前提

経験者と未経験者の求人を同時に掲載し、有料化で表示回数が約3,000回まで増えた関東の専門工事会社

関東で大工や施工スタッフを採用する、ある専門工事会社の事例です。経験者向けと未経験者向けの求人を分け、求人媒体で約1カ月の無料掲載を行った後、有料掲載へ切り替えました。

無料掲載中の結果は、約40回の表示に対して3クリックでした。有料掲載へ切り替えると、約1週間で表示回数は約3,000回まで増加。応募も入り始めました。

一見すると、広告費をかけた効果が出ているように見えます。ただし、経験者向けと未経験者向けを分けて確認すると、反応には大きな差がありました。

  • 経験者向けは、未経験者向けより表示回数が約5倍
  • クリック数も、経験者向けが約3倍
  • 経験者向けでは応募が発生
  • 未経験者向けでは応募につながらない状態

経営側からは「これだけ表示されているのに、なぜ応募が増えないのか」という疑問が出ました。

求人広告は、表示回数だけでは良し悪しを判断できません。表示、クリック、応募開始、応募完了を分けて見ることが改善の出発点です。

課題

表示回数の増加を成果と捉えると、反応の弱い募集にも予算を使い続ける状態

求人広告を有料にすると、無料掲載よりも表示回数は増えやすくなります。しかし、表示された人が求人の詳細を開き、応募まで進むとは限りません。

この会社でも、有料化によって露出は大幅に増えました。一方、同じように掲載していた経験者向けと未経験者向けでは、表示数、クリック数、応募数のすべてに差が出ています。

ここで注意したいのが、表示回数だけを見て「もう少し続ければ応募が来るだろう」と考えてしまうことです。反応の弱い募集をそのまま掲載すると、採用可能性の低いところに予算を使い続けることになります。

確認したい数字は、次の4段階です。

  1. 表示数:検索結果などに求人が表示された回数
  2. クリック率:表示された求人が開かれた割合
  3. 応募開始率:求人を開いた人が応募ボタンを押した割合
  4. 応募完了率:応募を始めた人が必要情報を入力し、送信まで終えた割合

たとえば、表示は多いのにクリックされない場合、募集条件以前に、一覧画面で見える職種名、冒頭の言葉、写真が響いていない可能性があります。

クリックはされるのに応募が始まらない場合は、仕事内容や条件を読んだ後に「自分の仕事ではない」と判断されているかもしれません。応募開始後に離脱しているなら、必須入力や履歴書などの応募負担も確認対象になります。

「応募がない」という一つの結果だけを見るのではなく、候補者がどの段階で止まったかを確認すると、直す場所が見えやすくなります。

背景

「多能工」という会社側の言葉と、求職者が仕事を探す言葉のずれ

反応差の背景には、採りたい人物像と求人上の表現が十分につながっていない事情がありました。

この会社が求めていたのは、大工仕事だけを担当する人とは限りません。現場に応じて周辺作業にも対応し、複数の役割を担える人材も必要としていました。社内では、その人物像を「多能工」と表現していました。

ただ、経営側からはこんな疑問も出ています。

「若い人に『多能工』という言葉は響かないのではないか」

会社にとっては当たり前の職種名でも、求職者が同じ言葉で仕事を探しているとは限りません。言葉の意味が伝わらなければ、表示されてもクリックされない可能性があります。クリック後に仕事内容を読んでも、自分が対象だと理解されないかもしれません。

また、同じ「未経験者向け」でも、会社が伝えたい魅力と求職者が知りたい情報が一致しているとは限りません。求人一覧で目に入る短い言葉や写真が弱ければ、詳しい仕事内容まで読まれないまま流れてしまいます。

対話の中でも、「表示されたときに心が動く言葉がないと、読み飛ばされてしまう」という話が出ていました。きれいな採用表現を並べるだけではなく、現場で実際に任せる仕事や身につく技術を、求職者が理解できる言葉に置き換える必要があります。

写真も同様です。現場撮影には元請け側のルールがあり、自由に撮れない事情がありました。そこで、自社で調整できる場所に若手社員や職人を集め、本人や手元、働く雰囲気が伝わる写真を撮る方向で整理しています。

会社が使い慣れた職種名ではなく、採りたい人が自分の仕事として理解できる言葉と写真になっているかが、クリック率を左右します。

解決

表示から応募完了までを順番に確認し、無料掲載で小さく試してから予算を移す運用

求人広告の改善は、原稿全体を感覚で書き直すより、数字が落ちている場所を特定して一つずつ試すほうが進めやすくなります。

1.最初に表示数を確認する

表示数が少なければ、そもそも候補者に届いていません。職種、勤務地、雇用形態などの設定に加え、対象となる求職者がその地域にどの程度いるかも影響します。

今回のように、経験者向けと未経験者向けで表示数に約5倍の差がある場合、まずは市場からの反応が異なると捉えます。表示が少ない募集へ自動的に予算を追加するのではなく、その職種を有料で継続する意味があるかを確認します。

