全国施工の実績を持ちながら、関東の販路拡大を進める専門工事会社
施工実績や対応力があっても、新しい取引先から見積もりの相談を受ける機会は、別に増やしていく必要があります。
ある専門工事会社は、関西と関東に拠点を持ち、全国で施工に対応しています。年商は25億円規模で、石綿除去を中心に解体関連の工事を手がけており、関東での取引をさらに広げようとしていました。
営業で伝えられる材料もあります。経営の中心には長年の現場経験を持つメンバーがおり、予算に応じた提案、比較的早い見積もり対応、役所への対応まで担えることが強みです。一方、自社スタッフには限りがあり、管理体制について実態以上の約束はしない姿勢を取っています。
新規の取引先候補には、紹介を通じて接点をつくってきました。ただ、継続して追っている先は数社で、現場の話が出る可能性はあっても、見積もりや受注への進展はまだ見えていませんでした。
ここで考えたいのは、紹介営業をやめるかどうかではありません。既存の接点を大切にしながら、それだけでは足りない営業機会をどう補うかです。
数社の紹介先を追い続けても、見積もり相談の時期が読めない状態
課題は、紹介先への連絡不足というより、案件化の時期が読めない少数の見込み先に、受注機会が偏っていることです。
紹介先の一社には訪問し、案件が出てきたら現場に同行してほしいという話まで進んでいました。しかし、その依頼がいつ来るかは確定していません。別の会社には電話を入れているものの、相手の出張や多忙を理由に、次の面談が先送りになっていました。
定期的に会える相手もいましたが、そこでも具体的な工事の相談にはつながっていません。関係が続いていることと、発注の可能性が高まっていることは、分けて捉える必要がある状態です。
担当者は、日常業務の合間に連絡を続けています。訪問の時間を簡単に増やせるわけでもなく、同じ相手への電話を重ねるだけでは、営業機会そのものを十分に増やせません。
見積もりの相談さえ来れば受注につなげられるという手応えがあるからこそ、その前段階で止まっていることが悩みになります。必要なのは、今ある数社への働きかけに加えて、新しく相談を受けられる接点をつくることでした。
紹介による面識と、発注先として選ぶ意向との間にある距離
紹介は会うきっかけになりますが、相手に工事の需要や新しい発注先を探す意向があるとは限りません。
この会社では、紹介を受けた相手が、本当に仕事を頼もうとしているのか、それとも紹介者との関係で一度会ったのかをつかみきれていませんでした。案件があれば声をかけるという言葉も、具体的な発注意向なのか、その場での返答なのかによって、その後の見通しが変わります。
紹介者を通じた追加の働きかけも検討していましたが、強く押しすぎると相手に負担をかけるのではないかという感触がありました。連絡の回数だけを増やしても、相手側に案件がなければ、見積もりの相談は生まれにくいままです。
一方、新規の候補先には、すでに付き合いのある施工会社がいることも想定していました。そのため、最初から既存業者に代わる取引を求めるのではなく、相見積もりや一部の対応から入る考え方を持っていました。
つまり、営業で確かめたいのは、自社への関心だけではありません。相手が今どの領域で協力会社を必要としているのか、どのような入口なら相談しやすいのかです。
既存接点では発注意向と時期を確かめ、新規開拓では自社を必要とする相手との接点を増やす。この役割の違いが、二軸で進める理由になります。
選別した企業への架電から同行訪問までを小さく試し、受注への進展で判断
電話営業は、いきなり大きく展開するのではなく、対象企業と伝え方を絞って試し、面談後の進展まで確認する形が適しています。
この会社では、既存の紹介先への働きかけを続けながら、選別済みの候補企業へ外部の営業担当が電話をかけ、アポイントが取れたら一緒に訪問する進め方を検討しました。実施後の成果が確認された段階ではなく、まず反応を見て、本格的に力をかけるかを判断する方針です。
既存接点の深耕と、新規開拓の検証を分ける
既存の紹介先については、案件の可能性がある相手との関係を継続し、発注の意向や相談が出る時期を確かめます。新規開拓を始めることと、これまでの接点を手放すことは別です。
ただし、既存先から受注が出るまで新規開拓を待つと、案件が動かない間は接点も増えません。そのため、まず限定的な架電を並行して行い、反応を確認したうえで活動の比重を見直す考え方が取られました。
