前提

社長と営業2人がそれぞれの人脈を生かし、設備会社からの足場工事を増やしている関東圏の専門工事会社

関東圏で足場工事を手がける、ある専門工事会社があります。新規営業を担うのは、社長と営業担当者2人です。

狙っているのは、設備工事会社から受ける足場工事です。戸建て工事を複数棟こなすより、設備工事会社の現場を1件受けたほうが、職人の稼働や粗利の面で組み立てやすい。その実感がありました。

ただし、毎月継続して発注される仕事ではありません。監督1人につき、年間で数現場あればよいというペースです。だからこそ、取引先を一気に増やすのではなく、相性のよい会社との関係を少しずつ増やす必要があります。

社長はこう話していました。

「設備会社を、ゆっくりでも着実に一社ずつ取っていきたいんです」

営業担当者も、それぞれ以前から持っている名刺や人脈を使って動いています。面談後の進め方も個人ごとです。

社長の場合は、相手の電話番号を自分の携帯電話に登録します。お礼のメールを送り、相手にも番号を登録してもらえるよう、一度携帯電話へ電話します。その後も「名前を忘れられないように電話しました」と定期的に接点を持ちます。

設備工事など発注頻度が低い市場では、初回訪問の数より、発注のない期間に関係を切らさないことが重要です。

課題

「会ってきました。次も連絡しておいて」で終わると、長期の見込み客が担当者の中に埋もれる状態

この会社の課題は、営業活動そのものが止まっていることではありません。社長も営業担当者も電話をかけ、訪問し、関係をつくっています。

問題は、その後です。

「アポイントが取れたから、担当エリアの営業に行ってもらう。帰ってきたら『どうだった?』と聞いて、『次も営業をかけておいて』で終わりです」

担当者が覚えているうちは、これでも追えます。しかし、接点を持つ会社が増え、案件化まで1年、2年とかかると、記憶だけでは追い切れません。

社長の携帯電話には担当者の番号が入っています。営業担当者には、それぞれの名刺と人脈があります。ただ、会社として次の情報がそろっていない状態でした。

  • 最後にいつ、誰が連絡したか
  • 相手はどのような反応だったか
  • どの元請や設備会社の案件を持っているか
  • 業者登録や指定講習が必要か
  • 次にいつ、何を理由に連絡するか
  • 試験的に頼めそうな小口業務があるか

電話帳、名刺、メール、担当者の記憶に情報が分かれていると、将来の取引候補が「今すぐ仕事がない会社」として埋もれます。

営業件数を増やしても、接点を持った会社を追い切れなければ、毎回新しい会社を探し直すことになります。建設営業では、ここに大きなもったいなさがあります。

背景

指定講習を受けても発注はなく、2年間の電話と小さな手伝いが最初の現場につながる建設営業

建設業の新規開拓は、業者登録や資格取得を終えれば受注できる、という単純な流れではありません。

この会社が設備工事会社との取引を始めたときも、最初から足場工事を任されたわけではありませんでした。

きっかけは、以前から知っていた担当者が、取引したい会社に在籍していると分かったことでした。仕事に入るには、元請指定の講習を受け、必要な資格を得る必要がありました。そこで丸一日かけて講習を受けました。

しかし、講習を受けても仕事は出ません。

「資格を取ったからって、仕事をもらえるわけじゃないんです。そこから2年くらい、何もなくても毎月電話しました」

最初に来た依頼は、まとまった足場工事でも、見積もり依頼でもありません。設備を解体した後の搬出を手伝ってほしい、という小さな相談でした。社長は人を連れて現場へ行き、一緒に対応しました。

一見すると、本業の受注には直結しない仕事です。ただ、相手から見れば、困ったときに動いてくれる会社かどうかを確かめる機会でもあります。

建設営業では、資格取得や業者登録はゴールではなく、発注候補に入るための入口です。

その後に必要なのは、相手の発注タイミングが来るまで接点を保つことです。特に設備関連の足場工事は、常に依頼があるわけではありません。相手に案件が発生し、自社が対応でき、既存業者だけでは足りない。この条件が重なったとき、初めて相談が来ます。

だからこそ、電話をかけた回数だけで営業を評価すると、途中の大切な変化が見えません。

「担当者と話せるようになった」「必要な講習が分かった」「小さな相談を受けた」「現場の進め方を理解してもらえた」。こうした変化が、受注までの階段になります。

長期追客で管理すべきなのは、売上になる前の信頼の進み具合です。

解決

接触履歴と次回連絡日を一つの表に集め、小さな依頼まで受注への段階として残す運用

まず取り組みたいのは、高機能な営業システムの導入ではありません。社長と営業担当者が同じ情報を見られる、一つの管理表をつくることです。Excelやスプレッドシートからでも始められます。

