前提

県内の改修工事を月2〜4件受注し、元職人の社長が施工から現場管理へ回った専門工事会社

首都圏近郊で、買取再販物件の改修工事や原状回復工事を請け負う専門工事会社があります。1件あたりの受注額は、おおむね250万〜350万円。月に2〜4件ほどの現場が動いています。

社長は、もともと内装職人です。現場監督の経験もあり、独立当初は自ら仕上げ工事を施工する想定でした。しかし、取引先から一括請負を求められたことで、対応する工種と現場数が増えていきました。

「自分で施工するつもりでしたが、現場数が増えすぎて、今はもう管理側に回っています」

現在は、大工や解体、内装などを協力会社へ発注し、社長は打ち合わせ、段取り、納まりの確認、トラブル対応を担っています。

取引先は3〜4社ほどに分散しており、特定の1社に依存している状態ではありません。繁忙期と閑散期の差も小さく、仕事そのものは増やせる感触があります。

一方、将来的には現在の1チーム体制を3チーム程度まで広げ、受注が安定した段階で自社職人を採用したいと考えています。目指しているのは、外注を一気に社員へ置き換えることではなく、案件量を先につくり、その後に内製比率を少しずつ高める形です。

課題

現場数と売上が増えても、外注費と手直し対応で利益が薄くなる状態

現在の悩みは、現場がないことではありません。受注を増やしても、外注費と管理負担が膨らみ、利益が十分に残らないことです。

社長の言葉は率直です。

「正直、全部外注で賄っているので、利益率がめちゃくちゃ良くないんです。現場数が多くなければ、薄利になってしまいます」

自ら現場に入れば、施工分の外注費は抑えられます。しかし、社長が職人へ戻ると、複数現場の打ち合わせや段取りに使える時間が減ります。受けられる現場数も限られます。

反対に、社長が管理へ専念すれば現場数は増やせますが、施工を外注に頼る割合が高くなります。売上は増えても、粗利が残りにくくなります。

さらに影響が大きいのが、指示の行き違いによる手直しです。電話だけでは納まりの細かなニュアンスまで伝わらず、完成後に「少し違った」となれば、再施工が発生します。その費用を発注元へ請求できるとは限りません。

「電話のやり取りだけで最後にニュアンスが違って手直しになるなら、現地へ行った方が早いんです」

外注費だけでなく、社長の移動時間、確認時間、手直し費用まで含めて考えなければ、本当の利益は見えません。

背景

2か月の工期と職人の実働期間がずれ、受注と人員の安定が同時に必要になる構造

自社職人をすぐに採用できない背景には、改修工事特有の稼働のずれがあります。

1件の現場全体は約2か月動いていても、大工が必要なのはそのうち2週間程度です。毎月1〜2件の受注だけであれば、1人または1組の大工で賄えることもあります。ただし、次の現場が予定どおり始まらなければ、仕事の空白が生まれます。

社員であれば、現場が空いている期間にも給与や社会保険料などの固定費が発生します。そのため、売上総額だけを見て採用を決めるのは難しいところです。

「まず現場が安定しないと、社員を雇ったところで、という話になります」

一方、協力会社を増やす場合も、案件がなければ関係を維持できません。新しくつながった職人へすぐに仕事を出せなければ、次に声をかけたときには別の現場へ入っていることがあります。

つまり、受注を先に増やしすぎても施工体制が追いつかず、人を先に増やしても稼働させられません。採用の判断では、年間売上の目標よりも、工種ごとに仕事が何日分続くかを見る必要があります。

また、施工エリアを広げすぎると、社長の現場確認や協力会社の移動負担が増えます。この会社がまず県内に絞って体制を整えようとしているのも、管理密度を落とさないためです。

受注量、施工人員、エリア。この3つがそろって初めて、自社職人を継続的に稼働させられる土台ができます。

解決

3チーム分の案件量を外注で確かめ、採算の合う工種から一人ずつ内製化する進め方

自社職人への切り替えは、「外注費が高いから採用する」だけでは決めにくいものです。先に複数チームが動ける案件量を安定させ、その実績をもとに採用判断をする進め方が現実的です。

