前提

岡山県を拠点に、太陽光発電設備や蓄電池などの住宅向け電気工事を増やしたい数名規模の会社

岡山県を拠点に、近隣県まで電気工事を手がける、数名規模の会社があります。電気工事に加えて、建設現場向け資材の製造・販売も行っています。

電気工事では、電力関連会社や不動産関連会社などから受注してきました。ただし、売上の半分以上が特定の取引先グループに集中しています。以前から付き合いのあった一社との取引が止まったこともあり、新しい受注経路をつくる必要性が高まっていました。

社長は現場にも出ています。本社に戻れば、事務作業も自分で進めます。

「遅いときは、夜中の2時くらいまでやっています」

営業に使える時間は限られています。一方、施工については協力会社とのつながりがあり、案件が増えた際の対応余力はあります。そのため、今は施工人員を先に増やすより、受注を安定させることを優先しています。

狙っているのは、太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器など、オール電化に関わる住宅向け工事です。

受注拡大の焦点は、個人へ直接売るか、工務店・不動産会社から紹介を受けるかという販路設計にあります。

課題

既存業者がいる法人営業だけでは、住宅向け工事の受注量を増やしにくい状況

法人から電気工事を受注しようとしても、多くの会社には既存の工事業者がいます。対応に大きな不満がなければ、取引先を切り替える理由は生まれにくいものです。

「今使っている工事屋さんがいるじゃないですか。それを切り替えるのは、なかなか難しいですよね」

新しく取引口座を開けたとしても、すぐにまとまった案件が入るとは限りません。

「入れたとしても、量としては月にあるかないかだと思うんです。それより個人を狙ったほうが、工事は取れるのかなと思っています」

ここでいう「個人を狙う」には、二つの方法があります。

  • 自社が個人客を直接集客し、提案から契約まで行う
  • 地場の工務店や不動産会社から、住宅所有者を紹介してもらう

どちらも最終顧客は個人です。ただし、営業負担や粗利、受注の継続性は大きく異なります。

個人直販は、紹介手数料や中間マージンが発生しにくく、受注単価と粗利を自社で設計しやすい方法です。その一方で、認知獲得、問い合わせ対応、現地調査、見積もり、商品説明、契約後のフォローまで自社で担います。

工務店・不動産会社経由は、住宅所有者との接点を持つ会社から案件を紹介してもらえるため、見込み客を一から探す負担を抑えられます。ただし、紹介条件や価格調整によっては、直販より粗利が下がる可能性があります。また、一社との関係だけに頼ると、現在と同じ取引先集中が再び起こりかねません。

個人直販は粗利をつくりやすい反面、営業工程が増えます。紹介案件は営業負担を抑えやすい反面、紹介元への依存と条件管理が必要です。

背景

受注件数だけでなく、社長が営業と現場を両立できる経路を選ぶ必要性

住宅向け工事を増やす目的は、単発の売上をつくることだけではありません。既存の大口取引先に偏った状態を見直し、電気工事事業の受注基盤を広げることにあります。

「まずは実績をつくっていきたいですね」

この言葉が重要です。太陽光発電設備や蓄電池、電気給湯器では、施工可能だと伝えるだけでは、個人客も紹介元も判断しにくいからです。どのような住宅で、何を施工し、どこまで対応できるのか。紹介する側にとっても、具体的な実績があるほうが声をかけやすくなります。

ただし、社長が現場、事務、営業を一人で担う状況では、直販を一気に増やすと営業対応が詰まりやすくなります。問い合わせが増えても、現地調査や見積提出が遅れれば受注にはつながりません。

反対に、工務店や不動産会社だけを開拓しても、既存業者との関係が強ければ、すぐには案件が動きません。案件が発生したときだけ呼ばれる立場では、受注頻度も読みづらくなります。

必要なのは、どちらか一方に決めることではありません。

初期は紹介経由で施工実績をつくり、その実績を個人直販にも活用する流れが、限られた営業時間を使いやすい進め方です。

工務店や不動産会社から紹介された案件でも、施工写真、対象設備、工期、対応地域などを匿名で整理できれば、次の紹介営業と個人向けの情報発信の両方に使えます。実績が販路をまたいで蓄積される形です。

解決

紹介案件で実績を積みながら、受注量・粗利・営業負担・継続性で販路を見極める進め方

最初から直販と紹介のどちらかに絞り込むより、小さく両方を動かし、数字を比べる方法が現実的です。

まず、売りたい工事を広げすぎないことです。太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器をすべて同時に訴求すると、営業先にも個人客にも強みが伝わりにくくなります。

