15名強の組織で若手採用が止まり、現場を支える社員の高齢化が進む専門工事会社
岐阜県に拠点を置く、15名強の専門工事会社があります。住宅関連工事と公共工事を手がけていますが、社員の補充が進まず、年齢だけが少しずつ上がっていました。
住宅関連工事を担う4名のうち、最も若い社員でも40歳前後。ほかは50代が中心です。公共工事では、60歳を超えて再雇用となった社員や、定年が近い社員が現場を支えています。
「退職した人の補充ができない。順番に人数が減って、年齢だけが上がっていく」
中途採用が中心で、最後に社員を迎えたのは約10年前です。新卒採用を止めていた時期もあり、現在は若手との年齢差が大きくなっています。
一方で、仕事がないわけではありません。人がいれば受けられる工事があり、管理者や有資格者がいないために断った案件もありました。公共工事では資格者を一現場に一人配置する必要があり、採用の停滞がそのまま受注余力の低下につながっています。
この会社の採用課題は、単なる欠員補充ではありません。今後も仕事を受け続けるための人員構成を、どう組み直すかという経営課題です。
求人媒体を増やしても、欲しい人材からの応募と採用につながらない状態
この会社は採用活動をしていなかったわけではありません。複数の求人サービスを使い、年間で300万円以上を投じたものの、求める人材の採用には至りませんでした。
求人媒体の担当者からは、クリック数を増やすために給与を高く見せる提案もありました。しかし、会社側には違和感が残りました。
「クリックを増やしたいだけなのか。実際に採用できなければ意味がない」
もともとの給与水準は、地域の建設会社として決して低くありません。それでも応募してくるのは、会社が迎えたい20代の未経験者や中堅の有資格者ではなく、60歳を超えた経験者が中心でした。希望年収が会社の想定とかけ離れているケースもあります。
ここで見直したいのは、媒体の数ではありません。
求人広告を出しても採用できないときは、「誰を採りたいか」「その人はどこにいるか」「何を魅力として伝えるか」がつながっているかを確認する必要があります。
この会社が求めている人材は、実際には一種類ではありませんでした。
- 住宅関連工事で育成できる20代の未経験者
- 公共工事を担える施工管理の有資格者
- 将来の現場や組織を支える中堅人材
必要な経験、採用の緊急度、入社後の役割が異なる人材を、一つの求人票でまとめて募集しても、訴求はぼやけます。若手未経験者に響く情報と、有資格者が転職先を判断する情報は同じではないからです。
採用したい人材が複数いる場合は、求人票も採用経路も分けて設計することが出発点です。
求人票と会社の実像が結びつかず、応募前の比較検討に必要な情報が不足している状況
求職者は求人票だけを見て応募先を決めるわけではありません。求人媒体で会社を知った後、会社のホームページや採用ページに移り、再び求人票へ戻る。こうした往復を何度も重ねながら、自分に合う会社かを判断します。
対話の中では、応募までに求人票とホームページを7〜8回ほど往復するケースもあるという話が出ました。このとき、求人票には魅力的な条件が書かれていても、ホームページから社員の姿や仕事内容が見えなければ、応募の決め手が不足します。
特にこの会社には、外から見ただけでは分からない強みがありました。
少人数でも現場を回せる技術力があります。住宅関連工事では、未経験者でも一定期間の研修を経て仕事を覚えられる仕組みがあります。社員を細かく縛るのではなく、一人ひとりが動きやすい環境をつくるという会社の考え方もあります。
社長は次のように話していました。
「社員にあれをやれ、これをやれと言うより、自由に動ける環境をつくるのが自分の仕事だと思っている」
こうした考え方は、働く環境を重視する候補者にとって大切な情報です。しかし、求人票で給与や休日だけを並べても伝わりません。
また、既存社員への聞き取りも重要です。社員インタビューをすると、会社側が当たり前だと思っていた魅力が見つかることがあります。なぜ入社したのか。なぜ10年以上続いているのか。どのように仕事を覚えたのか。少人数の会社だからこそ、こうした実話が採用上の強みになります。
会社の歴史も同様です。長年積み上げた施工実績や地域での信用は、若手には「安心して働ける会社」、経験者には「技術や資格を生かせる会社」という形で伝え直せます。
求人票と採用サイトには、同じ給与条件を載せるだけでなく、会社の歴史、社員の声、育成方法、仕事の実像を一貫して掲載することが大切です。
もう一つの背景は、入社後の受け入れ方です。この会社では、住宅関連工事なら若手を教えられますが、公共工事では高齢化が進み、新卒を一から育てる余力が限られています。
さらに、20代を一人だけ採用しても、周囲との年齢差が大きくなります。会社側からも「若い人を一人だけ入れるより、話せる仲間をつくってあげないと続きにくい」という声がありました。
応募が少ない問題と、入社後に定着できるかという問題は切り離せません。採用人数だけでなく、配属先、教育担当、同期に近い仲間の有無まで含めて考える必要があります。
人材像、接点、自社の魅力を一本につなげてから採用投資を行う進め方
最初に取り組みたいのは、新しい求人媒体を探すことではなく、採用戦略を一枚に整理することです。難しい計画書をつくる必要はありません。まずは次の順番で決めていきます。
1.必要な人材を役割ごとに分ける
「若い人が欲しい」「資格者が欲しい」だけでは、求人票も採用経路も選べません。採用したい人材ごとに、最低限、次の項目を整理します。
