前提

東京拠点の売上が数千万円まで伸びる一方、社長が東海と首都圏を往復する内装仕上げ会社

東海地方に本社を置く、ある内装仕上げ会社では、東京拠点を立ち上げて約1年が経過していました。東京での売上は数千万円まで伸び、千葉と都心部の現場が同時に動くなど、受注面では手応えが出ています。

一方、社長は月の半分ほどを東京で過ごし、本社と東京を何度も往復していました。現場が増えるほど、社長自身の移動と管理も増える状態です。

「関東には以前から付き合いのある取引先がいるので、その気になれば仕事は取れると思います」

この言葉が示すように、同社にとって不足していたのは営業先ではありません。仕事を取れるかどうかではなく、受けた仕事を安定して施工できるかどうかが、新拠点の成長を左右していました。

東京で必要としていたのは、クロス、床、塗装などの内装仕上げを担う協力会社です。なかでも床工事では、木質フローリングだけでなく、店舗で多く使われる塩ビタイル、カーペット、長尺シートなどを施工できる職人が求められていました。

材料や接着剤は自社から現場へ支給するため、依頼したいのは施工部分です。複数工種を1社でまかなう必要はなく、「床だけ」「クロスだけ」「塗装だけ」でも問題ありません。

新拠点を任せる体制は、何でもできる1社を探すより、必要な工種ごとに条件の合う施工会社を揃えるほうが現実的です。

課題

「施工だけを任せられる2社」が揃わず、社長不在で東京の現場を回せない状態

同社では東京で2社と取引を始めていましたが、継続して任せられそうなのは実質1社でした。もう1社については、今後の依頼が難しいと感じていたためです。

「今の仕事量なら、2社がしっかり動いてくれれば回ると思います。ただ、現状は1社に近い状態なので、少なくとももう1社、できれば安定して任せられる2社が欲しいです」

ここで重要なのは、協力会社の社数だけを満たせばよいわけではない点です。最初の現場には自社の職人が来たものの、2件目以降は外注の職人だけが入るようになり、施工品質にばらつきが出たケースもありました。

元請側で現場管理を担えるとしても、毎回異なる職人が入り、仕上がりや作業効率に当たり外れがある状態では、社長は現場から離れにくくなります。

「こちらが求める効率と品質で施工してもらわないと困ります。職人による当たり外れはなくしたいんです」

必要なのは名簿上の協力会社ではなく、社長が現場にいなくても一定の品質と効率で施工できる協力会社です。

さらに、自社で協力会社を増やそうとすると、候補探し、連絡、条件確認、面談、初回現場の確認まで社長が担うことになります。社長の負担を減らすための協力会社探しが、かえって社長の仕事を増やしてしまいます。

社長依存を解消する取り組みそのものが社長依存になっていることが、新拠点づくりで起こりやすい詰まり方です。

背景

材料支給と施工品質の条件が、外形情報だけでは見抜けない協力会社選び

協力会社探しが難しい理由は、会社概要や許可業種だけでは、実際の取引条件や施工体制まで判断できないためです。

首都圏には、内装仕上げを掲げる小規模事業者や一人親方が相当数います。候補の母数自体は少なくありません。しかし、「床工事に対応」と書かれていても、木質フローリングが中心なのか、塩ビタイルやカーペットまで施工できるのかは分かりません。

同様に、従業員が数名いる会社でも、その全員が営業や管理を担当し、施工は外注へ再委託している場合があります。そうなると中間の利益が加わり、施工費が合いにくくなります。施工のみでは採算が取れないため、「材料も一緒に仕入れさせてほしい」と言われることもあります。

同社が探していた条件は明確でした。

  • 自社支給の材料を使い、施工のみを請けられる
  • 代表者本人または自社の職人が施工を担う
  • 塩ビタイル、カーペット、長尺シートなど対象工種の経験がある
  • 健康保険や労災など、必要な保険関係を確認できる
  • 東京、神奈川、埼玉、千葉の現場へ対応できる
  • 初回だけでなく、継続して一定の職人と品質を確保できる

「内装仕上げ会社であること」は入口の条件にすぎず、材料支給、実施工者、対応工種、保険、継続体制まで確認して初めて候補になります。

これらは企業情報の一覧だけでは判定できません。候補へ直接確認し、さらに実際の現場で技術、段取り、報告、仕上がりを見る必要があります。

そのため、協力会社開拓は単なるリスト集めではなく、条件に合わない会社を早い段階で除外し、社長が会うべき候補だけに絞る作業として設計することが大切です。

解決

必要施工力の算定から工種別の試験発注・定着までを一本化する開拓手順

新拠点の協力会社体制は、候補先への連絡から始めるのではなく、現在の仕事を回すために、どの工種の施工力がどれだけ必要かを算定することから始めます。

1.今後3〜6カ月の工事を工種別に分ける

まず、受注済み案件と受注確度の高い案件を、床、クロス、塗装などの工種に分けます。そのうえで、施工時期が重なる案件と、繁忙時に必要となる職人数・日数を確認します。

精密な計算から始める必要はありません。過去の現場をもとに、次の項目を一覧にするだけでも必要量が見えてきます。

  • 案件名と施工エリア
  • 工種と施工期間
  • 必要な職人数または人工数
  • 同時進行する可能性
  • 現在の協力会社が確実に対応できる範囲
  • 不足する職人数と期間

