前提

共用部管理の取引基盤を持ちながら、賃貸住宅の原状回復を広げたい会社の相談

管理会社との取引がすでにあっても、原状回復を発注する部署につながっているとは限りません。 相談を寄せたのは、従業員約120名で、賃貸住宅の原状回復と共用部の管理業務を手がける会社です。神奈川県内の都市部を原状回復の対応エリアとし、管理会社の新規開拓を進めていました。

会社の主力は、マンションの廊下や階段、ゴミ置き場などの共用部に関わる事業です。一方、原状回復の部門では、少人数で管理会社への営業を担っていました。案件が増えれば依頼できる協力会社もあり、まず広げたいのは施工体制ではなく、原状回復を任せてもらえる取引先でした。

希望する仕事も明確です。一般賃貸住宅のアパート・マンションが中心で、ワンルームから1LDKなどの住戸を得意としていました。テナントやホテルの内装、大がかりなリノベーションを増やしたいわけではありません。

「大きい工事というより、小さい工事をたくさんやれたら、というのが私たちの希望です」

この希望を踏まえると、開拓先を「大手不動産グループ」とだけ捉えるのでは広すぎます。必要なのは、対応エリア内の賃貸住宅について、退去後の原状回復を外部へ発注する窓口との接点です。

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課題

管理会社の名前が分かっても、専有部の原状回復を発注する窓口が見えない問題

営業先は企業名だけでなく、「どの会社の、どの部署が、何を発注するのか」まで絞る必要があります。 この会社が開拓で直面していたのも、管理会社によって担当部署が異なる難しさでした。

担当者は、専有部と共用部の違いをこう説明していました。

「規模によっては、専有部はPMの方が担当していて、共用部はBM課や建物管理課が担当しています。管理会社によって営業する先が分かれてしまうんです」

PMやBMといった呼び方も含め、部署名は会社によって異なります。そのため、名称を覚えるだけではなく、その部署が実際にどの業務を扱っているかを確かめることが大切です。

共用部の清掃で取引がある管理会社でも、その窓口が住戸内の原状回復まで担当しているとは限りません。実際に、この会社では原状回復の取引から日常清掃の担当部門へ話をつなぐことはあるものの、その逆はあまりないといいます。

同じ管理会社との接点でも、受けたい仕事によって、次に確認すべき相手が変わります。「すでに取引があるから」「知っている担当者がいるから」というだけでは、原状回復の発注窓口まで届いているかは判断できないのです。

背景

開発・建築と賃貸管理で会社が分かれ、紹介できる業務にも違いがある構造

企業グループ内の人脈と、希望する工事の発注部署への人脈は、分けて考える必要があります。 大手ほど、グループ名は同じでも、開発、建築、仲介、賃貸管理などを別の会社が担っている場合があるためです。

相談の中でも、大手住宅メーカーへの接点が候補に挙がりました。ただ、担当者が確認したかったのは、本体の知人の有無ではありませんでした。

「土地を仕入れて建物を建てるところと、それを賃貸住宅として管理しているところでは、部署が違うはずです。管理する側まで、どのくらい接点があるのかが気になります」

別の候補についても、「本体だと遠いですね。原状回復を担当するのは別の会社なので」と話していました。会社の知名度やグループ全体の大きさより、賃貸管理を担う会社までたどれるかを重視していたことが分かります。

さらに、同じグループへの紹介実績があっても、扱ってきた工事が異なれば、そのまま今回の開拓に使えるとは限りません。大規模修繕の会社をつないできた人脈と、一般賃貸住宅の退去後工事を発注する部署への人脈では、確認すべき接点が違います。

この会社が求めていたのは、大型案件への足がかりではなく、得意な規模の原状回復を継続して受けられる関係でした。「大手につながれるか」ではなく、「自社が受けたい仕事につながれるか」が、人脈を見極める判断軸になります。

解決

受けたい原状回復工事から逆算する、会社・部署・外注・担当者の確認

最初に自社が受けたい工事の条件をそろえ、その条件を扱う会社と部署を順に確かめる進め方が有効です。 紹介先を探してから仕事を合わせるのではなく、仕事に合う紹介先かどうかを確認していきます。

1.紹介を頼む前に、受けたい仕事と対応範囲を伝える

まずは、原状回復の中でも何を任せてほしいのかを具体的にします。この会社の場合は、一般賃貸住宅、ワンルームから1LDKが中心、対応は限られたエリア内、大型工事より小規模工事の継続受注、という条件がありました。

