前提

紹介だけでは人材確保が追いつかず、求人媒体にも期待しにくい10名弱の専門工事会社

ある中部地方の専門工事会社では、会社を大きくするために職人を増やしたいと考えていました。一方で、周囲の同業者から聞こえてくるのは、採用に苦戦した話ばかりでした。

「入社しても3カ月で辞めた」「面接をドタキャンされた」「仕事上のトラブルがあり、結局は辞めてもらった」。求人媒体を使って良かったという話は、ほとんど聞かなかったといいます。

そのため、採用は社長同士や取引先、顔の広い営業担当者からの紹介が中心でした。「良い人がいたら紹介してほしい」と日頃から声をかけているものの、必要な時期に人が見つかるとは限りません。

19歳の息子に仕事を勧めても「絶対にやらない」と返されるほど、若い世代に職人の仕事を選んでもらう難しさも感じていました。

会社の成長に職人が必要でも、紹介を待つだけでは採用時期を読めず、求人媒体を出すだけでは欲しい人材に届きにくい状態です。

課題

給与や休日を広く訴求しても大手企業の求人に埋もれてしまう採用競争

中小の建設会社が採用でつまずきやすいのは、求人の条件が悪いからとは限りません。大きな要因は、誰に向けた求人なのかが曖昧なまま、給与や休日を広く訴求してしまうことです。

「給与が高い」「しっかり稼げる」「休日を取りやすい」といった条件は、多くの求職者に伝わりやすい内容です。ただし、同じ土俵には大手企業や規模の大きな建設会社もいます。掲載費をかけ、写真や動画を充実させ、より良い待遇を打ち出している会社と並ぶと、中小企業の求人はどうしても埋もれやすくなります。

求人サイトによっては、費用の高い掲載プランほど目立つ位置に表示されます。限られた予算で同じ見せ方をしても、露出量で競うのは簡単ではありません。

そこで必要になるのが、100人全員に好かれようとする求人ではなく、そのうちの1人、2人に深く届く求人です。

中小建設会社の採用では、幅広い求職者に条件の良さを訴えるより、自社に合う少数の人材へ訴求を絞ることが重要です。

もう一つの課題は、媒体を先に選んでしまうことです。営業を受けた求人サイトへとりあえず掲載する。周囲からSNSが良いと聞いて、すぐに動画投稿を始める。こうした動きは、求める人材が普段どこで仕事を探しているかと合っていなければ、応募にはつながりません。

たとえば、高校生を採用したい会社が中途採用向けの求人サイトだけに掲載しても、接点はつくりにくいでしょう。50代、60代の経験者を採用したいのに、若年層が中心のSNSだけへ力を入れても、十分に届かない可能性があります。

求人媒体、学校訪問、紹介、SNSは採用の手段です。先に決めるべきなのは「誰を採りたいか」です。

背景

応募数を増やす求人づくりが、入社後のギャップと早期離職を生む構造

採用ターゲットが曖昧な会社では、「どんな人が欲しいですか」と聞かれたとき、理想像や大まかな条件だけを答えがちです。

「経験があって、真面目に働いてくれる人がいい」「この給与で来てくれるならありがたい」。この段階で求人をつくると、採用側も応募を集めることを優先しやすくなります。

その結果、実際の仕事より良く見える表現が増えたり、仕事内容や職場の教え方が十分に伝わらなかったりします。応募は来ても、入社後に「求人に書いてあった内容と違う」「思っていたより仕事が大変だった」と受け取られれば、定着にはつながりません。

「丁寧に教える」と書いていたのに、現場では「見て覚えて」となっている。社内のコミュニケーションや人間関係も含め、求人票と実態に差があれば、そのギャップが離職理由になります。

採用の成果は応募数ではなく、自社に合う人が入社し、仕事を続けられるかで判断する必要があります。

首都圏近郊の外装工事会社でも、同じ課題がありました。社員数は3名ほど。中心となっていた社員が相次いで退職し、一部の協力会社も離れたため、社長は急いで人を増やしたい状況でした。しかし、採用の進め方が分かりませんでした。

ホームページも採用ページもない状態から、まず取り組んだのは求人掲載ではありません。残っている社員がなぜ入社し、なぜ今も働いているのかを確認しました。さらに、過去に在籍していた社員のうち、どのような人が活躍していたかを社長と振り返りました。

同時に、地域の工事会社や職人の雇用状況も確認しました。その時期は周辺で一部の工事が止まり、技術はあるものの十分に仕事へ入れていない経験者がいると考えられる状況でした。

そこで「経験を持ちながら、現在は仕事量が安定していない職人」を採用ターゲットに設定。対象者が検索しそうな言葉と、会社が求める人物像を求人内容へ反映しました。中途採用向けの経路を選んだ結果、4件前後の応募があり、その多くが社長の求める人物像に近く、最終的に2名の採用につながりました。

社内に合う人物像と、地域に実際にいる求職者像を重ねることで、採用ターゲットは現実的な形になります。

解決

既存社員と地域の雇用状況から人物像を定め、その人がいる場所へ求人を届ける進め方

採用ターゲットは、社長の理想だけで決めるものではありません。社内の事実と社外の状況を順番に整理すると、採用できる可能性があり、入社後も定着しやすい人物像が見えやすくなります。

