前提

千葉県を中心に新規開拓を進める防水工事会社が直面した「一式で頼みたい」という発注構造

千葉県を中心に動く、ある少人数の防水工事会社では、新しい取引先を増やすため、不動産管理会社への営業を進めていました。自社物件を持つ会社に絞り、100社弱へ連絡したものの、返ってくるのは「長く付き合っている工事会社がある」という反応が中心でした。

話を聞いてもらえた会社からも、求められたのは防水工事だけではありませんでした。

「足場、塗装、防水、床まで一式で受けられるならお願いしたい」

ホームページを見ながら対応工種を確認され、「これはやっていないんですね」と話が止まる場面もありました。不動産管理会社では工種ごとの分離発注が少なく、修繕工事をまとめて任せる傾向が強いためです。

一方で、塗装工事を中心に集合住宅や店舗の修繕を手がける会社からは、価格を前面に出さず、「施工品質を担保できる」という伝え方をしたことで関心を持ってもらえました。その会社は工事を一式で受けながら、専門工事は分離して協力会社へ発注していました。

防水工事会社の新規開拓では、工事の発注者へ直接売り込むだけでなく、「一式で受注した工事を専門業者へ分離発注する会社」を探す視点が欠かせません。

課題

不動産管理会社へ直接営業しても既存業者と一式発注の壁を越えにくい状況

不動産管理会社への営業が難しい理由は、営業件数が足りないからとは限りません。そもそも相手の発注方法と、自社が提供できる工事単位が合っていない可能性があります。

管理会社側から見ると、足場、下地、塗装、防水、床といった工事を個別に発注すれば、工程調整や責任範囲の確認が増えます。そのため、既存の工事会社へ一式で頼めるのであれば、あえて防水工事だけを新しい会社へ切り出す理由が生まれにくくなります。

さらに、修繕工事はタイミングにも左右されます。「昨年施工したばかりなので、当面は予定がない」と言われることもあります。必要性があっても、既存業者との関係が長ければ、受付や担当者の段階で断られやすくなります。

実際、200社を超える候補があっても、担当者へ接触できたのはごく一部でした。連絡先を増やすだけでは、同じ断り理由が積み上がってしまいます。

「やっぱり、防水だけだと厳しいですよね」

この感覚は間違っていません。ただし、防水工事だけで受注できないのではなく、防水だけを外注する発注構造がない相手へ営業しているため、受注につながりにくいと捉えるほうが、次の一手を考えやすくなります。

新規開拓の課題は営業量ではなく、防水工事を単独で発注する可能性がある会社を見分けられていないことです。

背景

専門工事を外へ出す会社には「分離発注」「成長過程」「品質重視」という共通点

反応のあった会社を見ていくと、防水工事を外注する可能性が高い相手には、いくつかの共通点があります。

一つ目は、元請けとして工事をまとめて受注しながら、実施工は工種ごとに分離発注していることです。塗装を主力としつつ、集合住宅や店舗、公共性の高い建物などを手がける会社では、防水の品質を保つために専門会社を探している場合があります。

二つ目は、事業領域を広げている途中にあることです。戸建て工事から始まり、集合住宅や大規模修繕へ進出する会社では、それまで自社や既存の協力会社で対応していた範囲を超え、新しい専門業者が必要になることがあります。

実際に反応が良かったのは、売上が3億円台から4億円台へ伸び、戸建て中心から集合住宅の修繕にも領域を広げている会社でした。すでに10億円規模まで成長し、協力会社が固定された会社よりも、拡大過程にある会社のほうが新規参入の余地を見つけやすいことがあります。

三つ目は、価格よりも品質を重視する施工実績があることです。学校、寺社、集合住宅、店舗など、施工品質や仕上がりへの要求が高い建物を扱う会社は、防水でも「安く施工できる会社」より「任せても品質がぶれない会社」を求める傾向があります。

「社長と会ったときも、すごく品質を求めている感じがしました」

こうした相手には、価格の安さを入口にする必要はありません。施工品質への考え方が一致すれば、専門工事会社として話を聞いてもらえる可能性があります。

また、大手建設会社そのものではなく、その子会社や地域支店も候補になります。本体では登録や書類対応の負担が重くても、子会社や支店が元請けとなる案件では、防水工事だけを一次協力会社へ発注している場合があるためです。

