路面店と長年の施工実績を持ちながら、新規営業に時間を割きにくい工務店
新築の受注経路を増やしたくても、経営者が電話から訪問までをすべて担うのは難しい。 栃木県にある、創業から40年余りの工務店も、そんな状況にありました。
自社の路面店があり、独自の家づくりにも取り組んできました。住宅の性能や施工実績もあります。一方、経営者や社内の担当者だけでは、新しい取引先への営業に十分な時間を割けません。
そこで優先したいと考えたのが、不動産会社からの施主紹介でした。土地を探していて、施工会社はまだ決めていない。そうしたお客様に紹介する工務店の候補へ、自社も加えてもらう取り組みです。
経営者の希望は、はっきりしていました。
「今、付き合っている建築会社はあると思いますけど、うちもその仲間に入れてくれませんか、ということなんです」
ただし、これは取り組みを始める前の相談です。不動産会社から紹介を得られた実績ではありません。どの会社に接点を持ち、何を伝え、どう訪問につなぐか。その営業の組み立てが必要な段階でした。
パンフレットを置いてもらうだけでは、施主紹介につながったかが見えない状態
営業の目的は、資料を配ることではなく、施工会社が未定のお客様に紹介してもらえる状態をつくることです。 その途中にある成果を分けないと、活動の手応えがつかみにくくなります。
経営者は、まず広く接点を持つことを重視していました。
「一旦は、パンフレットを置いてくれるとか、ちょっと話を聞いてみたい、というところにつなげてほしい」
入口としては、十分に意味があります。紹介候補に入っていなければ、お客様が工務店を探している場面でも名前は挙がりません。
ただ、資料を受け取ってもらったことと、実際に紹介してもらったことは別です。担当者が資料を見ていない場合もあります。資料は置かれていても、お客様への案内には使われていないかもしれません。
反対に、受注だけを見ていると、前進を見落とすこともあります。この会社では、新築の相談から受注までは、少なくとも4〜5か月ほどかかると見ていました。紹介が生まれる時期と、契約になる時期には差があります。
電話をかけた件数だけでも、最終的な受注件数だけでも、次に何を直すべきかは分かりません。資料送付、担当者との会話、訪問、施主紹介、見積依頼、受注を分けて捉えることが、営業を続けるうえでの土台になります。
価格競争を避けたい思いと、営業電話が多い地場の不動産会社
紹介営業に踏み出しにくかった理由は、営業力だけではなく、自社の家づくりをどう伝えるかという迷いにもありました。
経営者は、これまで不動産会社への営業を積極的には行ってきませんでした。
「性能や価値で選ばれたいと発信しているのに、何でもやりますから仕事をください、というのは、ちょっとやりたくなかったんです」
紹介を増やしたい。でも、価格だけで比べられる関係にはしたくない。この感覚は、自社の家づくりを大切にしてきた工務店ほど、重なる部分があるのではないでしょうか。
一方で、不動産会社には既に付き合いのある工務店があります。日々、営業電話も入ります。経営者自身も、電話を受ける側として、用件が分からないまま面会だけを求められることに違和感を持っていました。
資料を送った後も同じです。
「4日、5日空けたら、もう覚えていないと思います。それだけ電話が多いので」
これは、相手に関心がないと決めつける話ではありません。電話の記憶が薄れるほど、日常の連絡が多いということです。だからこそ、最初の用件を分かりやすくし、資料送付後の接点も設計しておく必要があります。
営業リストにも、地場ならではの事情がありました。抽出した候補の中には、既に取引のある会社や、接触に配慮が必要な会社も含まれていました。
「聞いたことのない会社は、ホームページを見て判断したい」
会社名と電話番号が並んでいるだけでは、優先順位は決めにくいものです。公開情報と、地域で積み重ねてきた取引情報。その両方が必要でした。
紹介候補を絞り、資料送付から早期確認、社内担当者の訪問までをつなぐ営業設計
経営者が担う判断と、日々の接触活動を分けると、限られた時間でも営業を進めやすくなります。 この会社で検討していたのも、最初の電話や資料送付を担う側と、地域情報を提供し、訪問する社内側との連携でした。
営業先は「土地を探すお客様との接点」で選ぶ
最初に優先したいのは、土地を探していて、施工会社が未定のお客様を持つ不動産会社です。単に不動産業という分類だけで広く当たるのではなく、施主紹介が生まれる接点を持っているかを見ます。
ホームページでは、土地の仲介・販売を扱っているか、住宅建築への案内があるかを確認します。分からない部分は、最初の電話で確かめます。既存の提携工務店があっても、それだけで対象から外す必要はありません。目指すのは、既存先をすべて置き換えることではなく、紹介できる選択肢に加えてもらうことだからです。