同社の場合、「現在の仕事量は2社が安定して動けば回る」という見立てがありました。このように、まずは社長の経験則を数字と工程に置き換えます。

必要社数は、候補が何社いるかではなく、繁忙時の不足施工力を何社で埋めるかによって決めます。

2.工種ごとに「主力」と「予備」の必要社数を決める

床、クロス、塗装をすべて1社へ任せようとすると、候補は少なくなります。同社のように「床だけでも問題ない」と条件を分ければ、実際に施工できる小規模事業者や一人親方まで対象を広げられます。

必要社数を決める際は、日常的に依頼する主力会社だけでなく、工程の重複や欠員時に声をかけられる予備候補も考えておきます。ただし、最初から社数を増やしすぎると、1社あたりの発注量が薄くなり、関係が定着しません。

まずは不足が大きい工種から、主力として任せたい社数を決めます。その主力候補が固まった後に、予備候補を確保する順番が進めやすいでしょう。

3.外形情報ではなく取引条件で候補を絞る

候補への初回連絡では、会社紹介を長く伝えるより、取引条件を先に確認します。

特に優先したい確認事項は次の通りです。

  1. 材料支給で施工のみを依頼できるか
  2. 対象となる床材や仕上げ材を施工できるか
  3. 実際に現場へ入るのは誰か
  4. 対応エリアと受けられる仕事量
  5. 保険加入などの基本条件を満たすか
  6. 継続発注に対応できるか

「施工できますか」だけでは、条件のずれが後から出てきます。自社が譲れない条件を最初に伝え、合う会社だけと次の話を進めることが、社長の時間を守ります。

4.小規模な試験発注で実際の施工体制を見る

条件が合った候補にも、いきなり大きな現場を任せるのではなく、管理しやすい範囲から依頼します。見るべきなのは仕上がりだけではありません。

  • 指定した材料と施工方法を理解しているか
  • 現場へ来た職人が事前説明と一致しているか
  • 工程と時間を守れるか
  • 手直しが発生した際に対応できるか
  • 報告や連絡が滞らないか
  • 2件目以降も同じ水準を維持できるか

同社では、1件目と2件目で施工体制が変わった経験がありました。そのため、初回だけで判断せず、複数回の発注を通じて再現性を見る必要があります。

試験発注の目的は、職人の腕前だけでなく、継続して同じ品質を出せる体制かどうかを確かめることです。

5.継続発注の条件を揃え、主力会社として定着させる

良い協力会社が見つかっても、単発発注だけでは関係が安定しません。発注時期、現場情報、材料の搬入方法、施工単価、支払条件、品質基準を整理し、相手が予定を確保しやすい状態をつくります。

自社側も、現場ごとに依頼内容が変わらないよう、発注時に伝える項目を揃えておくことが大切です。誰が依頼しても必要情報が伝われば、社長以外の担当者でも協力会社を動かしやすくなります。

6.次の地域へ進む基準を「社長不在」で確認する

東京が回り始めたからといって、すぐ次の地域へ進むとは限りません。判断基準は売上額だけでなく、社長が現場を離れても運営できるかどうかです。

次の地域への進出前に、少なくとも以下を確認します。

  • 工種ごとの主力協力会社が必要数揃っている
  • 同時進行する現場にも対応できる
  • 施工品質と作業効率の基準が共有されている
  • 協力会社への発注と現場管理を社長以外でも行える
  • 問題発生時の報告先と判断手順が決まっている
  • 社長が一定期間不在でも工程が止まらない

次の拠点へ進める状態とは、今の拠点で仕事が取れている状態ではなく、社長がいなくても受注した仕事を完了できる状態です。

まとめ

新拠点の立ち上げでは、受注が先に伸び、施工体制が後から追いかける形になりやすいものです。取引先との関係があり、仕事を増やせる会社ほど、社長が現場を埋め合わせ続ける状態に入りやすくなります。

今回のようなケースでは、営業先をさらに増やすより先に、工種別の必要施工力を算定し、任せられる協力会社を揃えることが優先です。

進め方は次の通りです。

  1. 案件と工程から不足する施工力を算定する
  2. 床、クロス、塗装など工種別に必要社数を決める
  3. 材料支給、実施工者、対応工種、保険などで候補を絞る
  4. 小規模な試験発注で品質と体制を確認する
  5. 発注条件を揃え、継続して頼める関係をつくる
  6. 社長不在で現場が回ることを確認してから次の地域へ進む

協力会社の開拓は「何社とつながったか」ではなく、「社長が移動しなくても現場が完了する体制になったか」で評価することが大切です。

新拠点を任せられる協力会社体制から整理したい方へ

必要な協力会社の条件は分かっていても、候補探しや連絡、条件確認まで社長が担うと、現場との両立が難しくなります。「うちの仕事量なら何社必要なのか」「どの条件から確認すべきか」という段階から整理しても問題ありません。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、協力会社のターゲット設定、候補抽出、アプローチ、面談設定、定着に向けた運用づくりまで支援しています。

ものづくりに集中できる体制をつくるために、まずは社長が抱えている現場業務と、外へ任せたい範囲を一緒に整理します。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合に何から手をつけるべきかを確認したい方も、気軽にお声がけください。

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