。
この会社では、財務の助言と、社内で手を動かす仕事が分かれていたのです。これは税理士一般の対応範囲を決めつける話ではありません。まず、自社でどこまで頼めていて、どこから先が残っているかを確認する話です。
社長が別の外部支援を探していたのも、その空白を埋めるためでした。
「こういうふうにやった方がいいというフォーマットがあるのであれば、すべてやってください」
求めていたのは、財務の説明だけではありません。何も整っていないところから形を作り、事務の実行まで引き受ける支援です。さらに、形ができた後には、マニュアルを作って引き継いでもらうことも確認していました。
領収書の回収から会計入力までを分け、仕組みづくりと日々の担当を決める進め方
ソフト選びの前に、現状確認・業務設計・設定と導入・日々の運用を、誰が担うか整理することが出発点です。 この会社の相談も、具体的な経費処理に沿って考えると、必要な役割が見えやすくなります。
まずは、今ある領収書・カード情報・帳票を確認する
新しい仕組みを考える前に、現在使っている表計算の帳票や、社内の連絡方法を確認します。領収書や駐車場代が、今どのように上がってくるのか。法人カードの情報を、どのように扱っているのか。そこから整理します。
この段階で大切なのは、社長がすべて説明し終えるまで待つのではなく、実際の帳票ややり取りを見ながら確認してもらえるかです。相談でも、使用中のデータや連絡内容まで確認したうえで、効率化を考える進め方が示されていました。
「作る人」と「使い続ける人」を分けて考える
役割は、次のように分けると確認しやすくなります。
- 現状確認と業務設計:今の資料を確認し、領収書の回収から入力までの流れや必要な帳票を整理する役割です。
- 設定と導入:帳票を作り、会計ソフトや法人カードの連携を、実際に使える状態にする役割です。
- 日々の運用:上がってくる領収書や駐車場代を処理し、会計入力などを続ける役割です。
- 数字の確認と判断:整理された数字の見方を学び、最終的な判断をする社長の役割です。
最初は外部の担当者が複数の役割を兼ねる形でも構いません。ただし、仕組みができた後の日々の処理まで、誰が担うかを決めておきたいところです。
税理士には、現在の対応範囲を確認します。そのうえで、助言を受ける部分と、外部支援や事務担当に実行してもらう部分をすり合わせます。社長が学ぶことと、社長がすべて作業することは、切り分けて考えられます。
ソフトやAIは、任せたい作業が見えてから選ぶ
この会社の場合、法人カードの連携や、領収書・駐車場代の入力という希望がありました。まずは、その処理を会計ソフトでどこまで担えるか確認するのが自然です。
AIによる振り分けや、連絡ツールを介した情報連携も候補になります。ただし、相談の中で示されたのは活用の案であり、導入済みの成果ではありません。自社で使うソフトやカードで何ができるかを確認する必要があります。
判断軸は、機能の多さよりも、社長が手放したい処理に対応するかです。領収書を集める手間が残るのか。入力まで任せられるのか。日々の担当者が使い続けられるのか。そこに沿って選ぶと、導入そのものが目的になりにくくなります。
外部支援には、実装と引き継ぎまで確認する
外部支援を選ぶ際は、経歴や知識だけでなく、実際に何を作って残すかを確認します。
帳票や処理の流れを作るところまでか。ソフトの設定まで行うのか。日々の入力も担当するのか。支援が終わるとき、誰に引き継ぐのか。この範囲を具体的にしておきます。
相談者も、形ができた後について「引き継ぎのマニュアルを作ってもらう」と確認していました。マニュアルだけでなく、引き継ぐ担当者まで決まっていると、運用につながります。
支援の区切りは、助言を受け終えたときではなく、帳票・設定・マニュアルが残り、担当者が処理を続けられる状態です。 外部支援を試す場合も、この状態にどこまで近づいたかで振り返ると、次の判断がしやすくなります。
まとめ
社長一人の経理を手放すには、相談相手を増やすだけでなく、仕組みを作る役割と日々の処理を担う役割を埋めることが大切です。
税理士に助言をもらえるなら、その関係を活かせます。そのうえで、領収書や駐車場代の回収、法人カードの連携、会計入力のどこが社長に残っているかを確認します。
目指すのは、社長が経理を知らなくてもよい状態ではありません。数字の見方を学びながら、作業を任せ、判断に時間を使える状態です。まずは一つ、社長が手放したい経費処理から、作る人と運用する人を整理してみるとよさそうです。
社長に残っている経理作業から、一緒に整理するために
「税理士には相談できるけれど、その先を誰に頼めばよいかわからない」という段階から整理できます。 必要なのが助言なのか、帳票づくりなのか、設定なのか、日々の事務なのか。まずはそこを分けるところからです。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。経理・事務についても、現場から上がる資料と社内の処理を確認し、業務の整理やデジタル活用、担当者への引き継ぎを含めて進め方を考えます。
「うちの場合は何から整理すべきか」というご相談でも大丈夫です。無理にサービスの導入をおすすめすることはありません。社長に残っている作業を確認するところから、お気軽にお声がけください。