職人7名を抱えながら施工管理・顧客対応・営業が社長に集中する10名規模の会社
首都圏で工事業と中古物件の再生・販売を手がける、10名規模の建設会社があります。職人は7名ほど在籍。工事会社としては大手不動産会社や地域の工務店、ビルダーから仕事を受けています。
自社で物件を仕入れ、リフォームして販売する流れも持っています。事業全体の売上は数億円規模です。仕事がないわけではありません。むしろ、事業の幅をさらに広げられる余地があります。
ただし、その動きを担っているのは主に社長です。
「私の次に動ける人が一人いれば、かなり助かるんです」
必要なのは、単に現場で施工できる職人ではありません。施工の状況を読み、顧客と話し、必要に応じて営業にも動ける人です。社長の表現では、「職人でもあるけれど、職人だけではない人」でした。
求人では職人と現場管理を募集しています。しかし、反響は多くありません。応募があっても、求めている中堅層とはずれることがあります。
一方で、仕事を増やせば現在の人数では回らない見込みです。社長も「右腕になる人がいれば、売上は伸びるでしょうね」と話していました。
この会社に不足しているのは単純な人数ではなく、社長と現場の間に立って事業を前へ進める人材です。
「監督・職人・営業の経験者」を一度に求めるほど採用要件がぼやける状態
社長が求めていたのは、監督経験があり、職人経験もあり、できれば営業経験もある人でした。さらに、フットワークが軽く、状況に応じて臨機応変に動けることも期待しています。
現場の実情を考えれば、どれも欲しい経験です。ただ、すべてを満たす人を探すと、対象者はかなり限られます。
「もう一人の私の分身がいれば」という言葉は、多くの中小建設会社で聞かれます。しかし、社長は長い時間をかけて、施工、顧客対応、受注判断、社内調整を身につけています。その役割を最初から一人で再現できる人は、なかなか見つかりません。
ここで起きやすいのが、求人票では「現場管理」と書きながら、実際には次のような期待を持っている状態です。
- 現場の段取りと職人への指示
- 工務店やビルダーとの調整
- 顧客からの連絡への対応
- 新しい仕事につながる関係づくり
- 社長不在時の判断
これでは、応募者から見ると入社後の役割が見えません。会社側も、面接で何を基準に合否を決めるべきか曖昧になります。
「右腕が欲しい」をそのまま採用要件にせず、最初に任せたい仕事へ分解する必要があります。
現場対応の電話が社長に集まり、採用活動まで考える時間が残らない構造
この会社では、職人の採用実績そのものがないわけではありません。一定数の人を迎え、現場の施工体制はつくってきました。
それでも、社長の負担は軽くなっていません。職人が増えても、施工管理や顧客対応、営業判断を担う人が増えていないからです。
話をしている最中にも電話が入り、「いろいろ対応しなければならないことが増えてきたので」と、時間を気にする場面がありました。これは社長の段取りが悪いという話ではありません。現場と顧客の間で起きる判断が、社長に集まる組織になっているということです。
さらに、採用市場には多くの求人媒体やサービスがあります。従来のように、有名な媒体へ職種名だけを載せれば応募が集まるとは限りません。
この会社も「職人」「現場管理」で求人を出していました。しかし、本当に欲しいのは、一般的な現場管理者よりも広い役割を担う人です。募集職種と経営上の期待にずれがあります。
採用できない背景を、媒体や応募数だけの問題にすると、このずれが残ります。広告費を増やして応募数が増えても、右腕候補に出会えるとは限りません。
採用経路を増やす前に、社長が抱えている仕事と、入社後に渡せる権限を整理することが先です。
社長業務を分解し、必須経験を絞ってから段階的に仕事を渡す採用設計
右腕採用は、万能な人を探すより、社長の仕事を段階的に引き継げる人を採る設計に変えると進めやすくなります。
まず、社長が現在行っている業務を書き出します。今回のような会社であれば、「施工管理」「顧客対応」「営業」「社内調整」のどこに時間を使っているかを分けます。
