紹介を中心に取引が続き、主要顧客とそれ以外の受注規模に差がある専門工事会社
紹介で取引先が増えていても、今の主要顧客に続く大口取引先を計画的に育てることは、別の取り組みになります。 既存のお客様から声がかかることと、自社が望む規模・条件の取引先を選んで関係をつくることでは、必要な動きが異なるためです。
ある設備関連の専門工事会社では、新しい取引のきっかけは、既存顧客からの紹介が中心でした。年間に何度か取引のある顧客は十数社あり、最大の取引先からの年間受注は1,800万円ほど。一方、二番手、三番手はそれぞれ300万円台で、主要顧客との間には大きな開きがありました。数値や施工領域は、個社が特定されないよう一部調整しています。
新規開拓について尋ねると、経営者の答えは「既存のお客様から紹介いただいたものに対応しています」というものでした。紹介が機能している一方で、主要顧客と同じ規模に育つ可能性のある相手へ、自社から継続的に働きかける動きは、まだ中心になっていませんでした。
また、粗利率は案件によって異なるものの、おおむね2割前後か、それを少し下回る水準でした。そのため、新規開拓を考える際には、売上が増えるかだけでなく、利益がどれだけ残るかが大切な判断材料になっていました。
主要顧客に続く取引先を、接点づくりから継続受注まで育てる道筋の不足
大口取引先の開拓で整理したいのは、「何社に会うか」よりも、「どの相手を、どう継続受注につなげるか」です。 接点が増えても、その先の見積もりや受注、次の発注までつながらなければ、主要顧客に続く存在には育ちません。
この会社の経営者は、営業への投資について「その利益が出せるとは、ちょっと想像がつかない」と話していました。最大の取引先と二番手以下の規模に差がある状況では、主要顧客をもう一社増やすと言われても、簡単には見通しを持てません。
しかも、現在の主要顧客は、最初の接点からすぐに今の受注規模になったわけではありません。実績と信用が積み重なった結果として、継続的な発注につながっています。新しい相手と面談できたことを、そのまま大口受注の見込みとして捉えるのは難しいところです。
もう一つの論点は、施工できる量でした。経営者は「同じ頭数で動くなら、既存の仕事から新しい仕事に入れ替えることになる」と説明していました。受けられる工事量がすぐに増えないのであれば、新規受注の全額が売上や利益の上積みになるわけではありません。
つまり、開拓先には発注規模だけでなく、現在の仕事と比べた粗利や商流、発注の継続性も求められます。大きな会社に会うことではなく、限られた施工体制の中で、長く取引する意味のある相手を見つけることが課題です。
紹介の信用を活かす営業と、自社で開拓先を選ぶ営業の違い
紹介を活かしながら大口取引先を増やすには、相手選びと継続的な働きかけを、自社の営業活動として持つ必要があります。 紹介が悪いのではなく、紹介だけでは、自社が望む取引条件や開拓の時期を選びきれないからです。
紹介では、既存顧客との関係が新しい接点のきっかけになります。一方、自社からの開拓では、「どの商流に入るか」「どの企業へ何を提案するか」を整理し、その相手に実績を積んで信用してもらう時間を見込む必要があります。
ここで重要なのは、企業の規模と、自社にとっての取引価値を分けて考えることです。発注元の会社が大きくても、自社が対応する工事の量が少なかったり、案件が単発だったりすれば、継続受注の柱になるとは限りません。反対に、自社に合う施工領域で定期的な発注があり、適正な粗利が残る相手であれば、時間をかけて関係を育てる意味があります。
対応エリアの見方にも余地があります。地域内に拠点がある会社だけでなく、別の地域に本社や発注拠点を持ちながら、自社の対応エリアで工事を発注する企業も候補になります。ただし、候補を広げる際には、実際の施工場所や移動距離まで確認したいところです。
そして、関係を育てるには、一度連絡して終わらない管理が必要です。誰と何を話したか、次はいつ連絡するか、見積もりや受注までどこが進んでいるか。この情報が残ることで、最初につくった接点を、次の機会につなげやすくなります。
開拓先の条件を決め、営業リストと次回連絡の管理で継続受注につなぐ仕組み
大口取引先の開拓は、相手の条件を決め、接触から受注までを追い、会話履歴を次の連絡に活かす順序で進めます。 アポイントの数だけを増やすのではなく、信用を積み重ねる相手と、そのための活動を見えるようにする進め方です。
主要顧客の取引内容を、開拓先を選ぶ基準にする
最初に整理したいのは、現在の主要顧客が、なぜ自社にとって大切な取引先なのかです。年間受注額だけでなく、粗利、発注の継続性、商流、対応エリアを並べてみると、新しい相手にも求めたい条件が具体的になります。
開拓先を見る際には、次の五つを一緒に確認します。
- 受注規模: 自社の施工領域で、どの程度の発注が見込めるか
