公共工事の施工を担う15名ほどの会社で進む受注拡大
仕事も協力会社も確保できている一方で、受注の増加を支える財務管理が追いついていない。 ある専門工事会社が向き合っていたのは、そんな成長に伴う悩みでした。
神奈川県に拠点を置き、公共インフラの塗り替え工事を中心に手がける会社です。自社で入札するのではなく、元請けから施工を請け負っています。社員は15名ほど。職人と現場管理を担う人が中心です。
少人数で始めた会社は、年々売上も利益も伸びてきました。翌年度に着手する工事も、すでに2億円台後半の規模が決まっています。さらに大型案件を受け、複数の現場を並行して進めたい考えでした。
「仕事とか協力会社には、正直、困っていなくて。新しい販路は、次の次ぐらいでいいんです」
先に整えたいのは、会社の内側です。社長は現場に出ることもありながら、財務や事務を一人で抱えていました。工事ごとの予算は管理しています。ただ、会社全体の数字を月次で集計するところまでは回っていませんでした。
工事予算は見えていても把握できない会社全体の資金不足
工事ごとの採算を確認することと、大型工事を進める資金が足りるかを確認することは、分けて考える必要があります。 この会社でも、その違いが次の受注に向けた課題になっていました。
「現場ごとには、かかった工数などを見て予算を決めているんです。でも、月次では出していないんです」
現場単位で予算を決めていても、会社全体でいつ、いくら出ていくのかは別の整理が必要です。受注額だけでは、工事代金が入るまでの支払いを賄えるかは分かりません。そこに設備投資も重なります。
社長は、先の資金不足をすでに意識していました。
「今のままではキャッシュフローが回らないんです。設備投資もしていくので、先々で融資の準備もしていかないと」
必要なのは、単に帳簿入力を終わらせることではありません。受注済み工事と設備投資を踏まえ、資金が不足する時期と必要額を説明できる状態にすることです。
そこが見えれば、大型工事を受ける判断と、金融機関への相談をつなげやすくなります。
社長に集中する記帳と財務判断の間にある役割の空白
入力作業を任せる人と、数字から資金計画を組み立てる人は、必ずしも同じではありません。 社長が求めていたのも、作業の代行だけではありませんでした。
「数字に強くて、ちゃんとした数字を私に上げてきてくれるのが一番です」
事務担当を新しく迎える構想はありました。仕組みができれば、日常の事務作業は一人でも回せるのではないか。社長はそう考えていました。
一方で、財務については別の支えを求めています。月次の数字をまとめ、銀行からの資金調達も助言できる人です。
「入力してもらう人ではなくて、財務に強い人を紹介してもらいたい、という流れだったんです」
ここで、入力だけを切り出して任せると、何を集計するか、集計した数字をどう読むかは社長に残ります。逆に、財務人材が計画を作っても、日々の記帳が進まなければ、その土台となる数字が揃いません。
もう一つ、大切な希望もありました。
「教えてもらいながら進めたいです。最後の決裁は私がするので、知らないまま『いいよ』とは言えないですし」
求めていたのは、財務を見なくて済む状態ではありません。日々の作業は手放しながら、社長自身は数字を理解して判断できる体制です。
月次集計を工事の入出金予定とつなげる融資準備
進め方は、記帳・月次集計を整え、先の入出金を重ね、金融機関への説明資料につなげる順番です。 最初から立派な資料を作るより、資料の根拠となる数字を揃えるところから始めたいところです。
まずは月次の数字が社長に届く形をつくる
最初の整理は、「誰が入力し、誰が確認し、いつ社長に報告するか」です。この会社のように月次集計ができていない場合、まずは毎月の数字を継続して確認できる形が必要です。
事務担当には記帳や集計の実務を任せます。財務人材には、集計の仕方や確認する数字を整えてもらいます。社長は、報告を受けて内容を理解し、判断します。
担当者が替わっても引き継げる仕組みを望んでいた点も重要です。入力方法と確認方法を共有できる形にしておけば、社長だけが分かる状態から少しずつ離れられます。