そのうえで、業務を次の3つに整理します。
- 入社直後から任せたい仕事
- 社長と一緒なら任せられる仕事
- 当面は社長が持つ仕事
たとえば、最初から営業開拓まで求めるのではなく、まず既存現場の段取りと既存顧客への対応を任せる。その後、工事の判断範囲を広げ、将来的に営業にも関わってもらう。こうすれば、採用時点で求める経験を絞れます。
必須経験は一つか二つに絞る
監督、職人、営業のすべてを必須にすると、採用対象が狭くなります。どの経験が最も早く社長の負担軽減につながるかで優先順位をつけます。
今回の会社であれば、現場を理解しながら顧客と会話できることが中心になりそうです。職人経験者に管理と顧客対応を教えるのか。施工管理経験者に自社の工事領域を覚えてもらうのか。この選択で、探す人材が変わります。
採用要件は「全部できる人」ではなく、「何をすでに持ち、何を入社後に覚えてもらうか」で決めます。
求人票では一日の動きと任せる範囲を見せる
「現場管理募集」だけでは、他社との違いが伝わりません。求人票では、どのような顧客や現場を担当し、社長から何を引き継いでほしいのかを具体的にします。
役職名を立派に見せるよりも、「既存顧客との調整を担う」「職人と顧客の間に立つ」「将来は社長に代わって現場を動かす」と示すほうが、対象者は仕事を想像しやすくなります。
面接では経歴の数より判断の仕方を見る
右腕候補に必要な「臨機応変さ」は、履歴書の職種名だけでは判断しにくいものです。面接では、過去の具体的な行動を確認します。
- 現場で予定外の事態が起きたとき、誰に何を確認したか
- 顧客と職人の要望が食い違ったとき、どう調整したか
- 自分で判断した範囲と、上司へ相談した範囲はどこか
- 現場経験を顧客対応や提案にどう生かしたか
年齢や肩書だけで判断せず、社長が求める動き方を実際にしてきたかを見ます。
見極めるべきなのは経験の多さだけでなく、現場情報を整理し、周囲と調整して判断した経験です。
入社後は小さな権限から渡す
右腕人材を採用できても、すべての判断を社長が握ったままでは育ちません。一方、入社直後から全面的に任せるのも現実的ではありません。
最初は社長との同行や共同対応から始めます。次に、担当現場や既存顧客を限定して任せます。報告する条件と、自分で判断してよい範囲を決めます。その結果を振り返りながら、徐々に担当範囲を広げます。
採用と権限移譲は別々ではありません。「どんな人を採るか」と同時に、「入社後に何を、どの順番で任せるか」まで決めておくことが右腕採用の土台になります。
まとめ
職人が在籍していても、施工管理、顧客対応、営業判断が社長に集中していると、受注を増やすほど社長が忙しくなります。
必要なのは、最初から社長の分身として完成している人ではありません。社長の仕事を分解し、優先して任せたい役割を決め、その役割を段階的に引き継げる人です。
整理する順番はシンプルです。
- 社長の業務を棚卸しする
- 最初に手放したい業務を決める
- 必須経験と入社後に教える経験を分ける
- 面接では過去の判断と調整の経験を見る
- 入社後に渡す権限を段階化する
右腕採用は、採用媒体を選ぶところからではなく、社長の仕事を誰にどう渡すかを決めるところから始まります。
自社に合う右腕の役割から整理したい方へ
「施工管理者を採るべきか、営業もできる人を探すべきか」「求める条件が多くなり、求人票に落とし込めない」といった段階でも、整理できることはあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。右腕候補に任せたい業務の棚卸しや採用要件、入社後の体制づくりについても、会社の状況に合わせて一緒に考えます。
まだ採用方針が固まっていなくても問題ありません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、「うちの場合は何から整理すべきか」という段階から気軽にお話しください。