食品工場の電気工事を続けながら、既存現場とは進め方の違う案件を検討する首都圏の専門工事会社
相談元は、首都圏の食品工場を中心に電気工事や設備工事の補助を手がける専門工事会社です。既存の取引先から継続的に仕事があり、現場が空いて困っているわけではありません。むしろ、「ますます仕事が増えそう」という状況でした。
一方で、別地域の工場や新しい取引先へ広げられる可能性も見えていました。ただし、候補となる案件は、現在の主力業務と同じ進め方ではありません。
普段は「少人数で行き、2、3日で終わる仕事」が中心です。ところが、新しい案件では工期や勤務時期が変わり、場合によっては工場の休止期間に合わせた対応も必要になります。
「本格的にやるとなったら、冬休みや正月も工事をするのか、という話になりますよね」
既存案件を抱えたまま、現在の人員を新規案件へ振り向ければよいとは限りません。受注機会があることと、自社の体制で安定して施工できることは別の問題です。
工期も必要な職人も違う案件を既存メンバーの片手間で回そうとする難しさ
新規案件で見落としやすいのは、施工内容だけではありません。現場ごとに、工期、稼働時間、必要な職人、移動範囲、発注側とのやり取りが変わります。
相談元でも、既存現場で働くメンバーにとって、新しい案件は「少し毛色が違う仕事」だと捉えられていました。
「手間もいろいろ違いますし、違う文化に染まらないといけない感じがあります」
技術的には対応できても、仕事の進め方が合うとは限りません。短期間の工事に慣れた職人が、長期間や遠方の現場へ移れば、既存現場へ戻りたいと感じることもあります。
しかも、既存の仕事が減っているわけではありません。新しい現場へ人を出すほど、今まで支えてきた現場が薄くなります。新規案件を取れたとしても、既存案件の品質や応答速度が落ちれば、会社全体ではうまく回りません。
問題は人手の総数だけではなく、異なる仕事を同じ指揮系統と人員配置で動かそうとすることにあります。
現在の仕事を守りながら別の仕事文化へ適応できる人材が社内に見当たらない状況
新しい案件を任せるには、単に現場へ行ける人ではなく、違う仕事の進め方を受け入れられる人が必要です。発注者と話し、案件を見極め、自分たちで「受ける・受けない」を判断できる立場も欠かせません。
相談元では、既存メンバーのなかに、その役割をすぐ任せられる人がいるわけではありませんでした。
「今のやり方とは全く別の文化です。柔軟でないとなかなかできないですよね」
現場だけを切り出して考えると、空いている職人を送ればよいように見えます。しかし実際には、現地での段取り、発注者との調整、職人の手配、既存案件との優先順位づけまで必要です。
そのため、「外の仕事を本格的に追うなら、外部隊をつくるしかない」「部署を分けるくらいの勢いが必要」という考えに至りました。
また、遠方の案件では、既存拠点から毎回人を送る方法にも限界があります。基礎工事など自社だけで完結しない工程があれば、現地の職人や協力会社も探さなければなりません。
新規案件の受注は営業だけのテーマではなく、責任者、施工人員、協力会社、拠点を一つの体制として設計するテーマです。
小さく現場を試したうえで責任者と現地人員を固め、専任部署へ移行する進め方
最初から事務所を構え、採用を増やし、独立部署をつくる必要はありません。まずは小規模な案件や短期間の応援から入り、実際の仕事の進め方と地域性を確認する方法があります。
相談元でも、「事務所をつくる前に、ちょっとした引き継ぎで現場へ行き、仕事のやり方や土地勘を見てみる」という進め方が挙がりました。
受注前に確かめたいのは、施工できるかどうかだけではなく、その仕事を継続できる体制をつくれるかどうかです。
段階的に進めるなら、次の順番が考えやすくなります。
- 既存案件との違いを具体的に書き出す
工期、稼働時期、必要職種、移動時間、現地での段取り、発注者との商習慣を整理します。「技術的にできる」という一点だけで判断しないことが大切です。
- 小規模な案件で仕事の文化を確認する
いきなり大きな受注を狙わず、短期間の応援や限定した工程から試します。既存メンバーが適応できるのか、現地で何が不足するのかを見ます。
- 案件を選べる責任者を置く
必要なのは、言われた現場へ行くだけの担当者ではありません。発注者と話し、自社で対応する範囲を決め、受注の可否まで判断できる責任者です。目安としては、現場をまとめられる「所長クラス」の役割になります。
- 現地の職人と協力会社を確保する
遠方の現場を既存拠点の人員だけで回し続けるのは負担が大きくなります。現地採用と協力会社の確保を並行し、少しずつ施工の地盤をつくります。
- 継続性が見えてから部署を分ける
案件が単発なのか、一定量が継続するのかを見ます。責任者が案件を選べて、現地の人員も確保できる状態になったら、既存部門から切り分けます。
専任部隊をつくる判断では、案件数だけを見るのではなく、次の点を揃えて確認すると整理しやすくなります。
- 既存現場から人を抜いても支障が出ないか
- 稼働時期や工期が既存案件と大きく重ならないか
- 現地で必要な職人や協力会社を確保できるか
- 受注可否を判断できる責任者を置けるか
- 単発受注ではなく、継続する見込みがあるか
「仕事が取れそうだから人を出す」のではなく、「小さく試し、責任者と人員を固め、継続性を確認してから分ける」という順番が、既存現場を守りながら事業を広げる現実的な形です。
まとめ
既存事業と異なる案件を増やすときは、売上機会だけでなく、仕事の文化の違いまで見ておく必要があります。
短工期の現場と長期の現場。通常稼働日の仕事と工場休止期間の仕事。既存拠点から通える現場と、現地人員が必要な現場。これらを同じ人員配置で回そうとすると、既存現場と新規現場の双方に無理が出やすくなります。
だからこそ、最初から大きな組織をつくるのでも、片手間で受注するのでもなく、まず小さく試します。そのうえで、案件を選べる責任者を置き、現地の職人や協力会社を確保します。
新規案件を育てる第一歩は、受注を急ぐことではなく、既存事業とは別の体制が必要かを見極めることです。
新規案件を受けられる体制から一緒に整理する
「うちの場合は専任部隊まで必要なのか」「誰を責任者にすればよいのか」「現地採用と協力会社の確保をどう進めるか」など、判断材料がまだ揃っていない段階でも整理は始められます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新規案件の受注方針だけでなく、既存現場を守りながら専任体制へ移行する手順も一緒に検討できます。
無理にサービスを勧めることはありません。「まず何を確認すべきかを整理したい」という段階でも、気軽にお声がけください。