整理したい判断軸は、次の4つです。

1.継続受注量を工種別に確認する

確認するのは、会社全体の売上だけではありません。大工、解体、内装など、採用したい職種の仕事が毎月どれだけあるかを分けて見ます。

最低限、次の項目を現場ごとに記録します。

  • 受注額と想定粗利
  • 工種別の施工日数
  • 現場の開始予定日と終了予定日
  • 外注費
  • 手直しに使った日数と費用
  • 社長が現地確認に使った時間

たとえば、現場全体の工期が2か月あっても、大工の実働が2週間なら、採用判断に使うのは2週間分です。「現場が何件あるか」ではなく、「採用する職人の仕事が何日つながるか」で判断します。

2.外注費と給与ではなく、外注総額と雇用総額を比べる

外注費と月給だけを比較すると、社員化した方が安く見えやすくなります。しかし、雇用には給与以外の費用もかかります。

比較する際は、次のようにそろえます。

  • 外注側:外注費、手直し費用、追加の管理時間、移動費
  • 雇用側:給与、社会保険、道具・車両、教育期間、仕事が空いた日の固定費

見るべきなのは、単月の差額ではなく、継続して稼働させた場合の総額です。社員の稼働が安定し、手直しや確認の負担も減るなら、月給以上の効果が出る可能性があります。

反対に、受注の間隔が空きやすい工種は、外注を維持した方が柔軟です。すべての工種を内製化する必要はなく、稼働率と品質改善の効果が高い工種から切り替える考え方が合います。

3.最初の採用は、利益と管理負担の両方に効く職種から選ぶ

採用の優先順位は、外注費が最も高い職種とは限りません。

たとえば、納まりの確認が多く、指示の行き違いによる手直しが発生しやすい職種であれば、自社職人との連携によって管理負担を減らせる可能性があります。一方、短期間しか必要とせず、現場ごとの変動が大きい職種は、協力会社との連携を続けた方が安定します。

優先したいのは、次の条件が重なる職種です。

  • 毎月の施工日数を確保しやすい
  • 外注費の占める割合が大きい
  • 品質や納まりを標準化しやすい
  • 手直しや現地確認の削減効果が大きい
  • 社長や先輩職人が教育できる

採用は人数から決めるのではなく、「どの職種を内製化すると利益と現場管理が最も改善するか」から決めます。

4.外注から社員へ一気に切り替えない

案件量が増えた段階でも、全チームを社員だけで組む必要はありません。

まずは協力会社を活用しながら複数チーム分の仕事を回し、案件量と工種別の稼働を確かめます。そのうえで、安定している仕事を自社職人へ移します。繁閑差や急な増員には、引き続き協力会社で対応します。

進め方としては、次の順番が考えられます。

  1. 県内に施工エリアを絞る
  2. 取引先を分散しながら継続案件を確保する
  3. 協力会社で複数チームを動かす
  4. 工種別の稼働日数と採算を記録する
  5. 稼働と教育の見通しが立つ職種から採用する
  6. 社員と協力会社を組み合わせて受注量を調整する

この順番なら、仕事がない状態で固定費だけが増えるリスクを抑えられます。同時に、外注中心による薄利から少しずつ抜け出せます。

まとめ

外注中心の体制は、受注の波に合わせやすく、会社を立ち上げて現場数を増やす段階では有効です。一方、現場が増えるほど、外注費、手直し、社長の管理時間が利益を圧迫しやすくなります。

自社職人を採用するタイミングは、売上額だけでは決められません。

工種別の仕事が継続していること、一定の稼働率を見込めること、外注総額が雇用総額を上回ること、教育できる体制があること。この4点が採用判断の土台になります。

いきなり雇用を増やすのではなく、まず外注を活用して複数チーム分の案件量をつくる。その実績を見ながら、利益と管理負担の改善効果が高い職種から一人ずつ内製化する。売上を追うだけではなく、利益が残る施工体制へ移るための堅実な進め方です。

自社職人を採用できる案件量と収支を整理したい方へ

「外注費は増えているが、社員を雇えるほど仕事が安定しているか分からない」「どの職種から内製化すべきか判断できない」という段階では、受注量と人件費を同じ表に並べるところから始めると整理しやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場体制、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。自社職人の採用が先か、案件量の確保が先かといった初期段階の整理でも構いません。

無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合に何から数字を確認すべきか迷っている方は、状況をそのままお聞かせください。

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