元従業員の退職後、1年以上受注が止まっている岡山県内の専門工事会社
岡山県内で商業施設などの施工を手がける、ある専門工事会社には、過去に継続して仕事を受けていた取引先がありました。現在も先方とのつながり自体は残っていますが、受注は1年以上止まっています。
きっかけは、取引先の窓口を担っていた自社従業員の退職でした。
「窓口は前の従業員が担当していましたが、実際の仕事の何割かは私がやっていました。その人が辞めた途端、仕事がぱったりなくなったんです」
先方には面識のある担当者が3人ほどおり、それぞれが案件の決裁権を持っています。さらに、過去の案件で会った別の担当者や、新しく担当になった可能性のある人もいます。完全に縁が切れたわけではありません。
一方で、退職した元従業員が先方から強い信頼を得ていたため、会社としての施工実績や、実際に誰が現場を担っていたのかが十分に伝わっていなかった可能性があります。
この状態は「取引先を失った」というより、個人に集中していた窓口がなくなり、会社同士の接点が細くなっている状態です。
元担当者への信頼が、そのまま自社への発注につながらない状態
難しいのは、仕事が止まった理由を外から確認できないことです。
相談企業からは、「元従業員に仕事が全部流れているのではないか」「先方に何か言われているのではないか」という懸念も出ていました。ただし、これは現時点では推測です。推測のまま先方の意図を読み続けても、関係を立て直す材料は増えません。
一方、先方から見ると、これまで頼っていた窓口がいなくなった後に、次のような情報が見えにくくなっている可能性があります。
- 今後は誰に連絡すればよいのか
- 過去の案件を実際に施工していたのは誰か
- 以前と同じ施工品質や対応力を維持できるのか
- 現在はどのような案件を任せられるのか
取引先の担当者は、自分が安心して任せられる相手に相談します。過去の窓口担当者への信頼が強いほど、その人が退職した後に発注が止まること自体は不自然ではありません。
問題の中心は、元従業員の動向ではなく、発注担当者から見た「現在の相談先」と「任せられる根拠」が曖昧になっていることです。
施工を担う人と取引先から見える窓口が分かれていた関係
今回の取引では、元従業員が取引先との窓口を担い、現在の担当者が実務の一部を担う形になっていました。
社内では「誰がどこまで施工したか」を把握していても、先方からは窓口担当者の働きとして見えていた可能性があります。担当者同士の信頼が深まる一方、自社の施工体制や他の社員の役割が伝わらないまま取引が続いていたと考えられます。
「先方が自分をどう評価しているかにもよります。前の従業員には絶対的な信頼がありましたから」
この言葉からも、施工を担ってきた側に実績はありながら、それが個人の評価として先方に蓄積されているかは分からない、という状況が見えます。
ただし、関係を戻す余地は十分にあります。面識のある担当者が複数おり、その担当者ごとに決裁権があるからです。秋には先方関係者が集まる懇親会も予定されており、再接触のきっかけもあります。
一人の窓口との関係が弱くなっても、複数の決裁担当者と接点をつくれれば、取引関係を会社単位で組み直せます。
事前面談と懇親会をつなぎ、複数担当者へ施工実績を伝える関係の再構築
休眠取引先を掘り起こす際は、懇親会の場だけで受注を取り戻そうとしないことが大切です。先に面談の機会をつくり、その後に懇親会で再会する流れにすると、接点を一度で終わらせずに済みます。
今回であれば、次の順番で進めるのが現実的です。
1.過去の取引を担当者別に整理する
最初に、面識のある3人を含め、取引先との接点を洗い出します。
- 誰から、どの案件を受けたか
- 当時の窓口は誰だったか
- 自社では誰が施工や調整を担ったか
- 最後の発注はいつだったか
- 現在も連絡できる担当者は誰か
- 各担当者がどの範囲の案件を決裁できるか
担当者名を並べるだけではなく、案件との関係まで整理することがポイントです。これにより、誰に何を伝えるべきかが見えやすくなります。
