前提

曳家や傾き修正の技術を、ウェブ発信と交流会で伝えている専門工事会社

技術も実績もあり、発信にも取り組んでいる。それでも、何を頼める会社なのかが伝わりにくい。 東海周辺で曳家や建物の傾き修正を手がける、ある専門工事会社の悩みです。

社長は、自ら取引候補を探しています。企業のウェブサイトから個別に連絡し、建設会社が集まる交流会にも何度も参加しています。自社でもウェブ発信を続けています。

すでに、大手建設会社から直接相談を受けることもあります。営業をしていないわけでも、施工を任せてもらえないわけでもありません。

それでも、社長が広げたいと思っているのは、取引先の数だけではありませんでした。

「曳家とか、建物の傾きを壊さなくても直せることを、多くの人に知ってもらえればと思っているんです」

この言葉を出発点にすると、営業活動の目的が少し変わります。すぐに工事を発注してもらうことだけでなく、技術の存在を知ってもらうこと。そのうえで、必要なときに相談先として思い出してもらうことです。

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課題

名刺交換をしても「どんな困り事を相談できるか」が伝わらない状態

接点の数を増やすだけでは、専門工事の相談先として覚えてもらえるとは限りません。 この会社では、名刺交換の段階から仕事内容が伝わらないことがありました。

「交流会に行っても、建設会社さん自体がうちの仕事を知らないんです。名刺交換をしても、まずそこから伝わらない」

昔ながらの大工には理解してもらえることがあります。ただ、技術を知っている人が、そのまま案件を相談したり、紹介したりする立場にいるとは限りません。

ここには、二つの違いがあります。一つは、会社名を知っていることと、対応できる工事を理解していることの違いです。もう一つは、技術を理解していることと、実際の相談につなげられることの違いです。

曳家や傾き修正という業種名だけでは、相手が自分の抱える問題と結びつけられないこともあります。伝えたいのは名前だけではなく、「建物が傾いているとき、壊さずに直す方法を相談できる」という対応の中身です。

まず整理したいのは、営業先が足りないのか。それとも、会った相手に頼めることが伝わっていないのか。この会社の悩みは、後者に重心がありました。

背景

傾き修正は常時発生せず、相談先を探すのは現場監督や建物所有者

案件がいつもある工事ではないからこそ、相手に困り事が生じる時期と、こちらが技術を伝える時期はずれます。

社長は、その事情をよく理解していました。

「そうそうあることじゃないし、あったら困ることですから。今すぐ取引しましょう、とはなかなかならないんですよね」

個別に連絡しても、返ってくるのは「今はない」「あったら声をかける」という返事です。この返事だけで、相手との接点に意味がなかったとは判断しにくい工事です。

ただし、待っていればどこからでも相談が来るわけでもありません。誰が最初に困り、誰が相談先を探すのかを見る必要があります。

この会社が受ける相談では、大手建設会社の現場監督が、自らインターネットで施工会社を探すことがありました。社長も、購買部門とのつながりだけでは、個々の現場の相談には届きにくいと感じています。

一方で、建物所有者がウェブサイトを見つけて、直接相談するケースもあります。

「どこに頼んでいいかわからなくて、ホームページからうちに相談が来るんです」

地盤を扱う会社でも、新築の地盤改良が中心なら、この会社の仕事とは一致しません。自社施工で完結する会社もあります。業種が近いことより、既存建物の困り事が届き、外部への相談につながる立場かどうかが大切です。

解決

「壊さずに直す相談先」として伝え、必要な時期まで接点をつなぐ進め方

新しい営業手段を増やす前に、いまのウェブ発信・交流会・個別アプローチを、同じ説明と接点の記録でつなぐことが考えられます。 この会社は、すでに行動しています。まず見直したいのは、その行動で何を伝え、何を残すかです。

すぐの案件獲得と、技術を知ってもらう活動を分ける

具体的な傾き修正の相談がある相手と、いまは案件がない相手では、連絡の目的が異なります。

前者とは、工事の内容や対応できる範囲を確認します。後者には、何か起きたときに相談できる会社として、技術と連絡先を覚えてもらうことを目指します。

「今はない」という返事でも、仕事内容まで理解されたのか。それとも、よくわからないまま話が終わったのか。この違いを確かめたいところです。

案件がないことと、技術が伝わっていないことを分けると、次の連絡で伝える内容も変わります。

業種名だけでなく、対応できる状態と施工事例を伝える

説明の入口は、「曳家をしています」だけでなく、「建物の傾きを、壊さずに直す方法をご相談いただけます」といった困り事に寄せます。

そのうえで、自社の施工事例を使います。どのような状態の建物に、どのような工事を行ったのか。自社が対応できる範囲を、具体的に説明するためです。

ここで気をつけたいのは、「どんな建物でも壊さずに直せる」という伝わり方にしないことです。実績のある状態や対応範囲と結びつければ、相手も相談してよい内容を判断しやすくなります。

ウェブサイトでも、交流会での説明でも、個別の連絡でも、この入口をそろえます。技術の名前を覚えてもらうだけでなく、困り事と会社を結びつけてもらうためです。

会社規模ではなく、相談の起点となる相手を見極める

接点を持つ相手は、知名度や売上規模だけでは選びません。この会社の相談経路に照らせば、確認したいのは次の点です。

  • 既存建物の傾きなどについて、相談を受ける立場か
  • 現場監督や建物所有者など、実際に相談先を探す人に届く接点か
  • 自社施工だけで完結せず、外部に相談する余地があるか

地盤会社という分類が合っていても、新築中心なら仕事内容がずれます。技術をよく知る相手でも、相談につなげる立場でなければ、すぐの案件化は期待しにくくなります。

相手ごとの役割を見ておくと、「工事の相談を受けるための接点」と「技術を知ってもらうための接点」を整理できます。

名刺交換や個別連絡を、次の説明につながる記録にする

接点を持った後は、相手の窓口、伝えた内容、反応、案件の有無を残します。再連絡の時期や、そのときに確認することも合わせて記録します。

仕事内容がまだ伝わっていない相手には、対応できる状態と施工事例を補います。技術は理解していて、いまは案件がない相手には、状況に応じた時期に改めて連絡します。

毎回同じ依頼を繰り返すのではなく、前のやり取りを踏まえてつなぐ形です。名刺の枚数だけでなく、「何を頼める会社かまで伝わった接点」を積み重ねることが、必要なときの相談候補に入る土台になります。

まとめ

専門工事の営業では、すぐに発注してもらう活動と、困ったときに思い出してもらう活動を分けて考えることが大切です。

曳家や建物の傾き修正は、相手先で常時発生する工事ではありません。だからこそ、「今はない」という返事だけでは活動の手応えを測れません。

まずは、壊さずに直す方法があること。そして、どのような状態なら自社に相談できるのか。この二つが伝わっているかを確認します。

次に、現場監督や建物所有者など、実際に相談先を探す人へ届いているかを見ます。すでに続けているウェブ発信や交流会も、説明と記録をそろえることで、次の相談につながる接点として育てていけます。

専門工事の強みを、誰にどう伝えるかの整理から

「取引先を増やしたい」の手前に、「何を頼める会社なのか、もっと知ってほしい」という課題があることもあります。 自社の場合はどちらなのかを整理するだけでも、次に力をかける活動が見えやすくなります。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。専門工事の認知形成でも、相談の起点となる相手や、いまの発信・営業活動のつなぎ方から一緒に考えます。

「うちの場合は誰に伝えるとよいのか」「いまの取り組みの何を整理すべきか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありません。自社で続けられることも含め、次の一手を整理する場としてご活用ください。

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