工事後の余剰資材が35坪ほどの倉庫を埋め、使われないまま残っている状態
ある建設会社の経営者から、「35坪くらいある倉庫が、余った資材でパンパンなんです」という話がありました。現場で使い切れなかった建築資材を持ち帰り、いつか別の工事で使えるかもしれないと保管しているうちに、倉庫が埋まってしまったそうです。
一つひとつは、まだ使える資材です。捨てるのは惜しいため、とりあえず倉庫へ運びます。しかし、次に使える現場が見つからなければ、そのまま長期間残ります。最後には「置いておけないから処分する」という判断になり、廃棄費まで発生します。
余剰資材の問題は、資材が余ること自体よりも、余った後の確認・記録・判断が決まっていないことにあります。
工事のたびに一定量の資材が残る会社であれば、一度の廃棄額だけでなく、倉庫のスペースや整理に使う時間も含めて考える必要があります。余剰資材は、帳簿上の在庫というより、現場と倉庫の間に滞留している資産として捉えたほうが整理しやすくなります。
まだ使える資材でも、内容と数量が分からなければ売却にも再利用にも回せない状況
倉庫に資材が残っていても、何が、どれだけ、どの状態で保管されているか分からなければ、次の現場では使えません。必要な資材を探すより、新しく仕入れたほうが早いという判断にもなりやすくなります。
中古資材として売却する場合も同様です。購入を検討する業者は、自社の現場に合うかどうかを確認しなければなりません。資材の写真や数量、寸法、保管状態が分からなければ、購入の判断ができません。
「購入する業者が、自分たちの現場に合わせて取りに来てくれるなら使いやすい」という声もありました。裏を返すと、資材の情報だけでなく、誰が、いつ、どこで受け取るかまで決まらなければ、売買は完了しないということです。
また、売却価格だけを見てしまうと、実際の負担を見落とします。たとえば、売却できても、出品や連絡、積み込み、配送に時間がかかれば、手元に残る金額は小さくなります。一方、価格が低くても購入業者が引き取りに来てくれるなら、廃棄費や運搬の負担を減らせる可能性があります。
「いくらで売れるか」ではなく、「保管や受け渡しにかかる負担を差し引いて、会社に何が残るか」で判断することが大切です。
「いつか使う」が積み重なり、売却期限のない資材が倉庫に滞留する構造
余剰資材が倉庫にたまる背景には、その場では保管する判断が合理的に見えることがあります。まだ使える資材を工事終了のたびに廃棄するのは、現場としても経営としても避けたいところです。
ところが、持ち帰った後の担当者や確認時期が決まっていないと、資材は「保管中」のまま残り続けます。売却できるかを調べる期限も、再利用する現場を探す期限もないためです。
現場では「捨ててしまっている資材もある」という話が出ていました。その一方で、倉庫には使われない資材が積み上がっています。この二つは別の問題に見えますが、根は同じです。余った時点で資材の情報を残し、再利用・売却・廃棄を判断する流れが整っていません。
売却についても、仕入れ値以上で売ることを前提にすると動きにくくなります。余剰資材は、新品の販売事業とは異なります。必要とする業者が限られ、保管場所や受け渡し時期にも条件があるためです。
余剰資材の現金化は、仕入れ値を回収する取り組みではなく、廃棄費と保管負担を減らしながら残存価値を回収する取り組みです。
この捉え方に変えると、値付けの基準も変わります。高く売れるまで保管するのではなく、保管期間と売却の可能性を見ながら、会社全体の負担が小さくなる出口を選びやすくなります。
棚卸しから受け渡しまでを一つの流れにし、保管・売却・廃棄の期限を決める方法
最初に行いたいのは、倉庫にある資材をすべて売りに出すことではありません。まずは棚卸しを行い、再利用や売却の可能性がある資材を見分けます。
1.倉庫の資材を棚卸しする
資材を置いている場所ごとに確認し、少なくとも次の情報を記録します。
- 資材の名称
- メーカーや型番など、確認できる仕様
- 数量や寸法