1.既存社員が入社し、働き続けている理由を確認する

最初に見たいのは、今いる社員です。特に、自社で活躍している人や長く働いている人には、採用ターゲットを決める材料があります。

確認したいのは、次のような内容です。

  • 何をきっかけに入社したのか
  • 入社時に何を魅力に感じたのか
  • 現在も働き続けている理由は何か
  • 仕事や会社のどこが本人に合っているのか
  • 入社前に想像していた内容と、実際の仕事に差があったか

社長への確認だけではなく、社員本人から話を聞くことが大切です。普段は社長に言わない本音が出てくることもあります。

自社の採用上の強みは、会社が伝えたい魅力ではなく、既存社員が入社・定着している実際の理由から見つけます。

2.過去に活躍した人と、早期に辞めた人の違いを振り返る

次に、過去の社員を振り返ります。活躍した人の共通点だけでなく、早期に辞めた人との違いも整理します。

経験年数や技術だけを見るのではなく、仕事の進め方、教わり方との相性、社内でのコミュニケーションなども確認します。現場で一人前になるまでの教え方が「見て覚える」に近い会社と、手順を細かく説明する会社では、合う人材が異なります。

ここでは理想を増やしすぎないこともポイントです。条件を並べるほど、採用できる人材は少なくなります。「入社時に必要な条件」と「入社後に身につけられること」を分けて考えると、人物像を絞りやすくなります。

採用ターゲットは、理想的な人物の想像ではなく、自社で実際に活躍した人材の共通点から具体化します。

3.地域や業界の雇用状況と重ねる

社内に合う人物像が分かっても、その人が地域にいなければ採用は進みません。周辺地域でどの工種の仕事が増減しているか、経験者が仕事を探す動きがあるかといった外部環境も見ます。

先ほどの外装工事会社では、地域内で仕事量が落ちている職人層に着目しました。経験者を一から探すのではなく、技術を持ちながら働く場を探している人へ狙いを定めた形です。

「自社に合う人」と「今、その地域で動いている人」の重なる部分が、実際に採用を狙うターゲットです。

4.ターゲットがいる場所に合わせて経路を決める

人物像が定まったら、その人がどこで仕事を探し、誰から情報を得ているかを考えます。

  • 中途の経験者なら、検索型の求人サービスや採用ページ
  • 高校生なら、学校訪問、合同説明会、公共職業安定所との連携
  • 人柄やつながりを重視するなら、社員や取引先からの紹介
  • SNSを日常的に使う層なら、仕事内容や会社の雰囲気が分かる投稿
  • 外国人材なら、利用されているSNSや地域のコミュニティー

たとえば検索型の求人サービスでは、求職者が入力する職種、地域、休日などの言葉と求人内容が合えば、情報が届きやすくなります。ただし、検索型サービスを使うこと自体が目的ではありません。ターゲットがそこで仕事を探している場合に選ぶ手段です。

媒体の知名度や流行ではなく、採用ターゲットが実際にいる場所を基準に経路を選びます。

5.応募を増やす言葉ではなく、入社後の実態を伝える

求人内容には、良い面だけでなく実際の仕事も入れます。仕事内容、働き方、教え方を事実に沿って伝えた方が、応募時点でのミスマッチを減らせます。

採用ページやSNSは、求人を見た人が「どんな会社なのか」を確かめる場所にもなります。求人サービスからホームページへ、SNSから採用ページへと確認できる経路をつくり、どこを見ても内容が食い違わない状態にします。

「数を打つより、狙いを定めてピンポイントで届けた方がよい」という感覚は、建設会社の採用とよく合います。

求人の訴求は応募者を広く集めるためではなく、自社に合う人が仕事と職場を正しく判断できる内容にします。

まとめ

求人を出しても欲しい職人が集まらないとき、すぐに別の媒体へ切り替えるだけでは状況が変わらないことがあります。給与や休日を広く打ち出しても、大手企業と同じ土俵で比較されやすいためです。

先に整理したいのは、次の順番です。

  1. 既存社員が入社・定着している理由を確認する
  2. 過去に活躍した人材の共通点を振り返る
  3. 地域や業界の雇用状況を調べる
  4. 自社に合い、実際に採用を狙える人物像を定める
  5. その人がいる場所に合わせて媒体や紹介経路を選ぶ
  6. 実際の仕事内容や職場環境とずれない訴求をつくる

採用は求人媒体選びからではなく、「誰を採り、その人はなぜ自社で働き続けられるのか」を整理するところから始まります。

自社に合う職人像と採用経路を整理したいときに

採用したい気持ちはあっても、「どんな人を狙うべきか」「紹介、求人媒体、学校訪問、SNSのどれから始めるべきか」が曖昧なことは珍しくありません。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題を、既存社員の状況、過去の採用、地域の雇用環境まで含めて整理し、採用ターゲットの設計から実行まで支援しています。必要に応じて、組織づくりや定着の課題も横断して確認します。

「うちの場合は誰を採るべきか」という初期段階でも構いません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。

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