2.懇親会の前に正式な面談を設ける
先方に懇親会で突然声をかけるよりも、事前に面談を設けておくほうが話を進めやすくなります。
面談の目的は、仕事が止まった理由を問いただすことではありません。過去の実績を確認しながら、現在の施工体制と今後対応できる案件を改めて伝えることです。
伝える内容は、次の3点に絞れます。
- 過去の案件で自社が担った施工内容
- 退職後の連絡窓口と社内体制
- 現在対応できる工事の種類や範囲
休眠取引先への面談は、過去の説明を求める場ではなく、先方が再び発注できる判断材料を渡す場です。
3.既存担当者だけでなく、別の決裁担当者との接点をつくる
過去に仕事をもらっていた担当者への連絡は必要ですが、その3人だけに戻ろうとすると、再び属人的な関係になりかねません。
面談では、現在の担当体制や他の発注担当者についても自然に確認します。例えば、「岡山エリアの案件は現在どなたが担当されていますか」「同様の案件を担当されている方にも、一度施工体制をご説明できますか」といった聞き方です。
担当者ごとに決裁権がある会社なら、接点の数がそのまま案件相談の入口になります。以前にはいなかった新しい担当者が着任している可能性もあります。
取引の再開だけでなく、特定の一人が異動・退職しても関係が途切れない接点設計まで行うことが重要です。
4.懇親会では「初回営業」ではなく「面談後の再会」にする
事前面談ができていれば、懇親会での会話は「先日はありがとうございました」から始められます。1年以上ぶりに顔を出し、その場で関係を戻そうとするより、動きやすさは大きく変わります。
懇親会では、面談した担当者との関係を深めながら、まだ接点のない担当者を紹介してもらいます。そこで詳しい営業説明まで詰め込む必要はありません。後日あらためて話す約束をつくれれば十分です。
面談と懇親会によって短期間に二度接点を持つことで、社名や担当者の顔を思い出してもらいやすくなります。
5.取引再開の判断を受注の有無だけで見ない
一度の面談で、すぐに案件が出るとは限りません。次の状態まで進めば、関係は前進しています。
- 新しい窓口担当者が明確になった
- 別の決裁担当者を紹介してもらえた
- 見積もり参加や案件相談の条件が分かった
- 自社の施工実績と現在の体制を説明できた
- 次回連絡する時期や案件分野を確認できた
受注だけを成果にすると、案件がない時期の面談を「反応がなかった」と判断しがちです。まずは、発注候補として再認識してもらうところまでを最初の目標に置くと、動きを継続しやすくなります。
まとめ
担当者の退職後に受注が止まった場合、取引先との関係まで失われたとは限りません。窓口となる個人への信頼が強く、会社としての施工実績や現在の体制が十分に伝わっていないだけのケースもあります。
今回のように、過去の担当者との面識が残り、複数の担当者が決裁権を持っているなら、関係を立て直す入口はあります。
過去の担当者だけに戻ろうとせず、事前面談で実績と体制を伝え、懇親会で接点を広げることが、個人の関係を会社同士の関係へ変える一歩になります。
まず整理したいのは、元従業員が何をしているかではありません。自社がどの案件で何を担い、現在は誰が窓口となり、先方の誰と新たな関係をつくるべきかです。この3点が見えれば、休眠取引先への働きかけは具体化できます。
休眠取引先との関係をどこから戻すか整理したい方へ
過去に取引があった会社ほど、「誰に、どのように連絡を入れるべきか」で迷いやすいものです。担当者の退職や異動が関係していると、自社だけでは動きにくい場合もあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、休眠取引先への再接触、面談の設計、決裁担当者との接点づくりなど、案件獲得に向けた実行まで支援しています。
「うちの場合はどの担当者から話すべきか」「過去の取引をどう説明し直せばよいか」といった段階でも構いません。無理に営業を進めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。