前提

大阪・兵庫の複数エリアで協力会社の工程を管理し、3カ月先の人員配置まで見通したい状況

大阪・兵庫を中心に複数エリアで工事を動かす、ある建設会社の事例です。本体工事だけでなく、基礎、建方、屋根、断熱、設備配管、電気、大工、内装、外構など、多くの協力会社が工程に関わっています。

各現場の工程表は協力会社から提出されます。ただし、書式や細かさは会社ごとに異なります。Excelで管理する会社もあれば、別のツールを使う会社もあります。そもそも、地方の小規模な現場では工程表を細かく作っていないケースもありました。

担当者からは、こんな実感が語られました。

「A社、B社、C社の工程を付き合わせて、A社に余裕があれば大変なC社へ応援を出したい。でも、工程表が全部バラバラなんです」

現在も、工事担当者が各社の情報を持ち寄り、案件が集中する時期には工事課全体で応援できないかを調整しています。つまり、調整そのものはすでに行われています。

一方で、その判断は担当者の経験や頭の中に寄りやすく、エリアをまたいだ比較までは難しい状態です。

必要なのは、精密な工程表をもう一つ増やすことではありません。複数現場を同じ物差しで並べ、3カ月先の負荷を比べられる状態をつくることです。

課題

工程表の形式と粒度が違うため、A社からC社への応援判断が遅れる状態

工程管理を難しくしているのは、工程表が存在しないことではありません。工程表はあるものの、そのままでは横並びにできないことです。

たとえば、ある会社は工種ごとに開始日と終了日を細かく入力しています。別の会社は「基礎工事」「本体工事」といった大工程だけです。さらに、担当者独自の表や別システムで管理されている場合もあります。

この状態では、一つひとつの現場は管理できても、複数現場を横断した判断が難しくなります。

  • どのエリアで工事が重なるのか
  • どの工種が不足しそうか
  • どの協力会社に余力がありそうか
  • 県境を越えて応援を出せる期間はいつか
  • 新しい案件をどの会社へ割り振るか

現場では、「着工しているのに穴を掘れず、基礎工事が2週間後ろへずれる」といった事態も起こり得ます。目の前で人手不足が判明してから調整すると、声をかけられる協力会社も限られます。

「今月、誰がどこへ入っているか」は把握できても、「2カ月後にどこが詰まるか」が見えない。この違いは大きいものです。

既存システムには、職人の資格、安全書類、現場への入退場、過去の稼働率などが蓄積されていました。しかし、これらは実績を確認するデータです。

過去の稼働実績だけでは、これから予定されている工事の重なりまでは把握できません。応援判断には、実績管理とは別に予定を比較する仕組みが必要です。

背景

高精度な工程入力を全協力会社へ求めるほど、現場の更新負担が重くなる構造

工程表を統一しようとすると、最初に「全協力会社に同じシステムを使ってもらう」という案が浮かびます。理想的に見えますが、実際には導入と定着のハードルがあります。

協力会社ごとに、現在の管理方法が違うためです。事務員や若手社員が受発注管理の一環で入力している会社もあれば、担当者が表計算ソフトで管理している会社もあります。現場数が少ない地域では、「何とか回っているから」と工程表自体を作り込んでいないケースもあります。

新しい仕組みへ切り替えると、現場情報を複数のシステムへ重複入力する問題も生まれます。

「こっちにもパスワードを入れて、別のシステムにも入れて。現場情報を一度入れたら、全部に反映してほしいという話になります」

入力項目を増やせば、理論上の精度は上がります。しかし、更新されなければ実態との差が広がります。特に先行きの工程は変更が起こるため、最初から日単位の精度を求めても維持しにくいものです。

一方、この会社には標準工程の材料がありました。40坪前後の2階建てなら全体でおよそ80日、特定の作業は建物条件によって5日や7日といった目安があります。2階建て、3階建て、重量鉄骨など、建物タイプごとの工程パターンも存在します。

各社の工程表をそのまま統一するより、すでにある標準工程を共通の物差しにしたほうが、少ない入力で先の負荷を見通しやすくなります。

解決

建物タイプと工種別の標準工程を当てはめ、例外だけを調整する運用

最初に目指したいのは、すべての現場を正確に再現する工程管理ではありません。建物タイプと着工予定日を選ぶと標準工程が展開され、通常と異なる部分だけを直せる状態です。

