年商3億円台まで成長する一方、管理者の施工能力を生かし切れていない専門工事会社の現在地
首都圏で内装工事や修繕工事を手がける、5名ほどの専門工事会社があります。年商は3億円台半ばまで伸び、内装以外の工事を管理できる社員も複数名そろっていました。
管理者1人あたりの施工管理能力を考えれば、会社全体ではまだ仕事を増やせます。ところが、現状はその能力に見合う案件量がなく、社内から不満が出るほど手が空く時期もありました。
社長は自社の状況を、率直にこう捉えていました。
「1年目から7年目まで売上が上がってきましたが、自分で取りに行ったというより、仕事が舞い込んできただけなんです」
既存顧客との関係は良好で、年間を通じてまとまった発注があります。修繕工事が動いた年には、1棟で1億円規模になったこともありました。ただし、大型修繕は着工までに時間がかかり、年に1件か2件しか動かないこともあります。
さらに、既存顧客にも発注できる工事量の上限があります。
「今のお客様からは十分いただいています。でも、もう最大に近いと思うんです」
売上が伸びていることと、営業が仕組み化されていることは別です。既存顧客の発注上限が見えた時点で、次の取引先を計画的につくる必要が出てきます。
紹介と偶発的な問い合わせでは、欲しい修繕案件を選んで増やせない状態
この会社の課題は、問い合わせの数が少ないことだけではありません。自社が受けたい案件を持つ会社へ、こちらから狙って接点をつくる仕組みがないことでした。
ホームページ経由の問い合わせは増えていました。しかし、仕事の依頼は内容が合わず、ほぼ断っている状態でした。地域の経営者団体から紹介される案件も、信用面を確認すると取引しにくい会社が少なくありませんでした。
つまり、紹介や問い合わせが発生しても、次の条件を満たすとは限りません。
- 自社が得意とする修繕工事を継続的に持っている
- 希望する利益を確保しやすい
- 支払い能力や信用面に問題がない
- 自社の施工エリアから無理なく対応できる
- 工事の発注量が今後も見込める
社長自身も営業に動いていましたが、現場や経営と並行しながら、見込み先を1社ずつ訪問するのは簡単ではありません。
「1社行くのに1時間、2時間とかかります。成功すればいいですが、僕らは現場をやることに長けているので、営業に時間を取られてしまうんです」
社員も施工管理や現場対応のために入社しており、新規営業を前提に採用された人材ではありません。社長が動けないからといって、営業経験のない社員へ「空いた時間に会社を探して連絡してほしい」と任せても、狙う先や話す内容が曖昧なままでは成果につながりにくくなります。
社長の人脈や行動力だけに頼る営業は、忙しい時期に止まりやすく、接触した会社の追客も途切れます。その結果、案件が必要になってから慌てて営業する状態が続いてしまいます。
売上をつくる営業活動が「誰に、何を、何件行うか」まで分解されていない事情
紹介中心で成長した会社では、営業を一連の工程として管理する機会があまりありません。この会社でも、「修繕案件を増やしたい」という方向は決まっていましたが、具体的にどの会社を狙うかは定まり切っていませんでした。
内装工事は、解体、軽量下地、クロス、建具、木工事など案件の幅が広く、数万円の小工事から数千万円の工事まであります。一方、同社が増やしたい塗装・防水・足場を含む修繕工事は、提供範囲や見積もりの組み立てを比較的絞りやすい領域でした。
それでも、「修繕を発注する会社」という条件だけでは広すぎます。候補となる会社の売上情報を購入してみても、売上高だけでは自社との相性を判断できません。
営業先を選ぶには、少なくとも次の情報を重ねて見る必要があります。
- 業種と主な施工領域
- 所在地と自社からの移動時間
- 売上高と直近の売上伸長率
- 主な販売先や受注している物件の種類
- 元請け、一次請け、二次請けなどの取引構造
- 管理会社、工場、倉庫、マンションなどの対象施設
- 信用面と継続発注の可能性
とくに重要なのは、売上規模の大きさだけで判断しないことです。成長している会社は工事量が増え、協力会社を探している可能性があります。反対に、大手であっても価格条件が合わず、自社の利益を残せない場合があります。
接触後の管理にも課題があります。すぐに案件が出なかった会社を放置すると、相手が協力会社を必要としたタイミングを逃します。実際、しばらく接点がなかった既存先から、後になって数千万円規模の発注が続くこともありました。
「工事が必要になったら連絡する」と言われた会社こそ、1カ月後や2カ月後に状況を確認する価値があります。
新規営業は、最初の面談を取る活動ではありません。ターゲット選定、リスト作成、接触、面談、追客、見積もりまでをつなぎ、必要なタイミングで思い出してもらう活動です。
狙う顧客から見積もりまでを工程化し、週次の数字で営業方法を更新する進め方
