大工・施工管理など複数職種の有料掲載を始める前に、数字の見方をそろえる必要がある段階
神奈川県内で複数部門を持つ、ある建設会社では、大工職人や施工管理などの採用に向けて求人原稿を整えていました。現場や社員の写真を撮影し、給与や仕事内容も見直したうえで、無料掲載から有料掲載へ切り替えるかを検討していたところです。
有料掲載にすると、応募数だけでなく、その手前にある表示回数やクリック数、応募開始数なども確認できるようになります。しかし、管理画面に数字が並んでも、それぞれが何を示すのか分からなければ改善にはつながりません。
実際、画面を見ながら最初に出たのは、次のような疑問でした。
「表示というのは、求人を見た人数ですか?」
ここは最初に整理しておきたい点です。表示回数は、検索結果などに求人情報が出た回数であり、詳細まで読まれた回数ではありません。求職者の画面には複数社の求人が並び、その中から選ばれて初めてクリックになります。
求人広告の数字は、表示された、クリックされた、応募画面へ進んだ、応募を完了した、という順番で捉える必要があります。
この流れを理解すると、「広告費が足りないのか」「写真や給与が選ばれていないのか」「仕事内容を読んだ後に離脱しているのか」を切り分けやすくなります。
表示回数だけでは求人原稿と広告配信のどちらに問題があるか判断できない状態
有料掲載を始めると、無料掲載より表示回数が大きく増える場合があります。ただし、表示が増えたこと自体は採用成果ではありません。検索結果に出ても、クリックされなければ仕事内容は読まれず、応募にもつながらないためです。
確認したい採用ファネルは、次の4段階です。
- 表示回数:検索結果などに求人が出た回数
- クリック率:表示された求人のうち、詳細を開かれた割合
- 応募開始率:詳細を見た人のうち、応募画面へ進んだ割合
- 応募完了率:応募を始めた人のうち、入力を終えて応募した割合
計算の考え方は以下のとおりです。
- クリック率=クリック数÷表示回数
- 応募開始率=応募開始数÷クリック数
- 応募完了率=応募完了数÷応募開始数
相談先で共有されていた運用上の目安では、正社員求人のクリック率は3〜4%程度とされていました。ただし、これはすべての建設会社に共通する絶対基準ではありません。エリア、職種、経験者・未経験者の違いによって、表示される相手もクリック単価も変わります。
実際に別の地域で経験者向けと未経験者向けを分けて配信したところ、未経験者向けのクリック単価が経験者向けより大幅に高くなったケースもありました。「未経験者のほうが集めやすいだろう」という感覚とは逆の結果です。
採用広告は、経営側の感覚だけで良し悪しを決めず、職種ごとの数字で確かめることが欠かせません。
3職種をまとめて配信すると、写真・給与・仕事内容のどこが効いたのか見えにくくなる構造
この会社では、複数職種を同時に募集する計画がありました。そこで出たのが、「3つの求人を一つの予算でまとめて配信できないか」という案です。
まとめて配信すること自体は可能でも、広告費が各求人へ均等に使われるとは限りません。特定の職種だけで予算の多くを消化すれば、ほかの職種は十分に表示されず、比較できるだけのデータが集まらない可能性があります。
「まとめてやると、分析しづらいということですね」
この確認のとおり、採用広告では配信のしやすさよりも、後から改善できる設計になっているかが重要です。
数字が悪い場所によって、見直す対象は変わります。
数字の状態 | 起きている可能性 | 主な確認箇所 |
|---|---|---|
表示回数が少ない | 必要な求職者へ十分に配信されていない | 職種、エリア、配信予算、検索条件 |
表示されるがクリック率が低い | 一覧画面でほかの求人に負けている | トップ写真、給与、職種の見せ方 |
クリックされるが応募開始率が低い | 詳細を読んだ段階で期待と条件が合っていない | 仕事内容、給与の内訳、休日、対象者 |
応募開始後の完了率が低い | 入力途中の負担が大きい | 必須項目数、履歴書の添付、入力内容 |
たとえば、応募画面まで進んだ人が途中で離脱している場合、トップ写真を変えても直接の改善にはなりません。履歴書の添付や多数の情報入力を必須にしていれば、その負担が離脱の一因になっている可能性があります。
一方で、入力項目を減らせばよいとは限りません。一定の情報を入力できる人に絞りたい採用方針もあります。応募数を最大化したいのか、応募時点で候補者をある程度見極めたいのかによって判断は変わります。