進め方は、次の順番が現実的です。

1.工程管理で決めたいことを先に絞る

工程表の粒度は、何を判断したいかによって決まります。このケースで優先したいのは、日々の細かな作業指示ではなく、複数現場を横断した人員配置です。

そのため、初期段階では次の判断ができれば十分です。

  • どの時期に案件が重なるか
  • 基礎や建方、大工など、どの工種が集中するか
  • どの協力会社やエリアに余力があるか
  • 応援の打診をいつ始めるか

現場の施工管理表と、人員配置を判断するための負荷予測表は、同じ精度である必要はありません。

2.建物タイプごとに標準工程を用意する

まずは件数の多い建物タイプから始めます。たとえば、2階建て、3階建て、重量鉄骨といった区分です。

そのうえで、基礎、建方、屋根、断熱、設備、大工、内装、仕上げ、外構など、配置判断に必要な工種を並べます。各工種には標準的な開始時期と所要日数を設定します。

最初から全工種を細分化する必要はありません。応援調整の対象になりやすい主要工種から整えたほうが、運用を始めやすくなります。

3.標準から外れる現場だけを修正する

新しい案件が決まったら、担当者が建物タイプと着工予定日を選びます。標準工程を自動的に当てはめ、次のような例外だけを直します。

  • 通常より工期が長い、または短い
  • 特定工種の開始日がずれる
  • 担当する協力会社が標準と異なる
  • 外構など、本体工程の外で別途管理する工事がある

相談の場でも、「標準工程をポンと出して、現実に合わせて微調整する」という進め方が話題になりました。

ゼロから工程表を書いてもらうのではなく、標準工程との差分だけを確認してもらうことで、入力負担と予測精度を両立しやすくなります。

4.協力会社への一斉導入ではなく、社内運用から始める

全協力会社へ新しい入力方法を求めると、説明やアカウント管理、問い合わせ対応が一気に増えます。初期段階では、工事担当者が既存の工程表や受注情報を見ながら、社内側で標準工程へ当てはめる方法も考えられます。

工事課内でA社、B社、C社の予定を並べられるだけでも、負荷の偏りは見えやすくなります。そこで応援判断に使えることを確認してから、必要な協力会社に限って更新へ参加してもらう流れです。

標準化の目的は、全員に同じ表を書かせることではありません。工事課が同じ基準で複数現場を比較できることです。

5.既存システムとは役割を分ける

すでに受発注、職人情報、安全書類、入退場、稼働実績を管理する仕組みがあるなら、同じ情報を新しい工程管理へ持たせる必要はありません。

役割は次のように分けると整理しやすくなります。

  • 既存システム:職人情報、資格、安全書類、入退場、実績の記録
  • 工程管理:今後の案件、標準工程、担当会社、将来の負荷予測
  • 現場の詳細工程表:各現場で必要な細かな施工調整

すべてを最初から自動連携しようとすると、着手までに時間がかかります。まずは案件番号など、既存情報と照合できる最低限の項目を持たせる方法があります。

既存システムを置き換えるのではなく、「先の予定を見る部分」だけを切り出すことが、早く運用を始めるポイントです。

まとめ

協力会社ごとに工程表の形式や粒度が違う状態では、各現場を個別に管理できても、複数現場の負荷は比較しにくくなります。その結果、担当者の経験に頼った調整が増え、エリアをまたいだ応援判断も遅れがちです。

ただし、最初から全協力会社の工程表を一つに統一する必要はありません。

建物タイプと工種別の標準工程を用意し、案件ごとに例外だけを調整する。そこから始めれば、入力負担を抑えながら3カ月先の人員配置を見通せます。

大切なのは、工程表をきれいにそろえることではなく、A社に余裕があり、C社が忙しくなる時期を早めにつかむことです。まずは件数の多い建物タイプと、応援判断に必要な主要工種に絞ると、現場でも扱いやすい形になります。

自社に合う工程管理の粒度から整理したい方へ

工程管理の標準化は、システムを選ぶ前に「どの判断に使うのか」「既存システムと何を分担するのか」を整理することが欠かせません。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。工程表の統一をどこまで進めるべきか、標準工程をどう作るか、既存システムをどう活かすかといった段階から一緒に整理できます。

「うちの場合は何からそろえるべきか」「協力会社へ入力を頼むべきか迷っている」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、現在の管理方法を整理する場として気軽にお声がけください。

お問い合わせはこちら