公共工事の橋梁塗装を担い、社長が見積もりと営業を兼ねる十数名の会社
仕事を増やすことより先に、見積もりを作る社長の負担を軽くしたい。 神奈川県にある、十数名規模の専門工事会社から寄せられた相談です。公共工事の橋梁塗装を中心に手がけています。
社員は職人や現場管理が中心です。事務と営業は社長が一人で担い、自身も時折、現場に出ています。仕事や協力会社の確保には、現時点で大きく困っていません。次の成長に向けて、社長に集まっている作業を整理したい段階です。
見積もりには、すでにExcelを使っています。
「数字を入れていけば、ある程度、見積もりの金額は出るんです」
何も仕組みがないわけではありません。ただ、工法ごとにシートをその都度作っています。計算はできても、案件ごとの資料作成には手がかかる。その作業が社長に残っています。
なお、この会社は自社で公共工事に入札しているわけではありません。入札で工事を受注した元請に対し、施工会社として見積もりを出す立場です。 効率化したいのは、入札手続きではなく、施工の提案に使う見積書と工程表の作成です。
受注につながらない見積依頼にも、シートを作る手間がかかる状況
見積依頼が来るたびに作成の手間がかかり、受注につながらなかったときも、その負担は社長に残ります。 相談の中心にあったのは、この悩みでした。
「見積もり依頼が来るのは嬉しいんですけど、結構おっくうになるんですよ」
依頼があること自体はありがたい。けれども、すべてが工事につながるわけではありません。社長からは「空振りの見積もりも多い」という言葉も出ていました。
施工会社が出した金額に、間に入る会社の費用が上乗せされる。そうなると、価格面で難しいと感じる案件もあります。それでも、見積もりを作る作業は発生します。
求めているのは、依頼を断る方法ではありません。
「カロリーを消費しない見積もりができるような、アプリなのかソフトなのか。それがあれば、どんどん出せるんです」
受注の見込みを完全に読み切るより、一件ごとの作成負担を小さくする。 そのほうが、この会社の意向に合っています。ただし、楽に作ることと、金額を大まかに出すことは別です。計算の根拠をそろえたうえで、繰り返し作業を減らす必要があります。
面積と出来高で計算できる部分が、工法ごとのシートに分かれている状態
見積もりと工程の計算に使う情報は社長の中にありますが、それを共通して使える形には整理しきれていません。 ここに、効率化の余地が見えます。
社長は、橋梁塗装の計算についてこう説明していました。
「施工する平米数と、一日にどれくらいの出来高か。その数字を入れれば、大体は出てくるんです」
工法があり、施工面積があります。平米単価にも一定の相場感があります。一日当たりの施工量も、工程を考えるための目安として持っています。
つまり、毎回すべてをゼロから考えているわけではありません。一方で、工法ごとにシートを作るため、共通して使える計算と、案件ごとに変える条件が分かれていない状態です。
この負担を減らしたい理由には、将来の営業の構想もあります。
公開された落札結果や類似工事の情報を確認する。過去に落札した会社や、今後の元請候補に対して、自社ならどの程度の金額と工程で施工できるかを示す。そんな提案を考えています。
「前に受注された案件なら、うちはこの見積もりで、これくらいの工程で終わらせられます。そういうものを出せれば、より信憑性が増すと思うんです」
これは、まだ実行効果が確認された取り組みではありません。ただ、目指す使い方は明確です。見積書と工程表を効率よく作り、元請候補が施工を任せるか検討しやすい材料にしたいのです。
既存のExcelを起点に、見積金額と工程の計算条件をそろえる進め方
最初に決めたいのはアプリの種類ではなく、何を入力すれば、どの金額と工程が出るのかです。 すでに使っているExcelを起点にすると、必要な仕組みを整理しやすくなります。
工法ごとの違いと、共通して使う計算を分ける
まずは、現在使っている工法別のシートを見比べます。確認したいのは、次の情報です。
- 工法ごとに使う単価
- 案件ごとの施工面積
- 工法ごとの一日当たりの施工量
- 見積金額と工程を出すための計算式
- 単純計算のままでは提出できず、人が確認・調整する条件