紹介する側に伝える内容も、この具体性に合わせます。

  • 受けたい業務は、賃貸住宅の退去後の原状回復であること
  • 主に対応してきた物件や住戸の規模
  • 実際に施工できるエリア
  • これまでの施工実績と、得意・不得意な工事の範囲
  • 大型工事への展開ではなく、小規模工事を継続して受けたいこと

「原状回復ができます」だけでは、住宅なのかテナントなのか、通常の退去後工事なのか大がかりな改修なのかが伝わりません。自社の対応範囲を先に明確にすると、紹介できる会社や部署が本当に合うかを確かめやすくなります。

2.グループ名ではなく、対象物件を管理する会社を確かめる

次に確認するのは、自社の対応エリアにある賃貸住宅を、実際にどの会社が管理しているかです。

この会社も、管理会社の本社所在地そのものにはこだわっていませんでした。重視していたのは、自社が施工できる地域に管理物件があるかどうかです。全国規模の管理会社であっても、対象地域の物件を扱う会社や窓口が分からなければ、開拓先としての適合性は判断しきれません。

外部の人脈を使う場合も、「そのグループに知人がいる」という説明から一歩進めて、「対象地域の賃貸住宅を管理している会社に接点があるか」を確認します。開発や建築の会社への接点であれば、賃貸管理の会社までつなげられるかは、別途確かめる事項です。

3.専有部の担当部署と、原状回復を外注している範囲を確認する

管理会社が分かったら、専有部の退去後工事を扱う部署と、その工事をどこまで外部に出しているかを確認します。

部署名がPM課であっても、別の名称であっても、聞きたい内容は同じです。「一般賃貸住宅の退去後の原状回復を担当しているか」「その業務を外部の施工会社に発注しているか」を確かめます。

相談時点でも、候補となった管理会社がどこまで外注しているかは、まだ確認が必要な状態でした。ここは、グループへの人脈があることから推測で埋めず、担当部署への確認事項として残す必要があります。

管理戸数や企業規模は候補を探す目安になりますが、原状回復の外注先になれるかどうかは、担当部署の業務と外注範囲を確かめて初めて見えてきます。

4.顧問の経歴より、発注に関わる担当者までの接点を確認する

顧問などに紹介を依頼する際は、出身企業や役職だけでなく、希望する業務について誰に確認できるかを見ます。

事前のすり合わせでは、次の点を確認すると、話が具体的になります。

  • 接点があるのは、どの会社のどの部署か
  • その部署は、希望する賃貸住宅の原状回復を扱っているか
  • 原状回復の発注に関わる担当者へ確認できるか
  • 自社の施工実績、物件規模、対応エリアと合うか
  • その場で分からないことは、誰に確認して回答できるか

すべてを初回で答えられる必要はありません。大切なのは、分かっていることと、担当部署へ確認しなければ分からないことを分けることです。

この会社でも、会社資料や対応内容を先に共有し、それをもとに顧問側で確認したうえで、次の面談へ進む段取りになりました。まだ発注部署への接点や外注範囲が確定したわけではなく、受注に至った段階でもありません。

紹介の話を進める判断は、「有名企業に会える」ことではなく、「自社に合う工事の発注窓口へ届く見込みが確認できた」ことを基準にします。 合わない点があれば、面談の前に整理できるため、双方の時間も使いやすくなります。

まとめ

原状回復の新規開拓では、企業名から入るより、受けたい工事から発注窓口をたどることが大切です。 同じ企業グループでも開発・建築と賃貸管理で会社が異なり、同じ管理会社でも専有部と共用部で担当部署が分かれることがあります。

まず、自社が対応したい物件、工事、エリアを明確にします。そのうえで、対象物件を管理する会社、原状回復を扱う部署、外注の有無、発注に関わる担当者を順に確認します。

顧問や紹介者の人脈も、この順番に沿って見極めれば、肩書きやグループ名だけでは分からなかった適合性が見えてきます。大手への接点を増やすことより、得意な原状回復を任せてもらえる接点を具体的にすることが、次の一手になります。

原状回復を任せてもらえる開拓先の整理から

「大手との接点はあるけれど、どこまで話が届くのか分からない」という段階から、開拓先を整理できます。 候補企業が決まっていても、まずは自社の対応範囲と、相手の会社・部署・業務が合っているかを確かめるところからで構いません。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。原状回復の販路開拓では、受けたい仕事と施工実績を整理し、必要に応じて顧問などの外部人脈も活用しながら、適切な発注窓口へのアプローチを一緒に考えます。

「うちの対応範囲なら、どの管理会社のどの部署を考えるべきか」といった段階でもご相談いただけます。状況の整理を大切にし、無理にサービスをお勧めすることはありません。

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