個人宅の手すり工事で余った専用材料を、半年から1年で見直している工事会社
埼玉県を中心に、東京都内でも新築・リフォーム工事を手がける、ある工事会社があります。介護保険を利用した個人宅の手すり工事も多く、工事後に残った手すり材料の扱いが継続的な課題になっていました。
事務担当者の言葉が、この悩みを端的に表しています。
「基本的には在庫を持たないようにしています。余ったものは、半年から1年経っても使わなければ売りに出しています」
在庫を増やさない方針は明確です。一方、手すり材料は使い手が限られるため、売りに出せばすぐ動くとは限りません。
「手すり工事をやっている建築会社は、そう多くありません。滞留在庫をどうやってはけさせるかが、常に課題です」
一般的な内装材やシーリング材などとは異なり、用途が限られる建材は買い手を探しにくいものです。その結果、売却を考えながらも倉庫に残り続け、最終的に処分費用が発生することがあります。
滞留在庫を減らすには、「余ったら売る」だけでなく、「いつまで保管し、期限を過ぎたら何に切り替えるか」を先に決めておくことが重要です。
「いつか使うかもしれない」が積み重なり、売却も廃棄も遅れる状態
余剰建材が滞留する大きな要因は、保管するか処分するかの判断が曖昧なまま、時間だけが過ぎることです。
現場では、同じ仕様の工事が入れば使える可能性があります。そのため、余った直後に捨てる判断はしにくくなります。しかし、保管期間を決めていなければ、半年、1年と経過しても「次の現場で使うかもしれない」という扱いが続きます。
この会社では、使わない建材を売りに出すほか、売れにくいものを知人経由で引き取ってもらうこともありました。
「売れないものでも無料で引き取ってもらえることがあります。ごみ代がかからないのでお願いしています」
売却できなくても、無償で引き取ってもらえれば廃棄費用を抑えられます。ただし、売却先や引取先を探し始める時期が遅いと、その間は保管場所を使い続けます。
問題は余り材が出ること自体ではなく、余った後の判定期限と出口が決まっていないことです。
建材ごとの金額が小さく見えても、倉庫全体では無視しにくい量になります。保管場所が埋まれば、必要な材料を探しにくくなり、新しく入荷した資材を置く場所にも影響します。売却や無償譲渡の機会を逃せば、最後は廃棄費用だけが残ることもあります。
用途が限られる手すり材料ほど、保管価値を感覚だけで判断しやすい構造
手すり材料のような専門性の高い建材は、一般的な建材よりも出口が狭くなります。同じ手すり工事を行う会社や、バリアフリー工事に取り組む事業者でなければ、必要とされにくいためです。
一方、自社では同種の工事を続けているため、再利用の可能性を完全には否定できません。この「使う可能性はあるが、いつ使うかは決まっていない」という状態が、継続保管につながります。
また、在庫を見ている事務側と、実際の使用可能性を判断できる現場側では、持っている情報が異なります。事務担当者からも「ほかの業者の状況は、事務なので分からない」という言葉がありました。
事務側だけでは、次の現場で使う可能性を判断しにくいものです。反対に、現場側だけでは保管期間や倉庫全体の在庫量、売却・引取状況まで追い切れません。
現場は「使えるか」を判断し、事務は「いつから、どれだけ保管しているか」と「どの出口を試したか」を管理する。この役割分担がないと、在庫判断は止まりやすくなります。
複数の社員が同じ在庫情報や売却用アカウントを扱う場合も、担当者を曖昧にしないことが大切です。全員が見られる状態と、誰かが処理を進める状態は別だからです。
「半年・1年」の期限を起点に、継続保管・売却・無償譲渡・廃棄へ振り分ける運用
余剰建材の管理は、工事後に余った時点で保管期限を設定し、期限が来たら出口を選び直す形にすると進めやすくなります。
この会社が実践していた「半年から1年使わなければ売りに出す」という考え方は、分かりやすい起点になります。ただし、すべての建材を同じ期間で扱うのではなく、次の使用見込みと引取需要を確認しながら判断することが必要です。
1.余った時点で最低限の情報を残す
余り材が倉庫に戻ったときに、少なくとも次の情報を記録します。
- 建材の種類と数量
- 余った日、または倉庫へ戻した日
- 保管場所
- 写真
- 次に使う可能性がある工事
- 見直し予定日
売却時にも写真や数量の情報が必要になるため、入庫時に記録しておくと、後から出品準備をやり直す手間を抑えられます。
