前提

岡山県を拠点に、電気工事の売上拡大を目指す4名規模の会社

岡山県を拠点とする、4名規模の電気工事会社があります。電気工事に加え、建設現場向けの断熱関連製品も扱っています。

電気工事を担うのは本社です。商圏は岡山県と広島県を中心とする近隣地域。社長自身も現場に出ており、帰社後に事務作業を続ける日もあります。

電気工事の売上は年間1,000万円台です。会社全体では、数年以内に5,000万円規模を目指しています。そのためにも、まずは電気工事の受注を増やしたいという状況でした。

「今まで取引していた一社と仕事ができない状態になりました。その分を補いながら、電気事業にもう少し力を入れたいんです」

施工については、これまで築いてきた協力会社とのつながりがあります。受注後の体制を一定程度組めるからこそ、次の課題として浮上したのが販路開拓でした。

仕事を受ける準備はあるものの、継続的に案件が入る経路がまだ限られている会社です。

課題

取引停止の穴と、売上の過半を占める特定グループへの集中

優先して整理したいのは、取引先別ではなく、企業グループ単位で見た売上依存度です。

この会社では、電気工事売上の5割を超える案件が、実質的に同じ企業グループから発生していました。発注元の法人名が複数に分かれていても、大きな枠で見れば一つのグループです。

「別会社から来る案件もありますが、大きく見れば同じグループなんです」

帳簿上は複数社と取引していても、発注方針や予算の出どころが近ければ、リスクは分散されていません。主要取引先との取引が止まった経験があるからこそ、売上の入口を増やす必要性が現実的な課題になっています。

まず確認したいのは、次の3点です。

  • 取引先ごとの売上構成比
  • 同一グループをまとめた場合の売上構成比
  • 上位取引先の発注が止まった場合に減る売上と工事件数

顧客名が複数あることと、販路が分散していることは別です。発注のつながりまで見て、依存度を捉える必要があります。

背景

既存業者からの切り替えが難しく、法人開拓だけでは件数を積みにくい取引構造

新規開拓先として、最初から大手企業や法人顧客だけを狙えばよいわけではありません。

電気工事では、発注企業がすでに付き合いのある施工会社を抱えていることが少なくありません。品質や対応に大きな問題がなければ、既存業者から切り替えてもらうハードルは高くなります。

「法人から仕事をもらえればいいですが、今使っている工事会社がいますよね。それを切り替えるのは難しいですし、入れたとしても月に案件があるかないかだと思います」

そこで同社が考えていたのが、一般顧客向けの工事です。狙いたい領域もある程度見えていました。

  • 太陽光発電設備
  • 蓄電池
  • 電気給湯器
  • オール電化に関わる電気工事

ただし、一般顧客向けだからといって、集客経路まで個人からの直接問い合わせだけに限定する必要はありません。同社からも、不動産会社や地域工務店を通じて案件を紹介してもらいたいという考えが出ていました。

ここでは、顧客と集客経路を分けて考えることが大切です。施工先は一般住宅でも、案件の入口は不動産会社や工務店という形があり得ます。

BtoCを伸ばす場合も、「個人へ直接売るか、法人から受注するか」の二択ではありません。紹介と直接問い合わせを組み合わせられます。

解決

工事領域・商圏・顧客層を絞り、紹介と直接集客を並行する販路設計

販路開拓は、営業先のリストを増やす前に「どの工事を、どの地域で、誰に提供するか」を決めるところから始めます。

1.増やしたい工事を先に絞る

「電気工事なら何でもできます」では、紹介する側も一般顧客も、何を頼める会社なのか判断しにくくなります。

今回であれば、太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器、オール電化関連が候補です。このなかから優先順位を付けます。

判断軸は、次のように置けます。

  • 自社と協力会社で安定して施工できるか
  • 現場までの移動を含めて採算が合うか
  • 継続的な需要を見込めるか
  • 見積もりから施工まで、社長一人に負荷が集中しすぎないか

売れそうな工事ではなく、受注後まで無理なく回せる工事を販路開拓の軸にします。

2.商圏を施工体制に合わせる

電気工事は、問い合わせを広く集めればよいとは限りません。移動時間が増えれば、現場対応や見積もりに使える時間が減ります。

同社の場合、実際に動いている岡山県・広島県周辺が起点になります。そのうえで、自社対応が基本の地域と、協力会社と連携して対応する地域を分けます。

商圏を決める際は、都道府県単位だけでなく、移動時間や施工後の対応まで含めて考えると現実的です。

3.不動産会社・地域工務店との紹介経路をつくる

不動産会社や地域工務店は、一般顧客と接点を持つ紹介チャネルになり得ます。ただし、「電気工事があればお願いします」と伝えるだけでは、案件にはつながりにくいものです。

先方が紹介しやすいように、次の内容を簡潔に揃えます。

  • 対応できる工事
  • 対応地域
  • 相談から現地確認までの流れ
  • 自社で対応できる範囲と協力会社を使う範囲
  • 問い合わせ時に確認したい情報

付き合いのある施工会社をすぐに切り替えてもらうのではなく、既存業者が対応しにくい工事や、手が回らないときの相談先として接点をつくる方法もあります。

最初からメイン業者の座を狙うより、「この工事なら相談できる会社」と認識してもらうほうが、入口をつくりやすくなります。

4.直接集客も同時に整える

紹介だけに頼ると、新たな紹介元への依存が生まれる可能性があります。そのため、自社サイトなどから一般顧客が直接相談できる入口も並行して整えます。

このときも、「電気工事全般」という見せ方ではなく、太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器など、相談したい工事ごとに対応内容を分かりやすく示します。対応地域と問い合わせ方法も明確にします。

紹介経由と直接問い合わせの双方について、案件数だけでなく、見積もり数、受注数、施工地域、工事内容を記録します。どの入口から、自社に合う案件が来ているかを確認するためです。

紹介は立ち上がりの速さ、直接集客は販路を自社に蓄積できる点が強みです。どちらか一方ではなく、役割を分けて進めます。

まとめ

特定取引先への依存から抜け出すには、取引社数を増やすだけでは十分ではありません。同じ企業グループから発生する売上はまとめて捉え、実質的な依存度を確認する必要があります。

そのうえで、次の順番で販路を設計します。

  1. 企業グループ単位で売上構成を把握する
  2. 増やしたい工事を絞る
  3. 無理なく施工できる商圏を定める
  4. 不動産会社や地域工務店からの紹介経路をつくる
  5. 一般顧客からの直接問い合わせも並行して整える
  6. 問い合わせから受注までを経路別に記録する

「まずは工事の受注を増やしたい」という考えは自然です。大切なのは、売上の穴を埋めるために、別の一社へ依存し直さないことです。

狙う工事、商圏、顧客層を先に決めることで、販路開拓は単発の営業活動ではなく、継続的に案件が入る仕組みに近づきます。

自社に合う販路の優先順位から整理したい方へ

新規顧客を増やしたいと思っていても、不動産会社への営業から始めるべきか、地域工務店との関係づくりを進めるべきか、直接集客を整えるべきかは、会社ごとに異なります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、現場の施工体制や既存取引、商圏まで含めて整理し、実行まで支援しています。

「うちの場合はどの販路から考えるべきか」「取引先への依存度をどう見ればよいか」といった段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、今後の整理先の一つとして気軽にお声がけください。

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