協力会社には施工余力がある一方、原状回復の営業を少人数で担う体制
増やしたいのは大型工事ではなく、得意な賃貸住宅の原状回復工事を継続して任せてもらえる取引先です。 この違いをはっきりさせることが、営業先を絞る出発点になります。
ある建物管理・原状回復工事の会社では、全社では百名余りの体制があるものの、原状回復部門は少人数で運営しており、新規開拓も担当者が他の業務と並行して進めていました。既存の受注で必要な数字は何とか確保できていて、次はさらに案件を増やしたいという状況です。
施工を頼める協力会社は複数あり、仕事の依頼を待ってもらっている先もありました。「件数が増えれば、そこにどんどんお願いしていける」という話からも、まず整理すべきなのは施工会社の不足ではなく、案件を継続して受けられる営業先の選び方だと分かります。
対応エリアは神奈川県内の都市部に限定し、得意なのは一般賃貸住宅のアパート・マンションです。間取りはワンルームから1LDKが中心で、低中層の住宅との相性がよく、テナントやホテルの工事、大きなリノベーションを主力にする考えではありませんでした。
担当者の希望も明確でした。
「大きい工事というより、小さい工事をいっぱいやれたらというのが、うちの考えです」
受注を伸ばすといっても、工事の規模を大きくする方法と、得意な工事の件数を増やす方法では、探す相手が変わります。この会社が求めていたのは、後者に合う管理会社でした。
少量発注の管理会社を増やすほど、会社ごとに異なる進め方への対応が増える悩み
取引先の社数を増やすことと、少人数で回せる受注を増やすことは、同じではありません。 発注が少量ずつ分散すると、案件数だけでは見えない対応の負担が積み重なります。
この会社には、主要な取引先が数社ある一方、月に1〜2件ほどの依頼がある管理会社も十社余りありました。取引の入り口はできていても、一社ごとの案件量が小さいと、売上を伸ばすには多くの会社とやり取りする必要があります。
そこで負担になるのが、管理会社ごとの仕事の進め方の違いです。
「会社さんごとに、やっぱりやり方だったり癖があるので、なるべく一社からまとまって受注して、効率よく現場を回していきたいんです」
少人数の部門では、相手ごとの進め方に合わせる仕事も、限られた担当者が受け持ちます。施工を協力会社にお願いできても、取引先への対応まで同じように増やせるとは限りません。
そのため、営業の目標を「新しい管理会社と何社つながるか」だけに置くと、望んでいた成長とずれることがあります。必要なのは、一社ごとの継続発注の余地を見ながら、取引先対応の負担に見合う案件量が期待できる先を選ぶことです。
管理会社全体の戸数や本社所在地だけでは、対応エリア内の発注量が見えない事情
管理会社の規模は候補を探す手掛かりですが、自社に合う案件がどれだけ来るかを示す数字ではありません。 この会社が重視していたのも、全国の管理戸数ではなく、自社が施工できるエリア内の管理戸数でした。
当初は「ある程度大きい管理会社」という言葉で営業先の希望が語られていましたが、条件を確かめると、対応エリア内でおよそ2,500戸以上を管理していることが、一つの目安になっていました。
本社が遠方にあっても、施工エリア内に十分な管理物件があれば対象になります。反対に、本社が近くても、実際に管理している物件がエリア外に多ければ、期待する発注量にはつながらない可能性があります。
さらに、同じ大手グループでも、新築を担う会社と賃貸住宅の管理を担う会社では、原状回復工事への接点が異なります。管理会社の中でも、専有部と共用部で担当部署が分かれている場合がありました。会社名を知っていることと、原状回復工事の発注窓口に届くことは別の話です。
もう一つ重要なのは、管理戸数と自社への発注件数も、そのままでは結び付かない点です。
「会社の規模も大事ですが、よければ数十件を回せる、という前提があるかを知りたいんです」
一方で、候補先を広く見る場面では、「まずは月に数件の依頼が来るかどうか」という見方も示されていました。ここは分けて捉えると整理しやすくなります。月に数件の継続依頼が見込めることは候補として残す目安であり、その先に数十件規模まで広がる余地があるかは、優先して深く開拓するための判断材料です。
「候補に入れる条件」と「重点的に開拓する条件」を分けることで、規模の大きさだけに引っ張られない営業先選びができます。
対応エリア内の物件と継続発注の余地から絞り、発注窓口で見込みを確かめる進め方
候補先の抽出、発注部署の特定、継続発注の見込みの確認という順に進めると、限られた営業時間を使う先が明確になります。 最初から全情報をそろえるのではなく、公開情報で仮の候補をつくり、接点を持ってから確かめる情報を分ける進め方です。
まず、自社が増やしたい工事の条件をそろえる
営業先を探す前に、得意な工事と受けられる範囲を、社内と協力会社の体制に合わせて整理します。この会社であれば、軸になるのは次の内容です。
- 対応エリアは、現在施工している都市部に限定する
- 主な対象は、一般賃貸住宅のアパート・マンションとする
- ワンルームから1LDKを中心とした、小規模の原状回復工事を増やす
