前提

東海地方の設備工事会社が衛生配管を任せられる一人親方を探している状況

東海地方で給排水・衛生配管を手がける、ある設備工事会社では、今後の現場に備えて協力業者を増やしたいと考えていました。探しているのは、近隣エリアで管工事に対応できる一人親方です。

法人の協力会社であれば、会社概要や従業員数、取引先、施工実績などから、ある程度の候補を絞れます。一方、一人親方は屋号と電話番号、対応工種までは確認できても、病院や高齢者施設などの経験、大型現場への対応力、現在の稼働状況までは公開されていないことが少なくありません。

「一人親方だと、どんな感じで探すことになりますか」

この問いに表れているのは、候補者の数だけではなく、誰に声をかければ自社の現場と合うのかを、事前情報だけでは判断できないという悩みです。

さらに、この会社では案件の入り方も一定ではありません。経営者からは「これから急に現場が入ってくることもあるから、必要人数を今の時点では読めない」という言葉もありました。

一人親方の開拓では、必要になってから探し始めるのではなく、動ける人との接点を平時からつくっておくことが重要です。

課題

施工実績も希望単価も見えないため公開情報だけでは優先順位を決められない状態

一人親方の開拓で難しいのは、検索して候補者名簿をつくっても、そのままでは協力を依頼できる相手かどうか分からないことです。

今回も、近隣で管工事を行っている一人親方の屋号や連絡先は抽出できました。しかし、公開情報から確認できる内容には限界がありました。

  • どのような施設や現場を経験してきたか
  • 給排水・衛生配管のうち、何を得意としているか
  • 大型施設の新築現場に対応できるか
  • 現在はどの程度予定が埋まっているか
  • いつから、どのくらいの期間なら動けるか
  • どのような条件を希望しているか

こうした情報が分からないままでは、リストの上から順番に連絡しても、社内の手間が増えるだけになりかねません。

特に希望単価は、人による差が大きい部分です。実際にこの会社でも、経営者が考えていた条件と、以前話した一人親方の希望条件には大きな開きがありました。

「一人ずつ違うから、何とも言いようがないんですよね」

まさにその通りで、一人親方を希望単価だけで一括して選別することは難しく、個別の対話を通じて条件を確かめる必要があります。

また、「月に何人くらい紹介できるのか」という見通しも、候補者数だけでは決まりません。自社がどのような仕事を提示できるのか、その内容を相手がどう受け取るのかによって、反応は大きく変わります。

背景

案件の波が読みにくいなか経営者自身のメッセージ対応だけでは接点を広げにくい事情

この課題の背景には、設備工事会社ならではの案件と人員の波があります。

今は協力業者が足りていても、現場が重なれば不足します。一方で、先の案件量が確定していない段階では、一人親方に継続した仕事を約束するのも難しくなります。

今回の会社でも「現場が安定しているわけではない」という認識がありました。この状態で、実態以上に「継続して仕事があります」と伝えても、後の擦れ違いにつながります。

一方、単価を強く打ち出す方法も、自社の考える条件と相手の希望が合わなければ続きません。高い単価だけを入口にすると、今後の仕事量や現場との相性ではなく、金額だけで比較されやすくなります。

仕事量や単価を無理に魅力的に見せるより、自社が実際に出せる案件の内容と見通しを正確に伝えるほうが、長く付き合える相手を見つけやすくなります。

もう一つの背景は、開拓にかかる経営者の負担です。この会社では、経営者が時間のあるときに協力業者募集のプラットフォームを確認し、候補者とメッセージをやり取りしていました。ただ、日々の業務と並行して一人ずつ経験や空き状況を確認するのは、どうしても後回しになりがちです。

地域で長く事業を続けていると、既存の設備会社や職人の名前はある程度分かります。しかし、知人や紹介先だけでは接点が固定され、必要な時期に動ける人が見つからないこともあります。

