前提

月30件前後を回せる一方で、特定の集合住宅系案件を主力としている電気工事会社の現在地

ある電気工事会社では、担当者が一人一台の車で現場を回り、集合住宅の共用部工事を月30件前後、確実にこなしています。少額案件を一定件数さばけることは、この会社の大きな強みです。

一方、仕事の出所は特定の集合住宅系ルートが中心でした。そこで次の柱として考えていたのが、共用部のLED、インターホン、防犯カメラ、キュービクルなどの改修工事です。

希望しているのは、1,000万円を超える大型工事を年に数件受注する形ではありません。数十万円から数百万円ほどの案件を、年間を通じて継続的に受注できる状態です。

経営者の関心は、端的にいえば次の2点でした。

  • 自社くらいの規模でも受注できる工事があるのか
  • 工事金額や利益率を踏まえて、事業として成り立つのか

「飛び抜けた利益率でなくてもいい。単発の工事が次々に出るのか、まとまった改修が多いのかを知りたい」という言葉からも、欲しいのは大型案件そのものではなく、自社の施工体制に合った改修案件が繰り返し出る発注ルートだと分かります。

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課題

改修工事の種類ではなく、自社に合う発注先と案件規模を絞り切れていない状態

LEDやインターホン、防犯設備の改修需要があっても、発注先を広く捉えすぎると営業活動が分散します。重要なのは「どこに需要があるか」だけではなく、どの発注先なら、自社が無理なく対応できる案件を継続的に持っているかです。

この会社の場合、管理組合への直接営業は時間がかかるため、優先したい方法ではありませんでした。要望や工事内容をある程度まとめたうえで案件を持ち込んでくれる、管理会社や独立系のビル管理会社を間に挟む形を望んでいました。

施工範囲にも条件があります。自動火災報知設備など、消防法上の資格が関係する工事は現時点では対応が難しく、対象から外す必要がありました。

つまり、単に「改修工事を増やしたい」と営業するだけでは不十分です。

施工できる工事、対応できない工事、月間で受けられる件数、望ましい金額帯を先に決めなければ、紹介されても受注できない案件が増えてしまいます。

背景

大型案件よりも、既存の現場運営力を生かせる小口・中規模案件を求めている事情

この会社には、少額案件を多数、確実に完了させる現場運営力があります。担当者ごとに現場を持ち、月30件前後を動かせる体制は、改修工事の営業でも評価材料になり得ます。

ただし、その強みは大型工事の受注実績だけでは伝わりません。発注側が確認したいのは、次のような実務上の条件です。

  • どの設備の改修に対応できるか
  • 必要な資格を自社で満たしているか
  • 一度に何棟、月に何件まで対応できるか
  • 数十万円の小口案件と数百万円の改修案件のどちらが得意か
  • 現場ごとの品質や完了報告を安定して管理できるか

受注側としても、「案件があるか」だけで判断すると、期待とのずれが生まれます。工事があっても、自社の対象外となる資格が必要だったり、案件規模に対して管理負担が大きかったりすれば、売上が増えても利益は残りにくくなります。

反対に、一件あたりの利益率が極端に高くなくても、同種工事を一定の頻度で受注でき、既存の施工体制で効率よく回せるなら、有力な取引先になり得ます。

見るべきなのは一件の売上額だけではなく、発注頻度、粗利、必要工数、資格条件を合わせた取引全体の収益性です。

解決

施工条件と収益条件を先に定め、複数棟を管理する会社へ営業先を絞る進め方

継続受注を目指すなら、管理会社やビル管理会社を一括りにせず、自社との相性を確認しながら絞り込むことが大切です。営業先を選ぶ前に、まず自社の受注条件を一枚に整理します。

1.対応できる工事と資格上の境界を明確にする

最初に、工事を次の3つに分けます。

  • 自社だけで対応できる工事
  • 協力会社と組めば対応できる工事
  • 現時点では受けない工事

この会社であれば、共用部LED、インターホン、防犯カメラ、キュービクルなどのうち、実際の保有資格と施工経験に合う範囲を明示します。自動火災報知設備のように、現在は難しい領域も先に伝えます。

