複数の商社から施工を請け負う数名規模の電気工事会社
取引先が複数あることと、毎月の工事量を見通せることは、別の話です。 関東圏で防犯設備や照明設備などの電気工事を手がける、数名規模の会社でも、その悩みがありました。
主な受注先は複数の商社や販売会社で、個人宅からの依頼もありますが、仕事の中心は法人向けです。機器は販売できても施工までは担えない会社から、工事を請け負っています。住宅だけでなく、ビルや各種施設など、一通りの建物に対応してきました。
経営者が挙げた悩みは、取引先が一社に集中していることではありません。
「一社ではないですけど、何社か付き合っていても、やっぱり波があるんで」
すでに複数の発注元を持ち、自ら新規開拓もしてきた会社です。それでも受注の波が残るため、仕事の選択肢をもう少し広げたいと考えていました。出発点は、営業をゼロから始めることではなく、これまで築いた接点を活かしながら、次の相談につながる相手を増やすことにあります。
取引社数を増やすだけでは埋まらない工事量の波
新規開拓で増やしたいのは、取引先の名前だけではなく、継続的に工事の相談が入る関係です。 一度工事を受けた会社が増えても、その後の見積もり相談につながらなければ、先々の稼働は見通しにくいままです。
この会社の経営者も、「発注元は広げていきたい」と話していました。ただし、どこからでも、どんな工事でも増えればよいという話ではありません。少人数で施工を担う以上、実際に対応できる工事や移動範囲と合っていることが前提になります。
工事は基本的に一日一件を想定していましたが、小規模な案件なら、近隣で午前と午後に分けて組む余地もあるとのことでした。
「小規模の案件も、午前午後で近所で組んだりとか。そこはやり方があると思うんですよね」
この言葉からも、工事件数だけでは稼働を判断できないことがわかります。同じ二件でも、近隣の小規模工事と、離れた場所での工事では組み方が変わります。
営業でも同様に、接触した社数やアポイント数だけでは、工事量の安定につながるかを判断できません。自社が対応しやすい案件を持つ相手と出会い、見積もりの依頼を受け、その後も声がかかるところまでを見ていく必要があります。
検索と展示会で自ら開拓してきた既存の取引先
すでに成果につながった開拓方法は、検索での電話営業と、展示会での直接の声かけでした。 この会社の取引先は、前職からのつながりだけでできたものではありません。
経営者は、防犯カメラの施工請負に関する言葉で検索し、表示された会社に自ら電話をしていました。
「防犯カメラの施工請負みたいな感じで検索して、上から電話していって。工事をしているので、使ってくださいという感じで」
また、セキュリティ関連の展示会にも足を運び、協力業者を募集している企業に声をかけていました。少なくとも当時は、施工会社を探していることがわかる掲示があり、そこを接点づくりのきっかけにしていたそうです。
ここには、今後も活かせる共通点があります。施工を必要としている販売会社を見つけ、自社がその施工を担えると伝えることです。 相手の事業と自社の役割がつながっているため、単に会社案内をするより、相談の入口をつくりやすい方法といえます。
一方で、最初の接点ができたことと、継続的に依頼を受けることは別です。この会社について、連絡が途切れていた、フォローができていなかったとまでは確認できません。ただ、受注の波を小さくするためには、最初の声かけの先にある、見積もり、小規模工事、継続的な関係づくりまで整理する余地があります。
継続性を考える手がかりも、既存の仕事にありました。OA機器を販売する取引先が防犯カメラも扱うことで、施設の施工依頼が別の施設へ広がった経験です。
「カメラもできますと言うと、じゃあここの施設も、ここの施設も、というふうになるんで」
一件の工事だけでなく、その販売会社がどのような顧客を持ち、次にどのような依頼へ広がり得るかまで見ることが、開拓先を選ぶ判断材料になります。
対応エリアと得意工事で候補を絞り、小規模工事から継続相談へ進める営業
検索や展示会で出会う相手を絞り、接点づくりから継続受注までを一続きで考えることが、次の進め方です。 これまでの開拓方法を全面的に変えるよりも、相手の選び方と、接点を持った後の進め方を整えるほうが、経験を活かせます。
まずは「施工を必要とする相手」を三つの軸で絞る
候補を選ぶ際は、会社の知名度や規模よりも、自社との仕事の合い方を優先します。検索で見つけた販売会社や、展示会で協力業者を探している企業を、次の三つの軸で確認していくと整理しやすくなります。
- 対応エリアが合うか:相手が工事を依頼したい地域と、自社が無理なく動ける地域が重なるか。
