一人経営から自社の電気工事班づくりへ踏み出した佐賀県の専門工事会社
佐賀県で電気工事を手がける、10名未満の専門工事会社があります。創業から数年間は、社長一人と協力会社を中心に工事を回してきましたが、今後の受注に対応するため、自社社員による工事班をつくろうと採用を始めました。
「そろそろ社員を入れないといけないと思ったんです。でも、自分が知っている採用は昔の紙媒体くらいでした」
そこで、求人検索サービス、複数の求人媒体、採用サイト、スマートフォン向けの画像、地域や属性を絞ったWeb広告など、提案された施策を一つずつ試してきました。採用サイトも新しく整え、実際に数名の採用にはつながっています。
一方で、採用に投じた予算は決して小さくありません。社長自身も「いろいろな会社に聞いて、とりあえず入れてみた」と振り返ります。
現在は電気工事の経験者だけでなく、未経験者も採用対象です。ベテラン職人が教えられる体制があるためです。施工管理を担う担当者も並行して探していますが、こちらは採用難度が高く、知人からの紹介や業界内のつながりも含めて試行錯誤しています。
この会社の現在地は、採用活動をしていない状態ではなく、複数の手段を試したものの、どの施策を残すべきか判断しにくい状態です。
求人媒体を増やすほど費用対効果の判断が難しくなる採用活動
大きな課題は、媒体の数ではありません。「誰を、どこから、何を伝えて採用するか」が固まらないまま、手段が増えていることです。
この会社では、採用したい人材として、少なくとも次の層が混在しています。
- 即戦力となる電気工事の経験者
- ベテラン職人が育成できる未経験者
- 将来の工事班を支える若手人材
- 現場管理を任せられる施工管理担当者
これらは、同じ「建設業の採用」であっても、探す場所も、仕事選びで重視する条件も異なります。
未経験者であれば、仕事内容のわかりやすさや教育環境が応募判断に影響しやすくなります。一方、経験者や施工管理担当者であれば、担当できる現場、役割、裁量、処遇などをより具体的に確認する可能性があります。
ところが、採用対象が整理されていないと、一つの求人原稿に「未経験歓迎」「経験者優遇」「施工管理も募集」と複数のメッセージが並びます。結果として、誰に向けた求人なのかが伝わりにくくなります。
「人さえ入れば、紹介でも何でも社員が欲しかったんです」
この言葉は、人手が必要な会社ほど自然に出てくるものです。ただ、媒体が増えた現在は、「とにかく人を集める」という方針だけでは、各施策の良し悪しを比較できません。
採用できない原因を媒体の不足と捉えると施策は増え続けますが、採用戦略の不足と捉えると、残す施策と止める施策を判断できるようになります。
紙媒体の感覚からWeb採用へ移るなかで起きた手段先行の積み重ね
背景には、採用手段が短期間で増え、社内だけでは全体像を把握しにくくなった事情があります。
以前は紙媒体や限られた求人サイトが中心でしたが、現在は求人検索サービス、求人媒体、採用サイト、検索広告、SNS広告、動画など、候補となる施策が細分化されています。それぞれの提供会社から、自社サービスの特徴や新しい手法を説明されるため、比較の基準がないままでは「まず試してみる」という判断になりがちです。
この会社でも、次のように手段が広がっていきました。
「ホームページが必要だと言われて、次はスマートフォンに合った画像が必要だと。それから、地域や年齢層を絞って上のほうに表示する仕組みもあると聞きました」
一つひとつの提案が間違っているわけではありません。採用サイトもWeb広告も、条件が合えば有効です。ただし、採用したい人材と経路が合っていなければ、閲覧数が増えても応募や入社にはつながりません。
また、採用サイトは求職者に会社を理解してもらう受け皿にはなりますが、サイトをつくるだけで求職者が訪れるとは限りません。求人媒体や広告から採用サイトへ誘導する場合も、誰を呼び込み、どの情報を見せ、どの求人へ応募してもらうかまでつなげて考える必要があります。
さらに、応募経路ごとの結果を記録していなければ、「採用できた人がどこから来たのか」「応募は多いが面接につながらない媒体はどれか」「入社後に定着している人はどの経路から来たのか」がわかりません。
媒体が多すぎること自体よりも、媒体を同じ指標で比較できていないことが、費用対効果を見えにくくしています。
ターゲット・採用経路・訴求内容を定めて共通指標で媒体を絞る進め方
最初に行いたいのは、新しい求人媒体を探すことではなく、採用戦略を一枚に整理することです。順番は、採用ターゲット、採用経路、訴求内容、数値検証の4段階です。
1.職種ごとに採用ターゲットを分ける
まず、電気工事の経験者、未経験者、施工管理担当者を別の採用枠として整理します。少なくとも、次の項目を職種ごとに書き出します。
- 必要人数と採用したい時期
- 必要な経験や資格
- 入社後に任せる仕事
