前提

「先に仕事を取り、必要な施工体制を組む」と考える専門工事会社の現在地

関東圏のある専門工事会社では、新規元請けの開拓を優先課題に挙げていました。社内人材を先に増やすのではなく、受注の見通しが立ってから必要な体制を整え、状況によっては協力会社も活用するという考え方です。

「仕事がないと、体制をどうするかという選択すらできません。まず仕事を取ってから考えたいんです」

この順番は、固定費を慎重に見ながら成長したい専門工事会社にとって自然です。一方、販路を広げようとして生命保険会社や金融機関などのビジネスマッチングへ参加しても、期待した元請けとの接点はなかなか生まれませんでした。

「参加者の多くが営業に来ています。仕事が欲しい会社同士だから、なかなかマッチングしないんですよね」

新規開拓の出発点は、交流先を増やすことではなく、発注側の適切な部署・担当者へ届く導線をつくることです。

課題

既存業者との住み分けがあるなかで発注部署までたどり着けない壁

専門工事の新規開拓が難しい理由は、施工力が不足しているからとは限りません。元請け側で長年付き合っている業者が決まっており、工種や地域ごとの住み分けができているためです。

「既存業者がもう決まっているから、なかなか入り込めないんですよね」

この状況で、会社の代表電話へ一度連絡したり、名刺交換の機会を増やしたりするだけでは、見積依頼まで進みにくくなります。元請けと接点を持てたとしても、工事の発注に関係する部署でなければ、具体的な案件にはつながらないためです。

重要なのは、接点の数だけではありません。

  • どのような工事を取りたいのか
  • 大手数社を狙うのか、地場企業を広く狙うのか
  • 元請けのどの部署が対象工事を扱っているのか
  • 誰と話せれば見積依頼へ進めるのか

ここが曖昧なまま営業手法だけを増やすと、訪問や架電の件数は増えても、発注側との接続率は上がりません。

既存取引が固い市場ほど、「どの会社へ営業するか」だけでなく、「どの部署の誰へ届けるか」まで決める必要があります。

背景

大手数社と地場元請けでは有効な開拓方法が異なる構造

販路開拓では、狙う元請けの数と規模によって、適した方法が変わります。

大手ゼネコン、ハウスビルダー、デベロッパーなど、付き合いたい会社が数社に絞られている場合は、その企業の組織や発注構造を理解する人のつながりを生かし、対象部署へ個別に入る方法が向いています。いわば「一本釣り」です。

中国地方の売上数億円、20名弱の内装工事会社では、特定市場への依存を減らし、住宅関連の安定した受注経路をつくることを目指していました。そこで、大手ハウスビルダーやデベロッパーの事情を知る人材と連携し、関係部署への接点を形成。見積案件を獲得し、その後、1,000万円前後の工事受注につながりました。

この事例で注目したいのは、最初から受注を取りにいったのではなく、まず見積もりを依頼してもらえる関係をつくったことです。既存業者がいる市場では、最初の接点だけで切り替えが起こるとは限りません。新しい案件や既存業者だけでは対応しきれない場面で、候補に入っている状態をつくることが一歩目になります。

一方、地域内の建設会社や地場ゼネコンを広く開拓する場合は、対象企業が分散します。一人の人脈だけでは網羅しにくいため、条件に合う会社をリスト化し、継続的に電話をかけて担当部署を探る方法が適しています。実際に、営業担当として企業名刺を持ち、1日80~100件ほど架電しながら面談までつなぐ支援も行われています。

ただし、この件数をすべての会社がそのまま目標にする必要はありません。重要なのは、狙う母数が多い場合、少数の紹介を待つより、対象企業を順番に調べて接触するほうが成果を検証しやすいという点です。

大手数社を狙うなら人脈を生かした一本釣り、地場元請けを広く狙うならリスト営業と架電が基本です。

解決

狙う工事と元請け数を決め、担当部署への接続から見積依頼まで管理する進め方

最初に行いたいのは、営業先リストの作成ではなく、取りたい工事の整理です。工事内容が決まらなければ、狙う元請けも、接触すべき部署も決まりません。

1.取りたい工事を具体化する

まず、次の項目を社内でそろえます。

  • 取りたい工事の種類
  • 対応できる地域
  • 希望する案件規模
  • 現在の施工体制で対応できる範囲
  • 協力会社を含めれば対応できる範囲

ここを整理すると、「大手の特定案件を狙うのか」「地場企業から一定数の案件を積み上げるのか」が見えやすくなります。

2.狙う元請けの数で営業手法を選ぶ

付き合いたい大手が明確で、対象が数社に限られる場合は、企業内部の事情を知る人の力を借り、関係部署へ接続する方法を優先します。会社名だけでなく、対象工事を管轄する部署と担当者を特定できるかが判断軸です。

候補となる地場企業が多い場合は、地域、施工領域、案件との相性などでリストを作り、架電を重ねます。人脈があるかどうかに左右されず、対象企業を順番に確認できる方法です。

両方を狙いたい場合は混ぜずに、大手の重点企業と地場企業の営業リストを分けます。営業方法と進捗の見方が異なるためです。

3.代表窓口で止まらず、発注に関係する部署を確認する

最初の接触では、すぐに受注を求めるよりも、対象工事を扱う部署への接続を目指します。確認したいのは、次の段階です。

  1. 対象工事を扱う部署の確認
  2. 担当者への接続
  3. 自社が対応できる工事内容の共有
  4. 面談の設定
  5. 見積候補への登録や見積依頼
  6. 工事条件が合う案件の受注

初回接触の目標を受注だけに置かず、担当部署への接続、面談、見積依頼へ分けて管理することが大切です。

4.受注件数だけで営業活動を評価しない

既存業者が固まっている元請けでは、初回連絡からすぐに工事が決まるとは限りません。そのため、営業状況は次のように段階別で記録します。

  • 担当部署を確認できた会社数
  • 担当者と会話できた会社数
  • 面談につながった会社数
  • 見積依頼を受けた会社数
  • 次回接触の時期が決まった会社数

これにより、リストの選び方に問題があるのか、部署へつながっていないのか、面談後に見積候補へ入れていないのかを切り分けられます。架電数を増やす前に、どこで止まっているかを確認できる状態をつくることが先です。

販路開拓は、件数を追う活動ではなく、狙う元請けの発注経路へ段階的に近づく活動として設計します。

まとめ

専門工事会社の新規元請け開拓では、一般的な交流会やビジネスマッチングへ参加するだけでは、仕事を求める企業同士の接点にとどまることがあります。

既存業者による住み分けがあるからこそ、先に整理したいのは次の3点です。

  • どのような工事を取りたいのか
  • 狙う元請けは大手数社か、地場企業の広い母数か
  • 発注に関係する部署と担当者へどう接続するか

大手を少数狙うなら、人脈を生かして対象部署へ入る一本釣りが向いています。地場企業を広く狙うなら、営業先をリスト化し、架電から面談まで継続して進める方法が合います。

狙う工事、元請けの数、接触部署を先に決めることで、販路開拓は「紹介を待つ活動」から「見積機会をつくる活動」へ変わります。

自社に合う元請け開拓の進め方を整理したい方へ

販路開拓は、営業手法を決める前に、自社が取りたい工事と狙う元請けの構造を整理する必要があります。「大手を狙うべきか、地場企業を広く回るべきか」「どの部署へ接触すればよいかわからない」という段階からでも整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、狙う元請けの選定、接触先の特定、リスト営業や商談化までの実行を支援しています。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合に何から整理すべきかを確認する場としてご活用ください。

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