営業の仕組み化は、いきなり電話件数を増やすことから始めるものではありません。まず、自社が欲しい仕事と受けられる仕事を整理し、狙う顧客の条件を定めます。
この会社の場合、判断の起点になるのは次のような条件です。
- 増やしたい工事:塗装、防水、足場などを含む修繕工事
- 望ましい立ち位置:自社の人数でも複数案件を管理しやすい二次請けを中心とする
- 対応範囲:本社から無理なく移動できる商圏
- 狙う相手:修繕案件を継続的に持つ元請け会社、一次請け会社、管理会社など
- 避ける条件:価格だけで選ぶ会社、信用面に懸念がある会社、自社の得意分野とずれる会社
ターゲットを決めたら、営業活動を次の工程に分けます。
- 条件に合う会社を抽出して優先順位をつける
- 電話や問い合わせフォームなど、相手に応じた方法で接触する
- 発注担当者との面談を設定する
- 自社の施工範囲、品質、対応体制を伝える
- 面談内容と次回連絡日を記録する
- 定期的に追客して案件の発生時期を確認する
- 現地確認と見積もりへつなぐ
ここで、社長や施工管理者が担うべき部分と、外部や営業担当者に任せられる部分を分けることも大切です。リスト作成、初回接触、面談調整、追客管理は分担できます。一方、施工方法の判断、現地確認、見積もり、最終的な受注判断には、工事を理解している社内の人間が関わる必要があります。
営業をすべて社長から切り離すのではなく、社長や管理者にしかできない工程へ時間を集中させる設計が現実的です。
活動を始めた後は、週次で数字を残します。
- リストへの接触件数
- 発注担当者と話せた件数
- 面談件数
- 継続追客になった件数
- 現地確認件数
- 見積もり件数
- 受注件数と受注粗利
これを3カ月、4カ月と積み重ねると、「何社へ接触すれば1件の見積もりが生まれるか」「何件の見積もりから1件受注できるか」が見えてきます。数字が悪い場合も、接触量だけを増やすのではなく、どこに問題があるかを確認できます。
たとえば、担当者にはつながるのに面談にならないなら、伝え方や提案内容を見直します。面談はできても見積もりにならないなら、狙う会社の条件がずれている可能性があります。見積もりは出るのに受注できないなら、価格、施工範囲、実績の示し方を確認します。
また、一度に面談を増やしすぎると、現場側が対応し切れません。別の専門工事会社では、一週間に複数の面談が集中し、さばき切れない状態になりました。営業量は多ければよいわけではなく、現地調査や見積もりへ進める社内の余力に合わせる必要があります。
見るべき数字はアポイント件数だけではありません。施工能力、見積もり対応力、目標粗利まで含めて、無理なく受注へつなげられる営業量を決めます。
最後に、リスト、接触履歴、会話内容、追客日、見積もり状況を表計算ソフトなどへ残します。担当者が変わっても活動を続けられる形にしておけば、将来、営業担当者を採用したときにも引き継げます。
まとめ
紹介や既存顧客によって売上を伸ばしてきたこと自体は、会社の信頼と施工力が評価されてきた結果です。ただし、既存顧客の発注量には上限があり、大型修繕は着工時期や件数も読みづらいため、それだけで翌年以降の売上を組み立てるのは難しくなります。
新規営業を仕組み化する際は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 増やしたい工事と利益条件を決める
- 狙う会社の業種、商圏、取引構造を定義する
- 条件に沿って営業リストをつくる
- 接触、面談、追客、見積もりを分けて管理する
- 週次の数字からターゲットと伝え方を更新する
- 社内の施工能力に合わせて営業量を調整する
目指すのは、たまたま仕事が入る状態から、「どれだけ動けば、どの程度の見積もりと受注が生まれるか」を把握できる状態への移行です。
最初から精度の高い営業計画を完成させる必要はありません。まず仮説を立てて狭い範囲から動き、面談先の反応を踏まえてリストや伝え方を修正する。その積み重ねが、社長個人に依存しない営業体制につながります。
自社に合う新規営業の進め方を整理したい方へ
「どの会社を狙えばよいか分からない」「紹介以外の営業を始めたいが、社長が動く時間を取れない」という段階でも、営業工程を分けて考えると次の一手が見えやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、狙う顧客の整理、営業リストの設計、接触、商談、追客まで一貫して支援しています。営業だけを切り離すのではなく、現場の施工能力や目標利益も踏まえ、持続的に回せる形を一緒に組み立てます。
まだ方針が固まっておらず、「うちの場合は何から整理すべきか」を確認したい段階でも構いません。無理にサービスを勧めることはありませんので、今の受注構造や増やしたい工事から気軽にお聞かせください。