4名規模で造船の継続案件と店舗・工場の電気工事を並行する会社の人員構成
九州北部で電気設備工事を手がける、社長を含めて4名ほどの工事会社があります。社員は全員が職人として現場に出ており、電気設備だけでなく、地中に配線を通す埋設工事まで自社で対応できることが強みです。
事業は大きく二つに分かれています。一つは、年間を通じて仕事が続く造船関連の電装工事。もう一つは、店舗、工場、マンション、木造住宅など、その時々で現場が変わる建築系の電気工事です。
造船関連では現在1名を配置していますが、取引先からは継続的に増員を求められており、あと3〜4名ほど増やしたい状況です。一方、建築工事は複数の店舗工事が重なる時期もあるものの、必要人数は現場ごとに変わります。埋設工事についても、「手元が一人いれば進められる現場が多い」という実情があります。
そのため、社長の考えは明確でした。
「造船には社員を入れたいです。建築は一人親方が多いので、応援を頼んだ方が現実的だと思っています」
人員確保を一律に“採用の問題”として扱わず、継続案件には社員、繁閑差のある工事には一人親方や協力会社を組み合わせることが、この会社の現在地に合った考え方です。
受注機会を逃さず固定費も増やしすぎない社員数の見極め
難しいのは、人が足りないからといって、必要人数をすべて社員採用で埋めればよいわけではないことです。
造船関連には年間を通じて仕事があり、取引先からも「人を増やしてほしい」と継続的に依頼されています。人員を配置できれば一定の稼働を見込みやすく、社員を増やす理由が立ちます。
一方、建築工事は工場が続く時期もあれば、店舗工事が重なる時期もあります。現場が終わった後に同じ人数分の仕事が続くとは限りません。この部分まで社員だけで対応しようとすると、閑散期にも給与や社会保険料などの固定費が残ります。
反対に、すべてを一人親方や協力会社の応援で補おうとすると、必要な日に人を確保できず、仕事を断らざるを得ない可能性があります。現場ごとに顔ぶれが変われば、施工手順や品質、安全面のすり合わせにも時間がかかります。
判断すべきなのは「社員か外注か」の二択ではなく、年間を通じて社内に残すべき施工力が何人分あるかです。
少人数の工事会社では、一人の増減が収支にも現場運営にも大きく影響します。だからこそ、受注見込みだけでなく、案件の継続性、必要人数、教育負担、固定費、品質管理まで含めて決める必要があります。
年間稼働が見える造船と現場の重なり方が読みにくい建築工事の違い
この会社が造船には社員、建築には応援という考えに至った背景には、二つの仕事で人材の使われ方が異なることがあります。
造船関連の仕事は年間を通じて続きます。未経験者を採用した場合も、現場には作業を教え、配置を考える立場の人がいます。自社の社長や既存社員が常時付ききりにならなくても、現場の受け入れ体制を組みやすい状況です。
「未経験で入っても、現場側に教える人がいます。二人ずつ分かれて作業員として入る形です」
社員を置くには比較的相性のよい案件ですが、それでも確認は必要です。年間を通じて本当に稼働できるのか、契約や発注量が変わった場合に別の現場へ配置できるのか、社員としてどこまで技能を身につけてもらうのかを整理しておかなければなりません。
建築工事では事情が変わります。店舗、工場、マンション、住宅と対象が移り、着工や引き渡しの時期によって忙しさが変動します。二つの店舗工事が途中から重なるなど、一時的に人手が必要になる場面もあります。
このような繁閑差に対しては、社長が一人親方として活動していた頃からのつながりが生きています。埋設工事も、自社の技能者に手元の応援を一人加えることで対応できるため、必ずしも同じ人数を常時雇用する必要はありません。
社員化の判断は、現在忙しいかどうかではなく、その人に12カ月分の役割を用意できるかどうかで考える必要があります。
また、一人親方や協力会社は、自社の社員ではなく独立した事業者です。単に「社員の代わり」として扱うのではなく、工事範囲、責任分担、施工条件、安全上の連絡方法を事前にそろえることが欠かせません。現場での指示の出し方についても、契約上の立場と実態がずれないように整理する必要があります。
継続性・教育・固定費・必要人数の四つで直接雇用と応援を分ける設計
人員構成は、案件ごとに次の四つを並べると判断しやすくなります。
- 案件の継続性
- 自社で教育する必要性
- 固定費を継続して負担できるか
- 現場ごとの必要人数と変動幅
1.年間を通じた最低稼働人数を社員枠として考える
最初に、繁忙期の最大人数ではなく、年間を通じて必要になる最低人数を確認します。
造船のように継続発注が見込め、常時数名の配置を求められる案件は、社員を置く候補になります。一方、二つの店舗工事が重なる数カ月だけ必要になる人数は、外部応援で補う余地があります。