- 協力会社に依頼できる案件量を踏まえ、継続して受けたい件数を整理する
ここで大切なのは、「施工できる工事」をすべて営業対象にしないことです。ファミリータイプにも対応できるとしても、まず増やしたいのが小さな住戸の原状回復なら、その条件を前面に出した方が、相手も発注できる案件を考えやすくなります。
また、協力会社がいるという事実だけでなく、希望する案件量を継続して受けられるかまで、営業の方針とそろえておきます。自社の施工余力と得意な物件を先に示すことが、相手の発注余地を具体的に確かめる土台になります。
管理戸数の情報は、候補を見つけるために使う
候補先の抽出には、管理戸数のランキングや企業の公開情報が使えます。この会社でも、業界紙のランキングを入り口にリストをつくり、検索などで見つけた管理会社を追加していました。
ただし、全国合計の管理戸数しか分からない会社を、そのまま有力候補と決める必要はありません。「全体では十分な戸数があるが、対応エリア内の戸数は未確認」として残し、その後の確認につなげれば十分です。
判断の中心に置くのは、本社所在地ではなく、対応エリア内にどれだけ対象物件があるかです。あわせて、扱っている物件が一般賃貸住宅なのか、自社が得意とする間取りや建物に合うのかを見ていきます。
管理戸数の目安は、あくまで候補を絞るためのものです。「一定戸数を管理していれば一定件数が発注される」とは考えず、発注見込みは次の段階で確認します。
会社名ではなく、原状回復を発注する部署まで確かめる
接点をつくる相手は、大手企業の本体やグループの代表窓口とは限りません。賃貸住宅の管理を担う会社、さらに専有部の原状回復を担当する部署まで確認することが必要です。
そのうえで確かめたいのは、単に取引を始められるかではなく、次のような内容です。
- 対応エリア内に、自社が得意とする賃貸住宅がどの程度あるか
- 原状回復工事を、どの程度外部へ発注しているか
- 当初の依頼だけでなく、仕事ぶりを見た後に件数を増やす余地があるか
- 自社が希望する継続案件量を、将来的に検討できるか
発注件数は、接点ができただけでは確定しません。この会社でも、希望する量が実際に見込めるかは、その後に確認する事項として残っていました。だからこそ、紹介や面談の設定を成果の終点にせず、発注の可能性を確かめるところまで進める意味があります。
価格の適合も、この段階で外せない確認事項です。担当者からは、主要な工事項目の価格表を先に共有し、相手の発注条件と合うかを確かめたいという希望がありました。具体的な価格を公開する必要はありませんが、双方の条件に大きな隔たりがないかを先に見ておけば、限られた時間を次の打ち合わせに使うべきか判断できます。
候補が限られるなら、接触数より確認の深さを重視する
条件を絞った結果、候補先が少なくなるなら、対象を無理に広げるより、有力な会社の発注事情を深く確かめる方が目的に合います。
この会社でも、エリアと管理戸数の条件を掛け合わせると、候補は百数十社程度に限られる見立てでした。こうした場合、架電数を増やすことだけを目標にすると、限られた候補への接触を終えた後に、発注の可能性が分からないまま残ることがあります。
電話で新たな接点を探すか、管理会社側の事情を知る人の知見や人脈を使うかは、候補の数と、足りない情報によって選びます。すでに候補が見えていて、課題が担当部署や発注余地の把握にあるなら、その確認に届く方法を選ぶことが大切です。
営業担当者が他業務も抱える場合、外部に任せる内容も「管理会社に広く連絡する」だけではなく、どの条件を確認し、どの段階で自社に引き継ぐかまでそろえると、営業先を絞った意味が実務につながります。
まとめ
少人数で原状回復の受注を増やすには、取引先の社数よりも、自社が得意な工事を継続して任せてもらえる可能性を見て営業先を選ぶことが重要です。
その判断では、管理会社全体の規模や本社所在地だけでなく、対応エリア内の管理戸数、賃貸住宅の種類・間取り、外部への発注状況、将来の案件量を確かめます。あわせて、自社と協力会社が受けられる施工量、価格条件との適合もそろえて見ていきます。
まずは、現在の候補リストを「エリア内の対象物件が見えている先」と「まだ確認が必要な先」に分けるところから始められます。そのうえで、月に数件の継続依頼が見込める先と、さらにまとまった件数へ広がる余地のある先を見極めれば、営業の優先順位がつけやすくなります。
目指すのは、得意でない大型工事への転換ではありません。得意な小規模工事を、無理なく続けて受けられる取引関係づくりです。
原状回復の営業先を、自社の施工体制から整理するために
「どの管理会社を狙うか」が決まりきっていない段階でも、得意な工事と施工余力を整理するところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。原状回復の販路開拓では、対応エリアや物件の条件、協力会社を含めた施工体制を踏まえ、候補先の絞り込みから発注窓口への接点づくりまで、進め方を一緒に考えます。
「うちの場合、管理戸数をどこまで目安にすればよいか」「今ある候補リストのどこから当たるべきか」といった整理からでも構いません。無理な営業は行わず、必要な支援を確かめながら進めます。