- 年齢層のイメージ
- 未経験から育成できる範囲
- 入社後半年から1年で期待する状態
この会社の場合、「先に電気工事班をつくりたい」という優先順位があります。施工管理担当者も必要ですが、同じ予算と原稿で同時に集めるのではなく、採用枠を分けたほうが判断しやすくなります。
採用人数だけでなく、どの職種を先に採るかを決めることで、媒体選定の基準ができます。
2.求職者がいる採用経路を職種別に仮説化する
次に、それぞれの人材がどこで仕事を探しているかを考えます。
未経験者であれば、スマートフォンで求人検索サービスを使い、複数社を比較している可能性があります。経験者や施工管理担当者であれば、求人媒体だけでなく、知人紹介、現場でのつながり、人材紹介や派遣会社などが候補になります。
ここで大切なのは、一つの媒体ですべての職種を採ろうとしないことです。
例えば、次のように経路を分けて試します。
- 未経験の電気工事スタッフ:求人検索サービスと採用サイト
- 経験者の電気工事スタッフ:業界向け求人媒体と社員・協力会社からの紹介
- 施工管理担当者:知人紹介、人材紹介、業界内のつながり
最初から正解を当てる必要はありません。職種ごとに「この人材はこの経路にいるのではないか」という仮説を置き、結果を見て修正できる状態をつくることが重要です。
3.自社の訴求内容を求職者別に組み替える
媒体を決めた後は、何を伝えるかを整理します。待遇だけでなく、自社で働く具体像が伝わる内容が必要です。
この会社には、すでに訴求材料があります。
- 未経験者も受け入れていること
- ベテラン職人が仕事を教えられること
- 自社の工事班をこれからつくる段階であること
- 経験を積みながら役割を広げられること
ただし、これらをすべて同じ順番で伝える必要はありません。未経験者には教育環境や仕事内容を丁寧に示し、経験者には担当する工事や期待する役割を具体的に伝えるほうが、応募後の認識差を抑えやすくなります。
「来るものはとりあえず」という入口から一歩進み、自社が採りたい人にとって、入社する理由になる情報は何かを整理します。社員へのインタビューや実際の仕事内容をもとに、求人原稿、採用サイト、画像や動画の内容を揃えると、媒体をまたいでもメッセージがぶれにくくなります。
4.応募数から定着率まで同じ指標で比較する
媒体の費用対効果は、応募数だけでは判断できません。媒体ごとに、最低限次の数字を毎月記録します。
- 応募数
- 面接率:応募者のうち面接を実施した割合
- 採用率:応募者のうち入社に至った割合
- 定着率:採用者のうち一定期間在籍している割合
採用費も合わせて記録すれば、応募単価や採用単価も比較できます。紹介採用の場合は広告費が発生しなくても、誰からの紹介かを記録しておきます。
応募数が多くても、面接率や採用率が低ければ、採用ターゲットと求人内容が合っていない可能性があります。反対に、応募数が少なくても、採用率と定着率が高い媒体は残す価値があります。
評価は一つの数字だけで決めず、次の順番で確認します。
- 応募が来ているか
- 求める人材から応募が来ているか
- 面接まで進んでいるか
- 入社につながっているか
- 入社後に定着しているか
媒体を増やす前に、応募数・面接率・採用率・定着率を並べると、続ける施策、修正する施策、止める施策が見えるようになります。
まとめ
求人媒体、採用サイト、Web広告は、採用戦略を実行するための手段です。手段から考え始めると、提案を受けるたびに施策が増え、何が効いたのかを判断しにくくなります。
今回のように、電気工事の経験者、未経験者、施工管理担当者を同時に探している場合は、まず採用枠を分けることが出発点です。そのうえで、求職者がいる経路を仮説化し、相手に合わせて訴求内容を組み替えます。
実行後は、媒体ごとの応募数だけでなく、面接率、採用率、定着率まで確認します。
採用の費用対効果を高める第一歩は、媒体を追加することではなく、誰をどこから採り、何を伝え、どの数字で評価するかを決めることです。
自社に合う採用経路を一度整理したい方へ
「いろいろ試したが、どの媒体を残せばよいかわからない」「経験者と未経験者で採用方法を分けるべきか迷っている」という段階では、これまでの施策と結果を一度並べるだけでも、次の打ち手が見えやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用ターゲット、採用経路、求人の訴求内容を整理し、採用活動の実行まで支援しています。採用だけでなく、現場や組織の状況も踏まえ、ものづくりに集中できる体制づくりを一緒に考えます。
まだ課題が明確になっておらず、「うちの場合は何から整理すべきか」という段階でも構いません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、現在取り組んでいる媒体や採用状況から気軽にお聞かせください。