二軸で進めるとは、両方を同じ規模で動かすことではなく、既存先を追う間にも新しい営業方法を検証できる状態をつくることです。
候補リストは、自社が対応したい相手を選んでから使う
この会社では、250社ほどの候補リストに、営業対象としてよいかどうかの印を付けていました。最初は対象として選んだ企業に絞り、反応を見ながらリストを広げる方針です。
ここで大切なのは、電話をかけられる企業数だけではなく、自社の施工領域と相手の事業が合っているかです。対象がずれているまま架電数を増やしても、伝え方の問題なのか、相手の選び方の問題なのかが分かりにくくなります。
また、電話で強調する領域は相手によって変わります。たとえば解体会社に対しては、解体工事全般を前面に出すより、石綿除去や内装解体など、相手の仕事を補える領域に絞る意向がありました。自社ができることをすべて並べるのではなく、相手が頼みやすい役割を示すことが出発点です。
外部担当に渡す説明は、強みと対応範囲をセットにする
外部担当による架電では、自社の説明を任せきりにせず、普段の営業で伝えている内容を共有し、スクリプトに落とし込みます。この会社で材料になったのは、次のような点です。
- 長年の現場経験に基づく提案と対応
- 見積もりや役所への対応
- 複数拠点を持ち、全国施工に対応できること
- 相見積もりからでも相談を受けられること
電話で話せる内容には限りがあるため、すべてを一度に説明する必要はありません。相手が必要とする領域を伝え、詳しい話をする機会につなげる役割に絞ります。
同時に、約束できない内容も共有します。この会社の場合、施工実績は説明できても、すべての現場に管理担当者を常駐させるような約束は難しいという事情がありました。外部担当が伝える強みは、訪問後も実際に提供できる内容と一致させることが重要です。
アポイント後は同行し、見積もり相談につながる入口を探る
電話で接点ができた後は、外部担当と自社の担当者が同行して訪問する形を想定していました。電話は面談の入口をつくり、訪問では相手の状況を聞きながら、具体的に何を任せてもらえるかを探ります。
既存の取引先がいる相手には、最初から切り替えを求めるのではなく、相見積もりや対応が必要な部分から相談してもらう進め方が考えられます。この会社が重視していたのも、相手の足りない領域を補う立場で入ることでした。
面談ができたことだけで終わらせず、現場への同行や見積もりの相談など、次の具体的な動きにつながるかを確かめます。
反応を見て、スクリプト・対象企業・活動量を見直す
本格展開を判断する際は、アポイント数だけでなく、その先まで分けて確認します。
- 電話から、実際の面談につながったか
- 面談後に、現場同行や見積もりの相談が出たか
- 見積もりから、受注へ進んだか
面談はできても相談が出ない場合は、対象企業と伝えている施工領域が合っているかを見直します。電話段階で反応が乏しい場合は、説明する強みや相談の入口を調整します。そのうえで、現在の候補リストを広げる必要があるかを判断します。
短い検証期間では、受注まで至らないこともあります。その場合も、見積もり相談まで進んでいるのか、面談後の動きがないのかでは、次の判断が変わります。本格展開の判断材料は、会えた件数だけでなく、工事の相談がどこまで具体化したかです。
まとめ
紹介先との関係を深める活動と、新しく相談先を増やす活動は、役割を分けて進められます。
紹介先に連絡していても受注が増えないときは、追いかけ方だけでなく、見込み先の数と案件化の時期に目を向けると整理しやすくなります。少数の相手からの依頼を待つ状態なら、既存接点を維持しながら、電話営業を小さく試す余地があります。
対象企業を選び、自社が補える施工領域を伝え、外部担当の架電から同行訪問につなげる。その反応をもとに説明と対象を見直し、見積もりや受注への進展を確かめることが、次の営業方針を決める材料になります。
自社に合う新規開拓の進め方を整理するために
電話営業を始める前の、候補先の選び方や、自社の何を伝えるべきかを整理する段階から相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路拡大でも、既存接点の状況と実際の施工対応力を踏まえ、候補企業の選別や営業での伝え方、外部の力を借りる範囲を一緒に考えます。
うちの場合は紹介先の深耕を優先すべきか、新規開拓を試すべきか。その判断がついていない段階でも構いません。無理に営業施策の導入を勧めることはありませんので、次の整理先としてご相談ください。