判断時には、案件ごとに次の内容を月別に書き出します。
- 稼働予定期間
- 最低限必要な人数
- 繁忙期に追加で必要な人数
- 工事終了後の配置先
- 受注量が減った場合の代替現場
通年で必要な最低人数を社員とし、それを超える繁忙期の人数を一人親方・協力会社で補う形が基本になります。
2.会社に残したい技能を持つ人は直接雇用を優先する
人数だけでなく、技能をどこに蓄積するかも重要です。
電気設備から埋設工事まで一貫して対応できることが強みなら、その施工判断を担う人まで外部に依存すると、受注できる工事の範囲が不安定になります。将来の職長候補や、複数の現場で中核を担う人材は、時間をかけて社員として育てる方が適しています。
反対に、工期が重なる期間の手元作業や、工事量に応じて増減する補助的な施工は、外部応援との相性がよい領域です。
会社の強みを支える技能と現場管理の役割は社員に残し、仕事量に応じて変動する部分を外部人材で補います。
3.採用人数は売上ではなく粗利と固定費で確認する
「人が増えれば仕事を回してもらえる」という取引先があっても、採用人数を売上だけで決めるのは避けたいところです。社員を一人増やすと、給与だけでなく社会保険、採用、教育、作業着、工具、車両などの負担が継続します。
採用前には、少なくとも次の三つを試算します。
- その社員が年間で何日稼働できるか
- 一人当たり、どの程度の粗利を確保できるか
- 想定案件が減った場合でも固定費を負担できるか
外部応援は日当や請負金額が高く見えることがありますが、必要な期間だけ依頼できる点まで含めて比べる必要があります。単価の高低だけではなく、年間総額で比較することが大切です。
4.一人親方・協力会社は人数ではなく対応力を把握する
繁忙期に応援を頼む方針でも、「知り合いが何人かいる」という状態だけでは、現場が重なった際に確保できないことがあります。
協力先ごとに、次の項目を整理しておくと実務で使いやすくなります。
- 対応できる工種と作業範囲
- 一度に対応できる人数
- 稼働しやすい曜日や時期
- 保有資格と経験
- 見積もりや請求の条件
- 品質、安全、報告方法の共通ルール
初めて組む相手には、いきなり重要工程を任せず、手元作業や範囲の明確な工事から始める方法があります。施工後の確認まで行い、次の現場でも頼める相手かを見極めます。
協力会社網は名簿ではなく、「どの工事に、何人、どの条件で頼めるか」まで見える状態にして初めて戦力になります。
5.社員と外部応援を同じ運用にしない
社員には会社として作業を指示し、教育や配置を行います。一方、一人親方や協力会社とは、請け負う工事の範囲、責任、成果、安全上の連絡方法を契約時に明確にします。
施工品質をそろえるためには、立場の違いを曖昧にするのではなく、図面、施工要領、検査基準、写真の残し方など、現場で共有すべき内容を標準化する方が進めやすくなります。
契約書を整えるだけでなく、実際の仕事の任せ方が契約内容と合っているかも確認します。判断に迷う場合は、建設業務や労務に詳しい関係者へ確認できる状態をつくっておくと安心です。
まとめ
少人数の工事会社にとって、人を増やすことは、そのまま受注力の拡大につながります。ただし、すべてを社員採用で埋めると固定費が重くなり、すべてを外部応援に頼ると必要な時に施工力を確保できない可能性があります。
今回のように、年間を通じて続く造船関連には社員を配置し、工場や店舗など繁閑差のある建築工事には一人親方・協力会社の応援を組み合わせる考え方は、実務に即しています。
整理の順番は次の通りです。
- 通年で必要な最低人数を出す
- 自社に残したい技能と役割を決める
- 社員一人当たりの粗利と固定費を試算する
- 繁忙期に必要な追加人数を把握する
- 協力先の対応工種、人数、条件を一覧にする
- 契約と実際の仕事の任せ方をそろえる
社員は会社の基礎施工力をつくり、一人親方・協力会社は需要の変動に対応する施工力をつくります。この二つを案件の性質に合わせて設計することが、受注機会と固定費のバランスにつながります。
自社に合う社員数と協力体制を一緒に整理するために
「継続案件はあるものの、何人まで社員として採用してよいかわからない」「協力会社を増やしたいが、どの工事を任せるべきか決めきれない」という段階では、案件別の必要人数と収支を並べるところから始めると整理しやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の人材確保や組織づくりを、現場の配置、採用、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。自社の場合に何から考えるべきかが固まっていない段階でも問題ありません。状況を伺ったうえで整理先を一緒に考え、無理にサービスを勧めることはありません。