工事の依頼は途絶えても、安全大会への案内は届く元請けとの関係
元請けとの取引が止まっていても、安全大会や懇親会への案内が届いているなら、改めて接点をつくる機会は残っています。ただ、その機会を仕事の相談につなげようとすると、「誰が、何と言って連絡するか」で手が止まることがあります。
岡山県で店舗や事務所などの内装施工を手がける、ある工事会社でも、以前付き合いのあった元請けへの連絡が課題になっていました。自社の前任担当者が退職した後、その元請けからの工事依頼は途絶えていましたが、協力会社としてのつながりは残り、安全大会への案内が届いていたのです。
経営者には、「放っておいても、多分仕事は来ないと思うんです」という思いがありました。安全大会後の懇親会に自社担当者が参加し、改めて関係をつくりたいと考えていました。
参加予定の担当者にも、一緒に仕事をしたことのある相手はいました。一方で、現在は誰が地元の案件を担当しているのか、ほかにも話すべき人がいるのかまでは分かりません。「手当たり次第に声をかけるのではなく、先に話をしてもらえればありがたい」という相談から、外部の営業支援担当者による事前連絡を検討することになりました。
営業の切り出しは任せたくても、知らない担当者からの電話にはためらい
外注したいのは営業の切り出しであって、これまでの関係まで外部に置き換えたいわけではありません。この違いを整理しないと、電話を任せる段取りは決まっても、当日相手に会う自社担当者の中に引っかかりが残ります。
担当者は、自分で連絡すること自体を避けているわけではありませんでした。
「世間話程度のことなら、全然話はできるんですけど」
「縁が切れかかっている人に対して、かける言葉が自分ではうまく出てこないんです」
雑談はできても、疎遠になった相手に仕事の話をどう持ちかけるかは別の難しさがあります。そこは営業に慣れた人に任せたいという気持ちがありました。
一方で、外部担当者が自社の社員のように名乗る案には、違和感がありました。相手は自分と一緒に仕事をしたことがあります。突然知らない人から電話があれば、「どうして本人が連絡してこないのか」「さっき電話をくれた人は誰なのか」と思われないか、気になっていたのです。
「外注の営業ですと言うんだったら、最初からそう伝えた方がいいんじゃないか」
この懸念は、単なる名乗り方の好みではありません。事前の電話で伝えたことを、自社担当者が対面でも無理なく説明できるかという、関係のつなぎ方の問題です。
会社としての取引と、担当者同士の付き合いが重なる元請けとの接点
過去の関係が人を介して続いてきた相手ほど、新しく連絡する人の立場を丁寧にそろえる必要があります。この会社の場合も、会社名だけでは説明しきれない付き合いの経緯がありました。
退職した前任担当者は、入社してから初めてその元請けを開拓したわけではなく、以前から個人として接点を持っていました。転職後もその関係が続いている、という事情です。自社に工事依頼が来なくなった背景には、こうした担当者同士のつながりがありました。
元請け側にも、長く付き合いのある担当者、過去の現場で接点を持った担当者、その下で管理を担う担当者がいました。ただし、現在の地域別・案件別の担当範囲は分かっていません。知っている人の名前が挙がることと、今の仕事について誰に相談すればよいかが分かることは、同じではなかったのです。
経営者は、まず接点をつくってほしいと考えていました。一方、当日参加する担当者は、その電話の後に自分がどう話せばよいかを気にしていました。どちらも、元請けとの関係を前に進めたいという目的は同じです。
だからこそ、営業を外注するかどうかだけでは判断しきれません。過去に誰と何をした関係なのか、今回の連絡を受けた相手にどう説明するのかまで含めて、役割を決めることが大切です。
過去の関係と当日の説明のしやすさで選ぶ、二つの連絡方法
外部担当者が連絡する方法と、外部で用意した台本を使って自社担当者が連絡する方法を、分けて検討すると整理しやすくなります。選ぶ基準は、電話の上手さだけではなく、相手との関係と、その後の会話のつながりです。
外部担当者が連絡するなら、所属と支援する立場を明確にする
電話での切り出しや、相手の反応に応じた会話を任せたい場合は、外部担当者による連絡が選択肢になります。ただし、自社名を使うことと、自社の社員であるかのように伝えることは別です。
外部担当者の所属と、工事会社から依頼を受けて営業を支援している立場を、誤認されない形で伝えることが基本です。工事会社の名前を出す場合も、業務委託で営業支援を担っていることが分かる説明にそろえます。
