国土交通省は、令和7年度における宅地建物取引業法の施行状況調査結果を公表しました。宅地建物取引業者数は令和7年度末時点で133,727業者となり、12年連続で増加しました。一方で、監督処分件数と行政指導件数も増加しています。

建設業そのものの制度改正ではありませんが、分譲、売買仲介、用地取得、不動産管理などを行う建設会社にとっては、宅建業の法令管理を見直すきっかけになる発表です。

公表内容

令和7年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果

公表日

令和8年10月2日

宅地建物取引業者数

133,727業者

業者数の動向

12年連続で増加

監督処分件数

163件(前年度比16件増、10.9%増)

行政指導件数

768件(前年度比176件増、29.7%増)

宅地建物取引士の総登録者数

1,243,738人

建設会社に関係するポイントは「不動産事業の管理水準」です

今回の発表は、宅地建物取引業者数、監督処分、行政指導、宅地建物取引士登録者数をまとめたものです。

中小建設業にとって見るべき点は、単に「宅建業者が増えている」という統計ではありません。重要なのは、宅建業に関わる会社が増える中で、行政指導や監督処分も増えているという点です。

建設会社の中には、次のような形で宅建業と接点を持つ会社があります。

  • 自社施工物件の販売を行う
  • 土地や建物の売買仲介を行う
  • 分譲住宅や建売住宅を扱う
  • 不動産会社をグループ内に持つ
  • 用地取得、開発、管理まで一体で行う

こうした会社では、建設業許可や労務安全だけでなく、宅建業法上の管理も経営管理の一部になります。

監督処分・行政指導は増加、特に「日常業務の基本」が問われます

令和7年度の監督処分件数は合計163件で、前年度比16件増加しました。内訳は、免許取消85件、業務停止36件、指示42件です。また、行政指導は768件で、前年度比176件増加しています。

行政指導は、宅建業法第71条に基づき文書で行われた指導・助言・勧告です。処分に至る前の段階も含まれますが、行政から見て改善が必要な実務が一定数あるということです。

PDF資料では、監督処分における主な違反として、専任の宅地建物取引士の設置、媒介契約、重要事項の説明等、取引の公正を害する行為などが挙げられています。

これらは特別な論点というより、日々の業務の基本です。だからこそ、経営側としては次のように捉える必要があります。

宅建業のリスクは、現場で大きな事故が起きた時だけ表面化するものではなく、契約書、説明、資格者配置、記録管理といった日常業務の積み重ねで決まります。

宅建士登録者数は増加、人材確保の見方も変わります

令和7年度に新たに宅地建物取引士として登録した人数は34,714人で、総登録者数は1,243,738人となりました。宅建士の新規登録者数は増加傾向とされています。

一見すると、宅建士人材は増えているように見えます。ただし、建設会社側では、単に有資格者がいるかどうかだけでなく、自社の事業に必要な役割を担える人材かどうかを見ておく必要があります。

たとえば、分譲や売買を行う会社では、資格を持っているだけでなく、重要事項説明、契約実務、広告表示、顧客対応、社内チェックの流れまで理解している人材が重要になります。

また、社長や役員が不動産事業を兼務している会社では、属人的に回っている業務が増えがちです。宅建士を置いていることと、宅建業務が組織として管理されていることは別問題です。

自社で確認したい3つの視点

宅建業免許を持つ建設会社、またはグループ会社で不動産事業を行っている会社は、今回の発表を受けて、まず次の3点を確認しておくとよいです。

1つ目は、専任宅建士の配置と実態が合っているかです。登録上の配置だけでなく、実際の勤務実態、担当店舗・事務所との整合性、変更時の手続きが整理されているかを確認します。

2つ目は、媒介契約や重要事項説明の運用が標準化されているかです。担当者ごとの判断に任せきりになっている場合、説明漏れや書類不備が起きやすくなります。チェックリストや承認フローを持っているかが重要です。

3つ目は、建設部門と不動産部門の情報連携ができているかです。建物の仕様、法令制限、引渡し条件、施工上の変更点などは、契約・説明に影響します。部門間の情報が途切れると、顧客説明や契約内容にズレが生じる可能性があります。

建設会社の場合、現場の品質管理と不動産取引の説明責任がつながっています。ものをつくる力だけでなく、取引として正しく届ける力が、会社の信用を支える時代になっています。

「周辺事業」ではなく、経営管理の対象として見る

建設業の経営では、どうしても工事の受注、職人確保、原価管理、安全管理が中心になります。一方で、不動産事業を持つ会社では、宅建業務も会社の信用に直結します。

今回の調査結果から読み取れるのは、宅建業界全体が拡大する中で、行政側の監督・指導も一定の存在感を持っているということです。

そのため、不動産事業を「本業の横にある収益源」として見るだけでなく、建設業許可、安全衛生、労務管理と同じように、経営が管理すべき領域として位置づけることが大切です。

特に中小企業では、優秀な担当者に任せることで業務が回っているケースもあります。しかし、担当者が変わった時、案件が増えた時、支店や営業所を増やした時に、仕組みがないとリスクが表面化します。

今回のニュースは、宅建業を持つ建設会社にとって「資格者がいるか」から「組織として管理できているか」へ視点を移すタイミングだといえます。

自社の不動産事業と管理体制を整理する機会に

宅建業法の実務は、建設会社にとって専門外に見えやすい領域です。ただ、分譲、売買、仲介、管理まで事業を広げる会社にとっては、避けて通れない経営テーマです。

「うちの宅建業務はどこまで整っているのか」「専任宅建士や契約実務の管理をどう見直せばよいのか」「建設部門と不動産部門の連携をどう仕組みにすべきか」といった整理から始めるだけでも、次の打ち手は見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。不動産事業を含めた管理体制づくりについても、「何から整理すべきかわからない」という段階から壁打ちできます。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでお気軽にご相談ください。

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