現場が売上をつくる一方で、社長に残る事務の負担
現場の仕事が回っていても、社長の事務まで無理なく回っているとは限りません。 少人数の建設会社では、出面の管理をはじめ、社長が事務周りまで担うケースがあります。
地方の小規模な建設会社からは、社長自身が身の回りの事務を処理しているため、システムを使って手を空けたいという相談が寄せられていました。なかには、夜遅くまで作業が続き、事務を誰かに任せたいという声もあります。
一方で、外に頼めば費用がかかります。社員を採用するにも、すぐに人が見つかるとは限りません。だからといって、今のまま社長が処理し続けるのも難しい。そんな迷いです。
業務の整備を担う担当者からも、率直な言葉がありました。
「現場が稼いでいて、自分はバックオフィスの、直接は稼がないところをやっています。お金を使うばかりに感じるんです」
必要な支出だとはわかっています。それでも、売上とのつながりが見えにくいと、判断は簡単ではありません。
社内で処理する時間より、外注費の追加負担が目につく構造
外注が高く感じられる背景には、今すでに使っている社長や社員の時間が、比較に入りにくいことがあります。
「従業員には当然給料を払っているけれど、なんとなく、ただでやってもらっているような感覚がある。外注になると、高い、もったいないと感じてしまう」
この言葉は、費用を見るときの迷いをよく表しています。社内で処理している間は、事務の負担が給与の中に含まれています。ところが外に切り出すと、その仕事だけの費用がはっきり見えるようになります。
そこで、現状の負担を見ないまま外注費だけを見ると、「今までかかっていなかったお金が増える」という捉え方になりやすいのです。
ただし、外注すれば必ず得になるわけでもありません。社内に任せられる人がいる場合もあります。システムを入れても、社長が同じ作業を続けるなら、負担は十分に減りません。
比べたいのは、外注費の安さだけではありません。その支出によって、誰の、どの作業が、どれだけ減るのかが判断の中心になります。
直接売上を生まない支出は、効果を実感するまでに距離がある事情
事務への支出は、売上より先に費用が見えるため、効果を捉えにくくなります。
営業を担っていた担当者は、以前との違いをこう話していました。
「前は、経費を使っても、その分を稼げばいいと思えました。今は直接売上を生むわけではないので、使うばかりに感じてしまいます」
事務を整えることは、現場が稼ぐための支えになります。ただ、その効果が売上として現れるまでには、いくつかの段階があります。支出と売上を直接比べるだけでは、手応えをつかみにくいところです。
さらに、効率化のためのシステムにも、使える状態にするまでの負担があります。
「初めの設定がもう負担です。使い方を調べて、社員に説明して、使い始めたら質問に答える。それが大変で」
アプリの利用料だけを見ていると、この時間は抜け落ちます。社長が設定や説明まで抱えるなら、導入直後はかえって仕事が増えることも考えられます。
また、事務員がいる会社と、社長一人で事務まで担う会社では、選べる手段も違います。事務員がいれば、まず社内で分担を見直せるかもしれません。担当者がいなければ、事務代行や採用を比べる必要があります。
同じ事務の悩みでも、社内の受け皿と、任せられる仕事の範囲によって、適した手段は変わります。
作業時間と空いた時間の使い道から選ぶ、事務を手放す方法
最初に整理したいのは、何を導入するかではなく、「何の時間を減らし、その時間を何に使いたいか」です。 その順番なら、外注しない判断も含めて比べやすくなります。
今の事務に使っている時間を把握する
まず、社長や社員が担っている事務と、その作業時間を確認します。出面の管理であれば、日々どの程度の時間を使っているか。それを月単位にすると、どの程度になるかを整理します。
システムを使っている場合は、処理そのものに加え、設定、使い方の確認、社員への説明や質問対応も確認したいところです。実際に負担になっている時間を捉えるためです。
そのうえで、任せたり仕組みを変えたりすれば減らせる時間と、社内に残る時間を分けます。今の作業時間が、そのまますべてなくなるとは限りません。
減らせる時間を人件費相当で捉える
削減できる時間に、社長や社員の時間単価を掛けると、今の負担を金額の目安で捉えられます。
考え方は、「月に減らせる作業時間 × 給与などから算出した時間単価」です。これを外注費やシステム費と並べてみます。
ただし、これは実際に現金支出が減る額ではありません。社長の事務が減っても、役員報酬がその分だけ下がるわけではないからです。あくまで、社内の時間をどれだけ使っているかを見るための目安です。
そこで必要になるのが、空いた時間の使い道です。対話でも、「これをやりたいけれど、時間が足りないという順番で考えたい」という指摘がありました。
時間が空いても、同じ事務を続けるのであれば効果は限られます。手放した後に取り組みたい仕事まで決めておくと、支出の意味を確かめやすくなります。
社内の受け皿と切り出せる範囲で比べる
手段は、次の四つを並べると整理しやすくなります。
- 既存社員への分担:事務を担える社員がいるなら、社内で引き受けられる範囲を先に確認します。
- 採用:事務以外にも継続して任せたい仕事があるなら、社員として迎える選択肢を比べます。ただし、採用できる見通しも含めた判断が必要です。
- 事務代行:社長が抱える仕事のうち、外部に切り出せる範囲が明確なら候補になります。お金周りなど、社外に出しにくい業務は分けて考えます。
- システム化:出面の管理など、減らしたい作業がはっきりしている場合に検討します。設定や社員への説明を誰が担うかまで含めて比べます。
事務代行なら、社長が作業を抱える状態を変えられるか。採用なら、事務以外の仕事も含めて任せられるか。システムなら、使えるようにする負担を含めても時間が減るか。こうした違いを見ることが大切です。
社内分担だけで十分に回せるなら、外注しない選択もあります。削減できる時間が少なければ、システム導入を見送る判断も自然です。
「外注するべきか」ではなく、「自社の体制で、社長の手を空けるには何が合うか」と考えると、選択肢を絞りやすくなります。
まとめ
事務を手放す判断は、外注費だけでなく、今使っている時間と、手放した後の変化を並べて考えることが出発点です。
社長や社員が処理しているからといって、負担がないわけではありません。一方、外注やシステムにお金を使えば、自動的に効果が出るわけでもありません。
まずは、抱えている事務と作業時間を確認します。次に、減らせる時間を人件費相当で捉えます。そして、空いた時間で何をするかを決めます。そのうえで、社内分担、採用、事務代行、システム化を比べる流れです。
「もったいない」という感覚を無理に消す必要はありません。比較する材料がそろえば、任せる判断も、今は任せない判断も、納得して選びやすくなります。
社長が抱える事務を、どこまで手放せるかの整理から
「うちの場合、何を任せれば時間が空くのか」という段階から、一緒に整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。事務の負担についても、外注やシステムの導入を前提にせず、今の社内体制と切り出せる業務から考えます。
何から整理すべきかわからない段階でも構いません。無理な営業は行いませんので、社長が抱えている仕事を見直すきっかけとしてご相談ください。