- 粗利: 売上の大きさに加え、適正な利益が残る取引か
- 発注の継続性: 単発の工事だけでなく、定期的な案件が見込めるか
- 商流: どの発注経路に入り、どの立場で工事を受けるのか
- 対応エリア: 施工場所や移動距離が、自社の対応範囲に合うか
この会社のように、施工量がすぐには増えない場合は、特に粗利と商流の比較が重要です。既存の仕事を置き換える開拓では、新しい仕事の粗利だけでなく、減る既存受注の粗利も含めて判断します。 商流が浅くなることは検討材料ですが、それだけで利益が増えると決めず、実際の条件を確かめます。
条件に合う企業を、一社ずつ確認できる営業リストにする
営業リストは、会社名と連絡先だけでなく、相手を選んだ理由が分かる形にします。施工領域、エリア、規模、取引構造、移動距離などを確認できれば、どの企業に時間をかけるかを判断しやすくなります。
大切なのは、候補の数を増やすことより、主要顧客に続く可能性を説明できることです。「会社が大きいから」ではなく、「自社の対応エリアで継続的に工事を発注し、施工領域も合うから」という選定理由を持つことで、接触後の確認事項も明確になります。
候補企業の本社所在地だけで対象を絞らず、実際にどこで工事を発注しているかを見ることも、この段階で行います。
接触、面談、見積もり、受注を分けて把握する
活動の進捗は、アポイント獲得だけで区切らず、その先まで確認します。電話などで接触した件数、相手につながった件数、面談につながった件数、見積もりの機会、受注という段階を分けると、営業活動がどこまで進んでいるかが見えます。
面談は増えているのに見積もりにつながらない場合と、見積もりは出せているのに受注につながらない場合では、振り返るべき内容が異なります。前者では対象企業と提案内容の適合を、後者では見積もり条件や、その後のやり取りを確認する手がかりになります。
活動件数と受注までの進捗をセットで見ることで、「動いたが取れなかった」で終わらず、次に見直す箇所を絞れます。 他社の実績値をそのまま目標にするより、自社が選んだ対象に対する結果を蓄積していくことが大切です。
会話履歴と次回連絡時期を、取引先ごとに残す
継続的な開拓では、接点をつくった後の情報を残します。案件管理表には、現在の進捗とともに、会話した内容、次回連絡の時期、次に確認する内容を記録します。
「連絡済み」という記録だけでは、次に何を話すかが分かりません。会話の内容まで残っていれば、前回のやり取りを踏まえて連絡でき、接点が途切れにくくなります。見積もりや受注に至った相手についても、次の発注につながる関係を追えるようにしておきます。
営業リストと活動結果、会話履歴がそろえば、担当者が変わっても経緯を引き継ぎやすくなります。開拓で残したいのは受注結果だけでなく、どの相手に、何を伝え、どう次につながったかという営業の蓄積です。
なお、この会社は本格的に開拓を進める時期について、「教育がある程度進んだところ」と考えていました。受注を増やす活動量は、施工できる体制に合わせる必要があります。一方で、開拓先の条件と営業リストを整理することは、接触を増やす判断とは分けて考えられます。何を準備し、どの段階から活動を広げるかを整理すると、無理のない進め方が見えてきます。
まとめ
主要顧客に続く大口取引先は、一度の接点ではなく、自社に合う相手との実績と信用の積み重ねから育ちます。 紹介で得られる機会を大切にしながら、受注規模・粗利・継続性・商流・対応エリアで相手を選ぶことが、計画的な開拓の出発点です。
選んだ相手への接触は、面談、見積もり、受注まで分けて把握し、会話履歴と次回連絡時期を残します。そうすることで、単発のアポイント獲得ではなく、継続受注に向けた活動としてつなげられます。
まずは、今の主要顧客の取引内容を整理し、新しい相手にも求めたい条件を言葉にするところから始めてみてはいかがでしょうか。受注量を増やしたいのか、今の施工量で利益を高めたいのかも合わせて確認すると、狙う相手と動き出す時期を決めやすくなります。
自社に合う大口取引先の条件を整理するために
「どの取引先を狙うべきか」「今の施工体制で、どこまで開拓を進めるか」という段階から、整理できます。 主要顧客に続く相手を増やしたくても、発注規模だけで判断できないところに、建設業の営業の難しさがあります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。取引先開拓でも、受注条件や商流、対応エリアを踏まえた対象選びから、営業リスト、進捗、継続的な連絡の管理まで、自社に合う進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は何から整理すればよいか」というご相談でも構いません。無理にサービスの導入をおすすめすることはありませんので、次の一手を整理する場として、お気軽にご相談ください。