- 得意工事が合うか:防犯設備や照明設備など、自社が経験を持つ施工への需要があるか。
- 継続発注の可能性があるか:一件限りではなく、別の顧客や施設などへ施工依頼が広がる余地があるか。
この会社は関東一円に対応し、遠方への出張経験もありました。ただ、対応できる範囲が広いことと、優先して営業する範囲を広く取ることは同じではありません。近隣の小規模工事を組み合わせられるという強みを活かすなら、まずは施工の組みやすい地域に案件を持つ相手から検討できます。
また、幅広い建物に対応できる場合でも、最初からすべてを伝える必要はありません。相手が販売している機器と、自社が担える施工を結びつけて説明することで、何を相談できる会社なのかが伝わりやすくなります。
最初の接点では、すぐの発注だけを求めない
検索からの電話も、展示会での声かけも、目的はその場で工事を決めてもらうことだけではありません。施工先を探す必要が生じたときに、相談先として思い出してもらえる関係をつくることが入口です。
そのためには、自社の対応エリアや施工経験を伝えるだけでなく、相手がどの地域で、どのような施工を必要としているかを確かめます。すぐに案件がなくても、工事内容やエリアが合っていれば、その後も接点を持つ候補になります。
反対に、必要とされる工事が自社の対応範囲と合わない場合は、接触数を増やすために追い続ける必要はありません。声をかけた件数より、次の相談が具体的に想像できるかを優先します。
見積もりや小規模工事を、双方が確かめる機会にする
最初の依頼は、見積もりや小規模な工事からでも十分に意味があります。相手には実績や対応力を見てもらい、自社も、その相手と継続して仕事を進められそうかを確かめられるためです。
小規模工事は、大きな受注の前段階であると同時に、お互いの仕事の合い方を確認する機会です。 対応できる工事や地域、品質への考え方、採算が合うかを踏まえ、無理なく続けられる相手との関係を深めていきます。
初回から大きな工事量を求めるのではなく、一度任せてもらい、次に任せられる範囲を広げていく。その順番で考えると、少人数の施工体制とも合わせやすくなります。
定期的なフォローまで含めて、誰が担うかを決める
接点を一度きりにしないためには、見積もり後や施工後も、次の相談につながる連絡を続ける役割が必要です。現場対応と並行するなら、新しく電話をかけることだけでなく、すでに出会った相手との関係を誰が継続して持つかまで決めておきます。
経営者がすべてを担うのか、社内で分けるのか、外部の支援を使うのかは、自社で続けられる範囲から考えればよいでしょう。外部に依頼する場合も、アポイントの獲得だけなのか、その後の見積もり相談やフォローまで含むのかを確認することが大切です。
成果を確かめる際は、接触社数やアポイント数に加えて、見積もり相談が入ったか、初回の施工につながったか、同じ相手から再び依頼があったかを見ます。接点は増えているのに見積もりにつながらなければ候補の選び方や伝え方を、初回工事で止まるなら継続性の見立てやその後の関係づくりを見直す、という順序です。
まとめ
複数の取引先があっても工事量に波があるときは、社数を増やすことと、継続的に相談が入る関係を育てることを分けて考えるのが出発点です。
検索で施工を必要とする販売会社を探して電話することや、展示会で協力業者を探す企業と接点を持つことは、実際に取引につながっていた方法でした。その経験を活かしながら、対応エリア、得意工事、継続発注の可能性で候補を絞り、見積もりや小規模工事を通じて関係を深めていきます。
営業の成果は、会えた社数だけではなく、次の見積もり相談や継続受注につながったかで捉えます。新しい相手を探す動きと、一度出会った相手との接点を保つ動きを両方続けることが、先々の工事量を見通すための土台になります。
自社に合う発注元と、続けられる開拓の進め方の整理
「どこに営業するか」と「接点を持った後にどう続けるか」を、一緒に整理するところから始められます。 取引先はあるものの工事量が安定しない、検索や電話で開拓してきたが次の進め方に迷っている、という段階でも構いません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。取引先開拓でも、現在の施工体制や対応エリアを踏まえ、狙う相手の選定から接点づくり、その後のフォローまで、続けられる進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は何から整理すればよいか」というご相談からお受けしています。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、現在の状況をお聞かせください。