最低限、次の項目をそろえます。

管理項目

記録する内容

会社・担当者

会社名、部署、担当者、連絡先

取引構造

元請、一次会社、協力会社などの位置づけ

案件可能性

自社が対応したい工事を持っているか

接触履歴

電話、メール、訪問の日時と会話内容

反応

関心あり、時期未定、既存業者で充足など

登録・資格

業者登録、指定講習、入場資格の要否と進捗

小口依頼

応援、搬出、部分施工などの相談履歴

次回連絡日

次に連絡する日と連絡する理由

社内担当者

社長、営業担当者など、次に動く人

特に外せないのが、次回連絡日です。「また連絡します」ではなく、日付と理由まで決めます。

たとえば、「担当現場が落ち着く時期に電話する」「指定講習の受講後に連絡する」「次年度の工事計画が固まる頃に状況を聞く」といった形です。

すべての見込み客に次回連絡日と担当者を置くと、追客が個人の記憶から会社の業務に変わります。

追客頻度は一律にする必要はありません。相手の反応と発注の見込みに応じて分けるほうが、双方に無理がありません。

  • 具体的な案件や相談がある会社は、案件の動きに合わせて連絡する
  • 資格取得や業者登録まで進んだ会社は、発注時期を確認しながら接点を保つ
  • 将来性はあるものの時期が読めない会社は、相手の節目に合わせて連絡する
  • 反応が薄い会社は、頻度を下げつつ情報を残す

社長のように毎月電話する方法が合う相手もいます。一方で、忙しい時期の連絡を負担に感じる相手もいます。大切なのは、しつこさを一律の回数で決めず、反応を記録して調整することです。

また、小さな依頼を「本命ではない仕事」として切り捨てないことも重要です。搬出の手伝いや短時間の応援でも、対応の速さ、安全面、現場での受け答えを知ってもらえます。

小口依頼を受けた後は、次の点を管理表へ残します。

  • 何に困っていたのか
  • 誰の判断で依頼が来たのか
  • 自社の対応をどう評価していたか
  • 次に頼まれる可能性がある工事は何か
  • 見積もりや現場確認につなげる次の接点はいつか

小さな依頼は売上額だけで判断せず、本命工事を任せられる会社か確認してもらう機会として扱います。

運用を続けるには、管理項目を増やしすぎないことも大切です。最初は「接触履歴」「反応」「次回連絡日」「担当者」の4点を必須にします。慣れてきたら、資格や小口依頼の情報を加えます。

社内では定期的に管理表を開き、「連絡件数」だけでなく、次の変化を確認します。

  • 次回連絡日が決まった会社数
  • 担当者と継続して話せている会社数
  • 登録や講習へ進んだ会社数
  • 小さな相談が発生した会社数
  • 見積もり依頼へ進んだ会社数

長期追客では、アポイント数だけでなく、相手との関係が一段進んだ件数を見ることが実態に合います。

まとめ

建設会社の新規営業は、電話をかけて面談を取れば終わりではありません。資格や業者登録を済ませても、発注まで何年もかかることがあります。

その間の接点が社長の電話帳や営業担当者の名刺、個人の記憶だけに残っていると、せっかくつながった会社を追い切れません。

まずは、接触履歴、相手の反応、案件可能性、必要な資格、次回連絡日、社内担当者を一つの表に集めるところから始められます。追客頻度は相手の反応に合わせて変えます。小さな依頼も、信頼が進んだ記録として残します。

建設営業の仕組み化とは、人間関係を機械的にすることではありません。時間をかけて築いた関係を、会社として途切れさせないための土台づくりです。

社長や担当者が持つ営業の勘や粘り強さは、そのまま強みになります。そこへ共有できる記録を加えることで、数年先の受注候補を、無理なく育てやすくなります。

自社に合う長期追客の形を整理したいときに

「名刺や電話帳はあるものの、誰がどこまで追っているか分からない」「管理表をつくっても、現場が忙しくなると更新が止まる」。そんな段階では、ツールを選ぶ前に、営業対象と追客の進め方を整理する必要があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の案件獲得や元請け開拓を、現場や組織の状況も踏まえて整理し、営業リストの作成、接触履歴の管理、長期追客の運用まで支援しています。

「うちの場合は何を記録すべきか」「社長と営業担当者の動きをどうまとめるか」といった整理段階でも構いません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、現在の営業方法を整理する場としてご活用ください。

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