基本となる計算の出発点は、施工面積と平米単価による金額、一日当たりの施工量から求める所要日数です。ただし、それだけで提出用の見積書や工程表が完成すると決めつける必要はありません。
共通化するのは計算できる部分です。案件ごとの判断まで、無理に一つの式に押し込めないことが大切です。 現在のシートで社長が調整している箇所があれば、その理由も一緒に確認します。例外として残す条件は、実際の見積もりから拾っていく進め方がよさそうです。
同じ入力情報から、金額と工程を出せる形にする
見積書と工程表は、元請候補に一緒に示したい資料です。そのため、別々の仕組みを考えるより、工法・施工面積・単価・一日当たりの施工量を共通の入力情報として扱う方向が合っています。
目指すのは、工法を選び、案件の数字を入力すると、金額と工程のたたき台が出る形です。社長が毎回シートを作り直すのではなく、出てきた内容の確認に時間を使える状態を考えます。
その際は、自動で出た数字をそのまま提出するのではなく、適用した工法・単価・施工量と、例外条件の確認を人に残します。 速く作れる仕組みと、安心して提出できる確認は、セットで考えたいところです。
Excelの改善で足りるかを確かめてから、専用ツールを考える
既存のExcelで、工法の切り替えと共通入力ができるなら、まずはその改善から始める選択肢があります。すでに金額を出せているため、使える部分を残せるからです。
一方で、工法を変えるたびにシートの作り直しが残る。見積書と工程表への反映にも手間が残る。そうした場合は、専用ツール化を検討する理由になります。
判断軸は、機能の多さではありません。
「作り直しがどこまで減るか」「計算根拠を確認できるか」「社長以外でも扱えるか」で比べると、必要な仕組みが見えやすくなります。
実際に使っている見積もりを、新しい仕組みでも計算してみる。その結果を従来の金額や工程と照らし合わせる。違いがあれば、入力条件なのか、計算式なのか、人の調整なのかを確かめます。こうして確認範囲を絞れば、最初からすべてを専用化する必要もありません。
提案資料としての使い方までそろえる
公開された落札結果は、元請候補や類似工事を探す手がかりになります。ただし、過去の工事をもとにした試算と、実際に依頼された案件への見積もりは分けて扱いたいところです。
類似工事をもとに提案するなら、どの工法・施工面積・単価・施工量を前提にした金額と工程なのかを添えます。相手が、提案の条件を読み取れるようにするためです。
資料作成の効率化は、見積もりを大量に送るためだけでなく、自社の施工条件を具体的に伝えるために使えます。 そこまでつながると、社長が思い描く提案を支える仕組みになります。
まとめ
受注につながらない見積もりの負担を減らすには、工法ごとに作り直している作業と、社長が判断すべき部分を分けることが出発点です。
この会社には、すでにExcelの見積もりがありました。平米単価や一日当たりの施工量の目安もあります。足りないのは、新しいソフトそのものというより、それらを繰り返し使える形にそろえることです。
まずは工法・施工面積・単価・施工量を整理する。同じ情報から見積金額と工程を出せるか確かめる。そのうえで、Excelの改善で足りるか、専用ツールが必要かを判断します。
「資料をすごく簡単に作れれば、いくらでも営業に行くんです」
その言葉を支えるのは、すべてを自動化する大がかりな仕組みとは限りません。繰り返す計算は仕組みに任せ、例外と提出判断は人が確認する。 その切り分けが、見積もりの手間を減らす次の一手になります。
見積書と工程表の、どこから共通化するかの整理
「今のExcelを直せば足りるのか」という段階から、整理を始められます。 最初から、作りたいアプリや必要な機能が決まっている必要はありません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を現場の業務とつなげて整理し、仕組みづくりから実行まで支援しています。見積書と工程表の作成でも、現在の計算方法や社長に残っている作業を確認し、デジタル活用と人による確認の分担を一緒に考えます。
「うちの工法でも共通化できるのか」「何から整理すればよいかわからない」といった段階でも、ご相談いただけます。無理にサービスの導入をお勧めすることはありません。まずは、今使っている見積もりの仕組みを整理するところからお話しください。