過去の施工経験、協力会社の対応範囲、商圏内の問い合わせ状況を見ながら、最初の主力工事を決めます。そのうえで、次の順番で進めます。

1.既存の住宅向け実績を紹介できる形にする

まずは、これまで市内の個人客などから受けた工事を整理します。

  • 工事の種類
  • 対応した住宅や設備の条件
  • 現地調査から完工までのおおよその期間
  • 対応可能な地域
  • 自社施工と協力会社施工の範囲
  • 施工前後の写真

豪華な資料である必要はありません。工務店の担当者が住宅所有者へ説明するときに、「どんな会社で、何を任せられるか」が分かることが大切です。

実績資料は個人向けの販促物であると同時に、工務店や不動産会社が安心して紹介するための営業資料になります。

2.工務店と不動産会社には「既存業者からの全面切り替え」を求めない

紹介先の開拓では、「電気工事をすべて任せてください」と提案すると、既存業者との競合になりやすくなります。

最初は、既存業者が対応しにくい工事や、住宅所有者から相談があったときの補完先として入るほうが話を進めやすくなります。太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器など、対象工事を明確にしておくことも有効です。

候補先は、地場工務店、住宅リフォーム会社、賃貸・売買を扱う不動産会社です。接点をつくった後は、案件の有無だけを尋ねるのではなく、どのような住宅相談が多いかを確認します。

紹介条件についても、着工前に整理します。見積もりの主体、顧客との契約主体、紹介料の有無、施工後の問い合わせ窓口などです。ここが曖昧だと、受注後に営業負担が想定以上に増えることがあります。

3.個人直販は、対応できる商圏と工事を絞って始める

直販では、対応地域を広く見せるより、社長や協力会社が無理なく現地調査へ行ける範囲から始めます。

発信内容も、「電気工事なら何でも対応」ではなく、太陽光発電設備、蓄電池、電気給湯器など、相談してほしい工事を具体的に示します。市内から個人の問い合わせを受けた実績があるなら、その導線を振り返ることも欠かせません。

どこで会社を知ったのか。なぜ依頼したのか。比較した会社はあったのか。既存の個人客に確認すると、直販で強化すべき接点が見えやすくなります。

4.四つの指標で、伸ばす販路を決める

一定期間動かした後は、売上だけでなく、次の四つを比較します。

  1. 受注量:問い合わせ数ではなく、実際に受注した件数
  2. 粗利:材料費、外注費、紹介料などを引いた後に残る金額
  3. 営業負担:現地調査、見積もり、説明、再連絡に使った時間
  4. 継続性:同じ顧客や紹介元から次の案件が見込めるか

直販の粗利が高くても、社長の営業時間が膨らめば、現場や事務を圧迫します。紹介案件の粗利が少し低くても、説明や集客の負担が小さく、継続的に案件が入るなら有力な販路です。

判断すべきなのは一件当たりの売上ではなく、粗利と営業時間を含めて、無理なく繰り返せる受注経路かどうかです。

紹介元についても、一社に寄せすぎないことが大切です。複数の工務店・不動産会社と小さな取引をつくることで、案件発生の波をならしやすくなります。

まとめ

住宅向け電気工事を増やすとき、個人直販と工務店・不動産会社経由には、それぞれ違う役割があります。

個人直販は、価格や提案を自社で設計しやすく、粗利を確保しやすい販路です。一方で、集客から契約後の対応まで営業負担が増えます。

工務店・不動産会社経由は、住宅所有者との接点を借りられるため、初期の実績づくりに向いています。ただし、紹介条件を明確にし、特定の紹介元へ依存しない設計が必要です。

この会社のように、社長が現場と事務を兼ねながら受注を増やす場合は、紹介経由で実績を積み、その実績を直販にも使う進め方が考えられます。

工務店経由か個人直販かを先に決めるのではなく、小さく試し、受注量・粗利・営業負担・継続性を比べながら比重を調整することが大切です。

自社に合う住宅向け工事の受注経路を整理したい方へ

住宅向け工事を増やしたくても、「まず個人集客から始めるべきか」「どの工務店に声をかけるべきか」「紹介条件をどう設計すればよいか」は、会社の施工体制や商圏によって変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、現場の対応力や既存取引、原価、デジタル活用まで含めて整理し、実行を支援しています。

「うちの場合は、どちらを優先すべきか」「何から整理すればよいか分からない」という段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、住宅向け工事の実績づくりや紹介先開拓を考える際の整理先としてご活用ください。

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