- 全体と細部の写真
- 未使用、開封済みなどの状態
- 汚れや傷みを含む保管状態
- 保管場所
最初から完璧な在庫台帳を作ろうとすると、作業が止まりやすくなります。まずは写真と数量を残し、何があるかを社内で確認できる状態にすることが先です。
棚卸しの目的は在庫を数えることではなく、再利用・売却・廃棄の判断ができる情報をそろえることです。
2.再利用できる資材を先に分ける
棚卸し後は、自社で使う可能性がある資材と、今後も使う見込みが薄い資材を分けます。近い時期に使える現場があるなら、社内での再利用が優先です。
ただし、「いつか使うかもしれない」だけでは保管を続けないことが重要です。使う予定の現場や確認期限まで決めておき、期限を過ぎたら売却候補へ移します。
3.売却に必要な情報を一つにまとめる
中古資材として売却する場合は、購入業者が自社の現場で使えるか判断できる情報が必要です。写真、数量、仕様、保管状態に加えて、受け渡し場所と希望時期を明確にします。
傷や汚れがある場合も、隠さず写真と文章で共有したほうが、その後のやり取りが進みやすくなります。購入希望者とはテキストで条件を確認し、認識の違いが残らないようにします。
4.配送か引き取りかを先に決める
資材の売買では、受け渡し方法が大きな判断材料になります。主な方法は、売り手側が配送するか、購入業者に引き取りに来てもらうかです。
配送費や積み込みの負担が大きい資材は、販売価格だけでは採算を判断できません。購入業者による引き取りが可能なら、売却価格が多少低くても、会社全体では負担を抑えられる場合があります。
値付けと受け渡し方法は別々に考えず、積み込み・配送・連絡にかかる負担まで合わせて決めます。
5.売却期限を設定し、保管を長期化させない
出品しただけで終わらせず、「いつまで売れなければ判断を見直すか」を決めます。売れない資材を無期限に保管すると、倉庫を空けるという当初の目的を達成できません。
判断するときは、次の四つを並べて比較すると整理しやすくなります。
- 売却によって手元に残る金額
- 保管を続ける場所と管理の負担
- 配送、引き取り、積み込みにかかる負担
- 売れなかった場合の廃棄費と売却までの期間
保管を続ける、価格を見直して売却する、廃棄する。この三つのうち、会社に残る負担が最も小さい方法を選びます。
売却価格、保管費、廃棄費、受け渡しの負担、売却までの期間を同じ表で比べると、余剰資材を残すべきか手放すべきか判断しやすくなります。
まとめ
工事後に余った建築資材は、まだ使えるからこそ判断が後回しになりがちです。しかし、倉庫に運び込んだまま内容が分からなくなると、再利用も売却も難しくなり、最後は廃棄へ向かいます。
まずは倉庫を棚卸しし、写真、数量、仕様、保管状態を記録します。そのうえで、自社で再利用する資材、売却する資材、廃棄を検討する資材に分けます。売却する場合は、購入業者とのやり取りだけでなく、配送か引き取りか、いつまで保管するかまで決めておくことが欠かせません。
余剰資材を現金化する仕組みは、売上をつくるだけのものではありません。倉庫を空け、廃棄費を抑え、使える資材を次の現場へつなぐための業務整理です。
一度にすべてを整える必要はありません。まずは倉庫の一角から確認し、余った資材を記録してから保管する流れをつくるだけでも、次の判断は変わります。
余剰資材の棚卸しと現金化の流れを自社に合わせて整理したい方へ
余剰資材の扱いは、倉庫の広さや資材の種類、現場の範囲、配送手段によって適した方法が変わります。「自社の場合は何から棚卸しすればよいか」「売却と廃棄の基準をどう決めるか」という段階からでも整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、原価、組織、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。余剰資材の在庫記録や判断基準づくりについても、無理な営業はいたしませんので、自社に合う進め方を考えたいときにお声がけください。