判断軸は、入力が終わることではなく、会社の状況を毎月説明できる数字が揃うことです。
工事の入出金と設備投資を同じ資金繰り表で見る
月次集計は、現在までの状況を知る土台です。ただし、それだけでは翌年度の大型工事に必要な資金までは見えません。受注済み工事の入出金予定と、これから行う設備投資を重ねて見る必要があります。
資金繰り表に反映する情報は、まず次の範囲で整理するとよいでしょう。
- 受注済み工事ごとの入金予定と支払い予定
- 会社全体の毎月の入出金
- 設備投資の支払い時期と金額
- それらを反映した月末の資金残高
この会社で先に確認したいのは、すでに着手が決まっている工事を進めた場合の資金です。追加で取りたい大型案件は、その後に分けて確認します。
決まっている工事と、これから取りたい工事を混ぜないことがポイントです。確定している予定で必要な資金と、追加受注によって増える資金を分けると、融資の相談額にも根拠を持たせやすくなります。
金融機関には必要額と使い道、返済の見通しをつなげて伝える
融資準備では、資料の見栄えよりも、数字のつながりを大切にしたいところです。
「銀行さんに、ちゃんとした資料を持っていかないと。やりたい反面、できませんとなるのが見えているんです」
この希望を資料にするなら、月次の実績、受注済み工事の予定、設備投資の計画をつなげます。そのうえで、いつ、何のために、いくら必要なのかを示します。借入後の入出金と返済の見通しも、資金計画の中で確認します。
工事を進めるための資金と、設備を購入するための資金も、使い道を分けて整理します。必要時期が分かれば、金融機関への相談時期も逆算しやすくなります。
資料が整えば必ず融資を受けられるわけではありません。それでも、「受注が増えるから借りたい」から、「この時期にこの支払いがあり、この額が必要」と説明できる状態へ進めます。
財務人材には資料作成だけでなく社長への説明まで求める
外部の力を借りる際は、日常の入力を頼みたいのか、資金計画を作ってほしいのかを分けて伝えると、役割のずれを減らせます。
この会社なら、財務人材を選ぶ際に確認したいのは、月次集計の仕組みづくり、資金繰りの見通し、融資準備をどこまで支えられるかです。加えて、社長が理解できる言葉で説明してくれるかも大切です。
「全部分かったうえで、どんどん任せていきたいんです」
その希望に沿うなら、完成した表を渡して終わりにはしません。どの工事や投資で資金残高が減るのか。追加受注をすると、必要額がどう変わるのか。実際の数字を一緒に確認する進め方が合いそうです。
任せるのは記帳や集計、計画づくりの実務です。受注・投資・借入の最終判断は、社長が内容を理解したうえで行います。
まとめ
受注拡大に備える財務管理は、工事予算、会社全体の月次数字、先の資金繰りをつなぐことから始まります。
工事ごとの予算を管理できているなら、それは大事な土台です。そこに月次集計を加え、工事の入出金予定と設備投資を重ねます。すると、いつ、いくら資金が必要になるのかを考えやすくなります。
入力を担う事務担当と、資金計画・融資準備を支える財務人材の役割も分けておきます。社長がすべての作業を抱える必要はありません。一方で、判断の根拠まで手放さないことが、望む成長を選ぶ支えになります。
まず整理したいのは、「月次の数字を誰がまとめるか」と「受注済み工事を進める資金がいつ必要か」の二つです。 そこから、次の大型工事を受けるための準備が具体的になります。
大型工事に向けた資金管理の整え方を考えるなら
「うちの場合、記帳の整理からなのか、資金計画からなのか」という段階でも、一緒に整理できます。
ネクスゲートは、中小建設会社・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。資金管理についても、日々の事務と財務判断を切り分け、必要に応じた財務人材・顧問との連携を含めて体制づくりを考えます。
受注済み工事の予定、現在の月次集計、設備投資の構想。どこまで揃っているかを確認するところからで構いません。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、自社に合う進め方を考える場としてご相談ください。