- 配属する事業と担当業務
- 経験者か未経験者か
- 必要な資格と入社後に取得できる資格
- 採用したい時期
- 誰が教育するか
- 一人前になるまでの期間
- 将来任せたい役割
今回の会社であれば、住宅関連工事の20代未経験者と、公共工事の有資格者は別枠です。前者は育成可能性、後者は資格と経験を重視します。
「誰でもよい求人」ではなく、役割ごとに人材像を分けると、媒体、求人票、面接で伝える内容を選びやすくなります。
2.候補者がいる場所に合わせて接点を選ぶ
人材像が決まったら、その候補者がどこで仕事を探しているかを考えます。
20代の未経験者であれば、一般的な転職媒体だけでなく、第二新卒向けの紹介サービスなども選択肢になります。新卒を継続的に採るなら、学校訪問を重ね、先輩と後輩のつながりをつくる方法もあります。
一方、短期間で有資格者を採りたい場合は、成功報酬型の人材紹介を含め、費用をかけて候補者へ直接接点を持つ判断も必要です。ただし、希少な有資格者は希望年齢どおりに採れないこともあります。60代の経験者を期限付きで採用し、その間に若手を育てるという考え方も、事業を止めないための選択肢になります。
判断軸は、媒体費の安さだけではありません。
- いつまでに必要か
- 欠員によって、どの程度の受注機会を逃しているか
- 社内で育成できる職種か
- 採用単価をどこまで許容できるか
- 一時的な補充か、将来を担う採用か
採用経路は「有名だから」ではなく、候補者の居場所と採用期限から選ぶものです。
3.社員の声と会社の歴史から、伝える魅力を言葉にする
求人票を修正する前に、既存社員へ短い聞き取りを行います。質問は複雑でなくて構いません。
- 入社を決めた理由
- 長く続けられている理由
- 入社前後で印象が変わったこと
- 技術を身につけられたきっかけ
- 他社と違うと感じるところ
ここで出た言葉に、会社の歴史や施工実績、社長が大切にしてきた考え方を重ねます。そのうえで、採用サイト、求人票、面接で同じ内容を伝えます。
例えば「自由に働ける会社」と書くだけでは、候補者には伝わりにくいものです。どこまで現場判断を任せているのか、困ったときは誰に相談できるのか、どのように仕事を覚えるのかまで示すと、働く姿を想像しやすくなります。
会社の魅力は、きれいな言葉を新しくつくるより、長く働く社員の実感と会社の歩みから見つけるほうが伝わります。
4.求人票と採用サイトの内容をそろえる
求人票で「未経験者を育てる」と書くなら、採用サイトには研修内容や独り立ちまでの流れを載せます。「技術力が高い」と書くなら、社員がどのような仕事を担当し、何を身につけてきたのかを紹介します。
少なくとも、次の項目は矛盾がないようにそろえます。
- 募集職種と実際の仕事内容
- 求める経験や年齢層
- 給与と評価の考え方
- 教育体制
- 社員構成
- 会社が今後目指す方向
求人票だけを更新し、ホームページが以前のままだと、候補者は判断に迷います。反対に、会社の実像が一貫して見えれば、最初は「家から近い」という理由で求人を見た人にも、応募する理由が生まれます。
5.応募数ではなく、採用と定着までを振り返る
クリック数や応募数は途中経過です。採用活動の良し悪しは、次の数字をつなげて見ます。
- 求人の閲覧数
- 応募数
- 条件に合う応募者数
- 面接数
- 内定数
- 入社数
- 入社後の定着状況
応募が多くても、求める人材が含まれていなければ改善が必要です。応募は少なくても、必要な人材を一人採用でき、現場で定着しているなら、その経路には再現性があります。
採用活動の成果は応募数ではなく、必要な人が入社し、育ち、仕事を任せられる状態になったかで判断します。
外部サービスへ投資する場合も、この整理を済ませてからのほうが納得感を持てます。採用に絶対はありません。それでも、狙う人材、使う経路、伝える魅力、検証する数字が決まっていれば、採用できなかったときにも次の改善点が残ります。
まとめ
求人広告を出しても採用できない会社に必要なのは、媒体を次々に変えることではありません。
求める人材像、候補者の居場所、自社の魅力を一本につなげ、求人票と採用サイトで一貫して伝えることが採用改善の土台になります。
特に、若手未経験者と有資格者を同時に求めている場合は、採用目的を分けることが大切です。若手には育成環境を、有資格者には任せる仕事や待遇を伝える必要があります。
そして、採用は入社で終わりません。誰が教えるのか。年齢差のある職場でどう仲間をつくるのか。いつ仕事を任せられるようにするのか。そこまで設計して初めて、採用投資が会社の力になります。
次の媒体へ費用を投じる前に、「誰を、どこで、何を伝えて採り、どう育てるか」を社内で一度整理することが、遠回りに見えて最も堅実な一歩です。
自社に合う採用の進め方を整理したいときに
採用媒体、人材紹介、採用サイトにはそれぞれ役割があります。ただし、自社が求める人材像や受け入れ体制が曖昧なままでは、費用をかけても判断材料が残りにくくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。採用では、人材像の整理、社員への聞き取り、会社の魅力の言語化、求人票と採用サイトの整合、採用後の定着までを一緒に考えます。
「うちの場合は若手と有資格者のどちらを優先すべきか」「次の求人サービスへ投資する前に何を整えるべきか」といった段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、社内だけでは整理しにくいときの相談先としてご活用ください。