そのうえで、経営者が持つ情報をリストに重ねます。既存の付き合い、接触を避けたい事情、確認が必要な点を、色分けや短いコメントで残します。
「紹介先になり得るか」と「今、連絡してよいか」を分けて判断することがポイントです。経営者の確認待ちですべての電話が止まらないよう、配慮が必要な会社と、先に進められる会社も分けておきます。
店舗と施工実績を、紹介に使える資料へまとめる
紹介資料では、自社が伝えたい特徴だけでなく、不動産会社がお客様に案内するときの材料を整理します。
この会社には、路面店、長年の事業実績、独自に手がけてきた新築住宅がありました。これらは、会社の実体や家づくりを知ってもらう材料になります。性能の強みも、裏づけのある施工実績とともに伝えます。
大切なのは、「何でもできます」と広げすぎないことです。どんな家づくりをしてきたのか。お客様はどこで相談できるのか。既存の紹介先とは何が違うのか。資料とホームページで、それが確かめられるようにします。
自社の価値を引っ込めるのではなく、紹介する側が説明しやすい形に整える。 その考え方なら、価格競争への抵抗感と、紹介営業を進めることを切り離しやすくなります。
初回の電話は、面会だけを求めず次の接点を残す
初回の用件は、施工会社が未定のお客様への紹介候補として検討してほしい、という点に絞ります。相手が何の話か分からないまま、訪問の了承だけを求めないことが大切です。
担当者につながらない場合や、忙しくて話せない場合は、資料送付の了承と送付先を確認します。メールアドレスが公開されていなくても、了承を得て送れる連絡先が分かれば、次の接点になります。
FAXを希望される場合もあります。ただし、送っただけでは確認されたか分かりません。送付手段にかかわらず、送付日と、その後に連絡する予定を残しておきます。
送付後は早めに到着を確認し、反応を訪問へ引き継ぐ
資料送付後は、記憶が薄れる前に接点を持ちます。この会社が重視していたのは、翌日など、なるべく早い段階での確認でした。
聞くのは、まず資料が届いているかです。いきなり読了や感想を求めるより、相手が答えやすくなります。未確認であれば、相手の都合を踏まえて、改めて話せる機会を確認します。
再接触では、回数だけを増やすのではなく、何に反応があったかを残します。店舗に関心があったのか。施工実績を確かめたいのか。紹介できそうなお客様がいるのか。その情報を、訪問する社内担当者へ引き継ぎます。
この会社では、訪問は主に社内の別担当者が担う想定でした。訪問可能な日程を先に共有し、急な紹介の話があった場合の連絡方法も決めておけば、電話から対面への移行がしやすくなります。
資料設置と施主紹介を分け、止まっている段階を確かめる
活動の記録は、少なくとも次の段階を分けて見ます。
- 資料送付の了承と連絡先を得られた会社
- 資料の到着確認や担当者との会話ができた会社
- 資料設置や訪問につながった会社
- 実際に施主紹介が生まれた会社
- 紹介後、見積依頼や受注に進んだ案件
資料は受け取ってもらえるのに会話が進まないなら、送付後の接触を見直します。訪問しても紹介が出ないなら、施工会社未定のお客様が実際にいるか、資料が案内に使われているかを確かめます。
断られた理由や関心を持たれた点を、次の営業先選びと伝え方に戻すこと。 それによって、件数の報告だけでは得られない改善材料が残ります。
まとめ
不動産会社からの施主紹介を増やすには、紹介が生まれる会社を選び、資料送付から再接触、訪問までを一続きにすることが大切です。
土地を探していて、施工会社が未定のお客様との接点があるか。ホームページと地場の情報で、まずそこを確かめます。次に、店舗や施工実績などの強みを、紹介に使いやすい資料へまとめます。
送付した後は、早めの到着確認と再接触へ進みます。反応を社内担当者に引き継ぎ、訪問につなげます。その間、資料を置いてもらった会社と、実際に紹介が生まれた会社は分けて管理します。
最初から経営者がすべてを抱える必要はありません。営業先の判断、接触活動、訪問の役割を分けることが、継続できる紹介営業の出発点になります。
不動産会社への営業を、自社で続けられる形に整理するために
「どこに営業するか」と「誰がどこまで担うか」を整理するところから、ご相談いただけます。 営業先の候補はあるものの優先順位が決まらない。資料はあるけれど、送付後の動きが続かない。そうした段階でも構いません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。不動産会社への営業でも、紹介候補の選定や資料の整理、接触後の引き継ぎまで、自社の体制に合う進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は何から整理すればよいか」という段階でお声がけください。無理にサービスの利用をおすすめすることはありません。まずは、今の営業の進め方を確かめる整理先としてご活用ください。