候補者を見つける作業と、条件を確認して経営者につなぐ作業を分けなければ、一人親方の開拓は経営者の時間に依存します。

解決

地域と工種で広く抽出し電話で経験・稼働・条件を順番に確認する進め方

一人親方の開拓では、公開情報だけで最終候補を決めようとせず、一次抽出と電話確認を分けて考えると進めやすくなります。

1.地域と工種で一次候補をつくる

最初の抽出条件は、確認できる事実に絞ります。今回のような設備工事会社であれば、主な条件は次のようになります。

  • 自社や現場から無理なく移動できる地域か
  • 管工事を扱っているか
  • 給排水・衛生配管と関連性があるか
  • 連絡可能な電話番号が確認できるか

病院の施工経験や希望条件まで、公開情報だけで完全に絞り込もうとすると、候補者を必要以上に落としてしまいます。

公開情報の役割は採否を決めることではなく、電話で確認する候補者をつくることです。

2.電話では四つの項目を順番に確認する

一次候補ができたら、一人ずつ電話で実態を確認します。最初から協力を迫るのではなく、自社が探している人材像を伝え、相手の経験と状況を聞く流れが自然です。

確認したいのは、主に次の四つです。

  1. 経験現場:これまでに入った施設や工事の種類
  2. 得意工種:給排水・衛生配管など、主に対応してきた作業
  3. 稼働状況:現在の予定と、動ける可能性がある時期
  4. 希望条件:対応可能な期間、仕事の受け方、単価などの条件

たとえば、「病院などの大型施設で衛生配管を行っており、同じような経験がある方を探しています」と伝えれば、相手も自分の経験と照らして答えやすくなります。

ここで大切なのは、電話一本で契約まで決めることではありません。経営者が直接話す価値のある相手かどうかを確認し、次の対話につなげることが最初の目的です。

3.先に自社が提供できる条件を棚卸しする

電話を始める前に、自社側の条件も整理しておく必要があります。少なくとも、次の点は実態に沿って説明できる状態にしておきます。

  • 依頼したい施工内容
  • 主な現場の種類と地域
  • 稼働をお願いしたい時期と期間
  • 現時点で見込める仕事量
  • 継続的な依頼の可能性
  • 現場の進め方や守ってほしいルール
  • 自社が提示できる条件の範囲

今回の会社のように、安定した仕事量を約束できない場合は、それも率直に整理します。「常に仕事を出せるとは限らないが、現場が重なる時期に継続して相談できる関係をつくりたい」と伝える方法もあります。

打ち出すべきなのは、他社より良く見える条件ではなく、自社が実際に守れる条件です。

4.単価を最初の訴求軸にしない

希望単価は一人ずつ異なるため、最初から一律の金額を前面に出すと、合う相手を狭めてしまう可能性があります。

まずは施工内容、現場の種類、時期、期間を伝え、そのうえで相手の希望を確認します。金額だけでなく、仕事量や継続性を重視する人もいれば、特定の時期だけ動きたい人もいます。

擦り合わせる際は、次の順番にすると話がぶれにくくなります。

  1. 自社が依頼したい仕事を伝える
  2. 相手の経験と稼働状況を聞く
  3. 相手が重視する条件を確認する
  4. 自社が提示できる範囲と比べる
  5. 合う場合だけ具体的な対話へ進める

一人親方の開拓は、安い人を探す活動ではなく、自社の現場と相手の希望が重なる接点を探す活動です。

5.合わなかった理由も次の抽出条件に反映する

電話を重ねると、「大型現場の経験がない」「希望時期が合わない」「別の工種が中心だった」など、合わない理由も見えてきます。

その情報を残しておけば、次に候補者を探す際の精度が上がります。反対に、経験や条件は合うものの現在は忙しい人は、将来の候補として接点を残せます。

一度の募集で人数をそろえることより、誰が・いつ・どのような条件なら動けるかを蓄積することが、急な人手不足への備えになります。

まとめ

一人親方は公開情報が少ないため、施工実績や希望単価まで調べてから声をかけようとすると、開拓が進みにくくなります。

まずは地域と工種で候補者を抽出し、電話で経験現場、得意工種、稼働状況、対応可能な期間、希望条件を確認する進め方が現実的です。

同時に、自社が提供できる仕事量や継続性、現場の内容、提示可能な条件も整理しておく必要があります。実態以上の安定性や単価を打ち出す必要はありません。

公開情報で候補者をつくり、電話で実態を確かめ、自社が守れる条件との重なりを見る。この順番が、一人親方の開拓を無理なく続ける基本です。

一人親方の探し方と自社の提示条件を一緒に整理するために

「自社の場合、どの地域と工種で探せばよいか」「一人親方に何を伝えればよいか」「仕事量を約束できないなかで、どう声をかけるべきか」といった段階からでも整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。一人親方や協力業者の開拓についても、候補条件の設計、自社が提示できる内容の棚卸し、接点づくりの進め方まで一緒に検討できます。

無理に話を進めることはありません。何から整理すべきか分からない段階でも、今の状況を伺いながら次の一手を考えます。

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