数字を見る目的は応募数をむやみに増やすことではなく、自社が求める人材を採用するうえで、どこが詰まっているかを特定することです。
職種別に予算を分け、2週間は条件を固定して一つずつ改善する検証手順
最初の配信では、大工、施工管理、社員職人など、募集対象が異なる求人を分けて設定するのが基本です。職種ごとに同程度の予算を設定すれば、表示回数、クリック単価、クリック率、応募率を同じ条件に近い状態で比較できます。
進め方は、次の5段階に整理できます。
1.職種と採用対象を分ける
経験者と未経験者、施工管理と職人では、求職者の母数も競合状況も異なります。一つの求人に広く詰め込むより、誰に向けた求人かを分けたほうが数字の意味を読み取りやすくなります。
2.求人ごとに予算を設定する
複数求人で一つの予算を共有すると、どの求人にいくら使われたのかを管理しにくくなります。まずは職種別に分け、同じ予算条件から始めると比較がしやすくなります。
職種別の成果を比較したいなら、求人と予算を分けることが検証の出発点です。
3.最初の2週間は原稿を動かさない
掲載後に反応が気になり、写真や文章を毎日変えたくなることがあります。しかし、変更を重ねると、どの要素が数字に影響したのか分からなくなります。
「一旦2週間は何もいじらずにやりましょう」という進め方には、比較できるデータを残す意味があります。配信直後の短期的な増減だけで判断せず、一定期間は写真、給与表記、仕事内容、予算を固定します。
4.悪い段階に対応する要素だけを変える
2週間後、採用ファネルのどこで落ちているかを確認します。
- 表示が少ないなら、配信予算や対象職種、エリアを確認する
- クリック率が低いなら、トップ写真や給与の見え方を確認する
- 応募開始率が低いなら、仕事内容や条件の伝わり方を確認する
- 応募完了率が低いなら、必須入力項目や履歴書添付を確認する
ここで写真、給与、仕事内容を同時に変えると、数字が改善しても理由が分かりません。写真を変える期間、仕事内容を変える期間というように、変更対象を一つに絞ります。
給与については、数字を良くするために実態以上に見せるのではなく、基本給、固定残業代、各種手当などが正しく伝わっているかを確認します。求人原稿と面接時の説明が食い違えば、応募後の辞退にもつながりやすいためです。
一度に変える要素は一つに絞り、変更前後の数字を同じ期間で比較します。
5.採用できたかだけでなく、職種との相性を判断する
一定額を使っても応募につながらない場合、その求人媒体が対象職種に合っていない可能性もあります。施工管理は別の採用手段が向いている一方で、大工職人は求人広告の反応が良い、といった違いも起こり得ます。
そのため、採用できなかったから広告費が無駄だったと即断するのではなく、表示、クリック、応募開始、応募完了のどこまで進んだかを確認します。次に予算を集中させる職種や、別の採用手段へ切り替える職種を判断する材料になります。
まとめ
求人広告の改善は、応募数だけを見ていても進みません。応募に至るまでを段階に分けることで、広告配信と求人原稿を切り分けて考えられます。
表示回数は配信状況、クリック率は写真や給与の第一印象、応募開始率は仕事内容や条件、応募完了率は入力負担を見直す手がかりになります。
複数職種を募集する場合は求人と予算を分け、まずは2週間程度、条件を固定します。その後、数字が落ちている段階に対応する要素を一つだけ変え、同じ期間で比較します。
有料掲載は、単に露出を買うためだけのものではありません。自社の求人がどこで選ばれ、どこで離脱されているのかを把握し、採用活動を改善できる状態をつくるための投資でもあります。
自社の求人数字を職種別に整理したいときに
「表示は増えたのに応募が来ない」「写真と給与のどちらを先に直すべきか分からない」といった場合は、求人ごとの採用ファネルを並べるところから整理できます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題を、求人原稿だけでなく、職種設計、予算配分、応募データ、社内の対応体制まで横断して整理し、実行を支援しています。自社だけで判断しにくい段階でも、数字を見ながら次に検証する項目を一緒に決められます。
無理に有料掲載や特定の方法をおすすめすることはありません。「うちの場合は何から見るべきか」という段階でも、無理な営業はいたしませんので気軽にご相談ください。