相談の中でも、業務委託で営業を手伝っている人として位置づける方向が確認されました。当日参加する自社担当者にとっても、誰から、何のために電話をしたのかを説明しやすい形です。
大切なのは、相手がどう受け取るかを楽観することではなく、電話した本人と対面する担当者の説明を一致させることです。実態と異なる関係をつくって説明する必要はありません。
自社担当者が連絡するなら、冒頭だけでなく返答の分岐も用意する
相手が自社担当者をよく知っていて、本人から連絡した方が自然な場合は、台本の作成を外部に任せる方法があります。今回も、担当者本人が電話することを想定した原稿の作成が、別の選択肢として挙がりました。
この方法なら、過去の関係を生かしながら、悩んでいた営業の切り出しを補えます。必要なのは、会話全体を一字一句決めることではなく、連絡の目的と話の運び方の土台です。
ただし、冒頭の文章だけでは、その後の返答に困る可能性があります。対話でも、相手がどう返すかは読み切れないため、複数の返答パターンを用意しても、台本に当てはまらない対応は残ることが確認されていました。
台本は会話を固定するものではなく、何を伝え、何を確認したいかに戻れる支えとして使います。本人からの連絡が自然で、切り出しさえ整えば話せそうなら、この方法を検討しやすくなります。逆に、反応に応じた営業上のやり取りまで任せたいなら、外部担当者による連絡が合っています。
電話の目的を「当日の挨拶につなぐ」にそろえる
どちらの方法でも、最初に共有するのは電話の目的です。この会社で目指していたのは、事前の電話だけで仕事を決めることではなく、安全大会後の懇親会で自社担当者が挨拶しやすい状態をつくることでした。
その目的に合わせて、連絡前には次の点をそろえます。
- 過去に接点のあった誰に、優先して連絡するのか
- 自社名や既知の担当者名、参加予定の行事について、どこまで伝えてよいか
- 電話をする人はどの立場で、当日は誰が挨拶するのか
- 担当者が不在の場合や、別の担当範囲だと分かった場合に、どう対応するのか
相談の中でも、相手の名前を出してよいか、行事への参加予定を話してよいかが確認されていました。また、行事は安全大会が主で、その後に懇親会があることも、途中で認識をそろえています。
こうした細部は、電話する人には分かっているつもりでも、外部には伝わっていないことがあります。相手への説明に使う情報を先に共有しておくことが、自然な連絡と想定問答の土台になります。
通話内容を残し、当日会う担当者につなぐ
外部から電話する場合は、連絡できたかどうかだけでなく、何を話したかまで引き継いで一区切りです。相談では、話した内容を文書や文字起こしで共有する案も挙がり、自社担当者からも記録を受け取りたいという希望がありました。
当日会う人が知っておきたいのは、誰につながり、どう名乗り、何を伝え、相手がどう答えたかです。挨拶の話ができたのか、担当範囲について確認できたのかも、通話内容に沿って残します。
記録の形式は、Wordや共有文書など、当日参加する人が確認できるもので構いません。重要なのは、外部担当者の電話と自社担当者の対面を、別々の活動にしないことです。
「電話は任せたが、何を話したかは分からない」を避けることで、外注した接点を自社の関係づくりにつなげられます。
まとめ
既存の元請けへの営業は、外注するかどうかよりも、相手との関係を踏まえて誰が何を担うかが重要です。
営業の切り出しや返答への対応まで任せたいなら、外部担当者の立場を明確にしたうえで連絡を依頼できます。本人からの電話が自然で、話し始め方に迷っているなら、台本と想定問答の作成を外部に任せる方法があります。
どちらを選んでも、目的を当日の挨拶につなぐことにそろえ、名乗り方、伝えてよい情報、通話内容の引き継ぎまで準備する点は共通です。
まずは、再び連絡したい元請けについて、過去に誰と付き合いがあり、次に誰が会う予定なのかを整理してみると、自社に合う任せ方が見えてきます。
元請けへの連絡を、どこまで任せるかの整理から
「営業を全部任せたい」と決まっていなくても、切り出し方や役割分担を整理する段階から相談できます。以前の元請けに声をかけたいけれど、自分で電話すべきか、外部に任せるべきか迷っている場合も同じです。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を現場の事情も踏まえて整理し、実行まで支援しています。元請けとの接点づくりについても、過去の関係を確認しながら、連絡する人の立場や伝え方、自社担当者への引き継ぎまで、一緒に整理します。
うちの場合は何から考えればよいか、という段階でも構いません。無理に営業を進めることはありませんので、まずは今の関係と、つなぎ直したい相手についてお聞かせください。