表示数が少ない募集は、広告費を増やす前に、職種の切り方と狙う層が合っているかを見直します。

2.次にクリック率を確認する

表示されているのにクリックされない場合は、一覧画面で見える要素を見直します。候補になるのは、職種名、冒頭の訴求、写真です。

たとえば「多能工」という表現を使うなら、その言葉だけで終わらせず、どのような仕事を担当するのかが分かる説明を添えます。一方で、別の表現のほうが反応する可能性もあるため、最初から正解を決めつけません。

写真についても、会社の外観だけでなく、実際に働く社員や職人の姿が伝わるものを試します。ただし、言葉と写真を同時にすべて変えると、何が効いたのか分からなくなります。

職種名、訴求語句、写真は一度に変えすぎず、変更点を絞ってクリック率の変化を確認します。

3.応募開始率で仕事内容と条件の伝わり方を確認する

クリックされても応募が始まらない場合、求人の中身を読んだ段階で候補から外れています。

確認したいのは、次のような点です。

  • 職種名と実際の仕事内容が一致しているか
  • 経験者向け、未経験者向けの違いが明確か
  • 任せる仕事の範囲が理解できるか
  • 求める人物像が広すぎたり、反対に狭すぎたりしないか

今回の会社では、経験者向けのほうが表示、クリック、応募の反応が良い状態でした。まず経験者採用を優先するなら、反応の弱い未経験者向け広告を一度止め、経験者向けへ予算を寄せる判断ができます。

複数の求人を同じ予算で残すのではなく、応募に近い動きが出ている職種へ予算を配分することが大切です。

4.応募完了率で手続き上の離脱を確認する

求人媒体では、応募ボタンを押した後に、電話番号やメールアドレスなどを入力し、再度送信する流れがあります。その途中で離脱すると、応募開始には計上されても応募完了にはなりません。

正社員採用では一定の入力項目が必要です。一方、履歴書などの必須条件を増やしすぎると、応募前の負担が大きくなります。応募のしやすさだけを優先するのではなく、自社が一次選考に必要とする情報とのバランスで決めます。

応募開始はあるのに完了しない場合は、原稿ではなく、入力項目や必須書類による離脱を確認します。

5.新しい原稿は無料掲載で試す

新しい職種名や訴求を、いきなり有料広告で試す必要はありません。無料掲載の枠で別原稿を作り、既存原稿と表示数やクリック数を比較します。

この会社でも、反応の良い経験者向けへ有料予算を集めながら、「多能工」に代わる表現や別職種の切り口は無料掲載で検証する方針になりました。

進め方はシンプルです。

  1. 反応の良い既存求人へ有料予算を配分する
  2. 新しい職種名や訴求の原稿を無料で掲載する
  3. 一定期間、表示数とクリック率を確認する
  4. 既存求人より反応が良ければ、次の有料掲載候補にする
  5. 応募開始と応募完了まで追い、継続を判断する

有料掲載は実績のある求人へ、まだ正解が分からない原稿は無料掲載で試すと、予算の無駄を抑えながら改善できます。

まとめ

求人広告は、掲載して待つものではなく、候補者の反応を見ながら調整するものです。とくに建設業では、会社側が使う職種名と、求職者が理解する仕事の名前がずれていることがあります。

改善するときは、次の順番で数字を確認します。

  • 表示されているか
  • 表示からクリックされているか
  • クリックから応募が始まっているか
  • 応募開始から完了しているか

そのうえで、反応の弱い募集を止め、応募に近い動きがある職種へ予算を寄せます。新しい職種名、訴求語句、写真は無料掲載を活用し、小さく試します。

採用成果を高める鍵は、広告費の大きさよりも、数字を見て「止める・寄せる・試す」を繰り返せる運用体制です。

自社の求人でどこが止まっているかを整理するところから

「表示はされるのに応募がない」「経験者向けと未経験者向けのどちらに予算を寄せるべきか分からない」ときは、原稿を書き直す前に数字の流れを整理すると、次の一手が見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題を、求人データ、現場の仕事内容、社内体制まで横断して整理し、原稿改善や運用の実行まで支援しています。「うちの場合は何から確認すればよいか」という段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、今の求人状況の整理先として気軽にお声がけください。

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