狙うべき相手は、分離発注をしている会社、事業拡大に伴って協力会社が不足している会社、価格より施工品質を重視する会社です。

解決

施工実績と売上推移から外注の可能性を読み、品質を入口に接点をつくる進め方

営業先は、業種名や会社規模だけで決めず、「防水工事を外へ出す理由があるか」で絞ると精度が上がります。リスト作成では、次の項目を一社ずつ確認します。

  • 集合住宅、大規模修繕、学校、店舗などの施工実績があるか
  • 元請けとして一式受注しているか、専門工事を分離発注しているか
  • 主要取引先に建設会社、ハウスメーカー、ビルダーなどがあるか
  • 戸建て中心から集合住宅や修繕分野へ広げているか
  • 直近数年の売上が右肩上がりか
  • 塗装や改修を主力とし、防水を自社の中心工種としていないか
  • 品質、安全性、施工管理を重視する姿勢がホームページに表れているか

特に見落としたくないのが、売上規模ではなく売上の変化です。現在の売上が3億〜5億円程度でも、数年続けて伸びている会社は、受注範囲の拡大に施工体制が追いついていないことがあります。反対に、規模が大きくても協力会社が固定されていれば、新しく入り込める余地は限られます。

営業リストでは「大きい会社か」より、「仕事が増え、対応工種が広がり、新しい協力会社を必要としているか」を優先して見ます。

候補は、次の三つに分けると動きやすくなります。

  1. 分離発注を行う中堅工事会社

塗装や改修を中心に一式受注し、防水を専門会社へ任せる会社です。施工実績ページから、集合住宅や品質要求の高い建物を扱う会社を探します。

  1. 大手建設会社の子会社・地域支店

本体だけを見て候補から外さず、地域ごとの子会社や支店まで確認します。支店単位で協力会社を探している場合もあるため、地域の工事担当者へ接点をつくります。

  1. 戸建てから集合住宅・大規模修繕へ広げる成長企業

売上推移、施工実績、主要取引先を見ながら、事業が広がる途中の会社を探します。協力会社が固まり切る前に接点を持つことが大切です。

営業時は、「防水工事は何でもできます」と広く伝えるより、相手が品質面で困っているかを確かめます。

たとえば、最初の接点では次の順序で話すと、価格競争に入りにくくなります。

  • 集合住宅や大規模修繕で、防水工事を分離発注しているか確認する
  • 現在の協力会社で、品質や施工体制に不足がないか聞く
  • 自社が品質を担保できる工法や現場規模を伝える
  • まずは見積もりや小規模案件から判断してもらう

相談企業でも、1週間から10日ほどで終わる小規模な現場は、若手が次の規模へ進むための経験にもなるという話がありました。新規取引も、最初から大規模案件を狙う必要はありません。相手にとって任せやすく、自社にとっても確実に品質を示せる現場から始めるほうが、その後の継続発注につながりやすくなります。

施工実績を見せる際も、工事件数だけではなく、対応した建物、工法、施工期間、品質管理の考え方が伝わる形にします。価格を下げて入口をつくるのではなく、「この会社なら防水を切り出して任せられる」と判断できる材料をそろえることが重要です。

まとめ

不動産管理会社への直接営業は、物件所有者へ近づける一方で、既存業者との長期取引や一式発注が壁になります。防水工事だけで新規受注を増やすなら、連絡先の数を増やす前に、相手の発注構造を見直す必要があります。

優先したいのは、次のような会社です。

  • 一式受注した工事を専門業者へ分離発注している
  • 戸建てから集合住宅や大規模修繕へ事業を広げている
  • 売上が伸び、既存の施工体制だけでは対応しにくくなっている
  • 大手建設会社の子会社や地域支店として元請け工事を持っている
  • 価格よりも施工品質を重視している

防水工事の新規開拓では、「誰が建物を持っているか」だけでなく、「誰が一式で工事を受け、防水を外注しているか」を探すことが出発点になります。

そのうえで、施工実績、主要取引先、売上推移、対応工種を確認し、品質への考え方が合う会社から優先して接点をつくります。受注のタイミングには波がありますが、発注構造が合う相手との関係を増やしておけば、案件が生まれたときに声をかけてもらえる可能性は高まります。

自社に合う営業先と品質の伝え方を整理したい方へ

「管理会社への営業を続けるべきか」「元請け工事会社へ切り替えるべきか」「どの情報を使ってリストを絞ればよいか」は、自社の対応工種や施工体制によって変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、営業先の選定から提案内容、実行方法まで整理しています。現場、採用、組織、原価、デジタル活用も含め、ものづくりに集中できる建設業界に向けて、建設企業の持続的な成長を支援しています。

「うちの場合は、どこを狙うべきか」「まだ営業方針が固まっていない」という段階でも問題ありません。状況を一緒に整理するところから進められます。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の営業先を考える材料として気軽にお声がけください。

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