対応範囲を広く見せるより、「何なら確実に施工できるか」を発注側が判断できる状態にすることが先です。

2.受けたい案件の大きさと件数を数字で決める

「数十万円から数百万円」という希望だけでは、営業先を選びにくいため、次の条件まで具体化します。

  • 一件あたりの希望金額帯
  • 月間で追加対応できる件数
  • 同時に進行できる現場数
  • 一棟単位と複数棟一括のどちらを優先するか
  • 対応できる地域と移動負担

月30件前後を回している実績があっても、既存案件を維持しながら新規案件を何件追加できるかは別の問題です。過去の施工件数ではなく、現在の余力を基準に受注上限を決めます。

3.最低限残したい利益の条件を決める

案件を紹介された段階で判断がぶれないよう、受注条件をあらかじめ定めておきます。

確認したいのは、材料費や外注費を引いた粗利率だけではありません。現地調査、見積もり、打ち合わせ、完了報告まで含めた管理工数も見ます。

小口案件は、一件ごとの工事時間が短くても、移動や書類対応が重なることがあります。そのため、次の両面から判断します。

  • 一件単位で最低限確保したい利益
  • 同じ発注先から年間で見込める件数と利益

一件の採算が標準的でも、発注頻度が高く、同種工事を効率よく回せる取引先なら、年間では良い顧客になる可能性があります。

4.複数棟を管理し、改修案件をまとめられる会社を優先する

営業先として相性がよいのは、単に建物を管理している会社ではありません。複数棟を管理し、LEDやインターホン、防犯設備などの更新案件を継続的に扱っている会社です。

候補先には、次の点を確認します。

  • 管理している建物の種類と棟数
  • よく発生する改修工事の種類
  • 一件あたりのおおよその工事規模
  • 年間の発注頻度
  • 発注先を選ぶ際に重視する条件
  • 資格や施工実績に関する要件

管理会社との取引を望む理由は、営業の手間を省くためだけではありません。複数の建物から発生する改修需要へ、同じ窓口を通じて継続的に接点を持てることにあります。

5.最初から大量受注を狙わず、小さな案件で相性を確かめる

条件が合いそうな発注先でも、実際の進め方や書類対応、見積もりのスピード、現場調整の負担は取引してみなければ分かりません。

最初は対応可能な小口案件から始め、次の点を振り返ります。

  • 想定した利益が残ったか
  • 現場と管理業務に無理がなかったか
  • 同種案件が今後も発生しそうか
  • 発注側が自社の施工体制を評価しているか

そのうえで、相性がよければ対象棟や工種を広げます。営業先の名前や規模ではなく、継続して利益を残せる取引構造かどうかで深耕先を選ぶことが重要です。

まとめ

LED、インターホン、防犯設備などの改修工事を継続的に増やしたい場合、管理組合へ広く直接営業することだけが選択肢ではありません。複数棟を管理し、工事内容をある程度まとめて発注できる管理会社やビル管理会社は、有力な営業先になります。

ただし、発注先を探す前に、自社側の条件をそろえる必要があります。

  • 対応できる工事と必要資格
  • 月間の対応可能件数
  • 希望する案件規模
  • 最低限確保したい利益
  • 発注頻度と年間収益

「どこから仕事をもらうか」は、「どの案件なら継続して利益を残せるか」を決めてから考えると整理しやすくなります。

大型案件の有無だけでなく、既存の施工体制を生かせる案件が、無理のない頻度で発生するかを見ることが、継続受注につながる発注先選びの軸になります。

自社に合う改修案件と営業先を整理したい方へ

管理会社やビル管理会社へ営業したくても、「自社の規模で狙うべき相手が分からない」「どの工事を提案の入口にするべきか決められない」という段階は珍しくありません。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の施工体制、対応工種、案件規模、収益条件を整理し、販路拡大や元請け開拓の実行まで支援しています。まずは自社の場合に何から整理すべきかを確認するところからでも構いません。無理に提案を進めることはありませんので、状況に合わせてご相談ください。

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