余り材を置くだけで終わらせず、「見直し予定日」まで登録して初めて在庫管理が完了した状態にします。
2.半年を目安に現場と事務で使用見込みを確認する
見直し時には、事務だけで処分を決めるのではなく、現場へ使用予定を確認します。「使えるか」ではなく、「具体的に使う見込みがあるか」を確認するのがポイントです。
判断は、次の4つに分けると整理しやすくなります。
- 継続保管:同種の工事で使う見込みがあり、保管する理由を説明できる
- 売却:自社での使用見込みは低いが、同業者や関連業者の需要が考えられる
- 無償譲渡:売却は難しくても、引き取って使える相手がいる
- 廃棄:自社で使う見込みがなく、売却先・引取先も見つからない
「まだ使える」という理由だけでは、継続保管に戻さないことが大切です。継続する場合も、次の見直し日を改めて設定します。
3.売却先は、建材との相性と商圏で考える
用途が限られる建材は、幅広い相手へ見せるより、使う可能性のある業者へ届くかどうかが重要です。手すり材料であれば、同様の住宅改修やバリアフリー工事を行う事業者が候補になります。
建材の売買サービスなどを利用する場合も、登録者数だけで判断するのではなく、次の点を確認します。
- 自社の施工エリアに利用者がいるか
- 同じ工事領域の会社が参加しているか
- 直接引き取りと配送のどちらに対応できるか
- 売れなかった場合に別の方法へ切り替えられるか
専門性の高い建材は、「売りに出したか」よりも、「必要とする業者に届く場所へ出したか」で結果が変わります。
4.1年経過時には出口を再判定する
半年時点で継続保管とした建材も、1年経過時には改めて判断します。その間に具体的な使用予定が生まれていなければ、売却、無償譲渡、廃棄へ進める時期です。
売却価格だけでなく、保管を続ける負担や、処分した場合の費用も含めて考えます。高く売れるまで待つことが、必ずしも会社全体にとって有利とは限りません。
売れない場合でも、無償で引き取る相手がいれば、廃棄費用をかけずに倉庫を空けられます。売却だけを唯一の出口にせず、段階的に切り替えることが現実的です。
5.棚卸しの担当と更新方法を決める
在庫情報を複数人で共有する場合は、次の役割を決めておきます。
- 現場:使用可能性と具体的な使用予定を回答する
- 事務:保管開始日、数量、写真、売却・譲渡状況を更新する
- 責任者:継続保管か処分かを最終判断する
売却用のアカウントを複数人で利用できても、更新担当が決まっていなければ、問い合わせ対応や在庫数量の修正が止まりやすくなります。
現場・事務・責任者の役割と、半年・1年の確認時期を固定することで、棚卸しを大掃除のときだけの作業にしない運用ができます。
まとめ
工事後に余った建材は、すぐに不要品になるわけではありません。次の現場で使える可能性があるからこそ、保管する判断にも合理性があります。
ただし、「いつか使う」という可能性だけで期限なく残すと、倉庫を圧迫し、売却や無償譲渡の判断も遅れます。
まずは、余った日と見直し予定日を記録し、半年後に使用見込みを確認するところから始められます。さらに1年経過時には、継続保管、売却、無償譲渡、廃棄のいずれかへ改めて振り分けます。
滞留在庫を増やさない要点は、処分方法を一つに絞ることではなく、保管期限と次の出口をあらかじめ決めておくことです。
現場が使用見込みを伝え、事務が期間と数量を管理し、責任者が最終判断する形をつくれば、専門性の高い建材でも扱いやすくなります。
自社に合う在庫基準と棚卸し方法を整理するために
余剰建材の適切な保管期間は、工事内容や案件の頻度、倉庫の広さ、売却先の有無によって変わります。「半年で見直すべきか」「売却と無償譲渡をどう使い分けるか」など、自社だけでは決めにくい部分もあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場運用、原価管理、組織体制、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。余剰建材の管理についても、在庫の見える化だけでなく、現場と事務が無理なく続けられる運用から一緒に整理できます。
「うちの場合は、何カ月を基準にすればよいか」「何から棚卸しすべきか分からない」という段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、社内整理のきっかけとして気軽にお声がけください。