国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された技能者の能力評価制度について、新たに「型枠解体技能者」と「鉄骨技能者」を対象分野に追加すると発表しました。
能力評価制度は、技能者一人ひとりの技能や経験を、保有資格や就業日数などに応じて4段階で判定する仕組みです。今回の追加により、能力評価が実施される分野は51分野となります。
発表日 | 令和8年10月8日 |
発表内容 | CCUS登録技能者の能力評価基準に新分野を追加 |
新たに追加される分野 | 型枠解体技能者、鉄骨技能者 |
型枠解体技能者の基準策定団体 | 一般社団法人日本型枠工事業協会 |
鉄骨技能者の基準策定団体 | 一般社団法人鉄骨建設業協会 |
能力評価の実施分野数 | 51分野 |
評価方法 | 技能者の経験、知識・技能、マネジメント能力に応じて4段階で判定 |
交付されるカード | 技能レベルに応じた建設キャリアアップカード(ゴールド、シルバー、ブルー、ホワイト) |
今回のポイントは「職人の実力を説明しやすくなる」ことです
今回の発表は、単にCCUSの対象職種が増えた、という話だけではありません。
中小建設業にとって大きいのは、型枠解体や鉄骨に関わる技能者の経験・資格・技能レベルを、社外にも説明しやすくなることです。
現場ではよく、こういう会話があります。
「この人は任せられる」
「若いけれど、かなり現場を見ている」
「資格はあるが、実際の段取り力はもう少し見たい」
こうした評価は、これまで社内や現場内の“肌感覚”に寄りがちでした。もちろん、現場の目は大切です。ただ、採用、処遇、協力会社との関係、元請への説明となると、感覚だけでは伝わりにくい場面があります。
CCUSの能力評価は、そこに一定のものさしを持ち込む仕組みです。
今回、「型枠解体技能者」と「鉄骨技能者」が追加されたことで、該当する工事に関わる会社は、技能者の評価をより制度的に扱いやすくなります。
中小建設企業がまず見るべきこと
まず確認したいのは、自社や協力会社に、今回の対象となる技能者がいるかどうかです。
具体的には、次のような確認です。
- 型枠解体、鉄骨に関わる技能者がCCUSに登録されているか
- 就業履歴がきちんと蓄積されているか
- 保有資格の登録に漏れがないか
- 技能者本人が自分のカードやレベル判定の意味を理解しているか
- 社内の賃金・手当・役割分担と、技能レベルをどう結びつけるか
特に大事なのは、CCUSを「登録して終わり」にしないことです。
登録だけしていても、就業履歴や資格情報が十分に蓄積されていなければ、技能者の評価にはつながりにくくなります。
CCUSは、日々の現場情報を積み上げてこそ意味が出る仕組みです。
採用・定着にも関係してきます
若手や中途採用者にとって、建設業の仕事は魅力も大きい一方で、先が見えにくいと感じられやすい面もあります。
「何年頑張れば、どう評価されるのか」
「資格を取ったら、何が変わるのか」
「職長や責任ある立場になるまでの道筋はあるのか」
このあたりが曖昧なままだと、本人も会社も、育成の会話がしにくくなります。
今回のように能力評価の対象分野が広がることは、技能者の成長段階を見える化し、採用や定着の説明材料を増やす動きと捉えることができます。
たとえば面談の場で、
「次はこの資格を登録しよう」
「就業履歴をきちんと残して、次のレベル判定を目指そう」
「レベルが上がったら、任せる現場や役割も広げていこう」
こうした会話がしやすくなります。
もちろん、制度だけで人は定着しません。給与、人間関係、現場環境、教育体制も重要です。
ただ、努力が見える仕組みがある会社は、若手にとって将来を描きやすい会社になりやすいです。
処遇設計に使うなら、社内ルールとの接続が必要です
能力評価は、技能者を4段階で判定する仕組みです。カードも、ゴールド、シルバー、ブルー、ホワイトという形で技能レベルに応じて交付されます。
ここで中小建設業が考えたいのは、そのレベルを社内の処遇や役割にどうつなげるかです。
たとえば、次のような整理が考えられます。
- 技能レベルと職長候補の選定をどう関係づけるか
- 資格取得支援とCCUS登録をどうセットで運用するか
- レベル判定を手当や昇給の参考情報にするか
- 元請や取引先への技術力説明にどう使うか
- 協力会社の技能者情報をどこまで確認するか
注意したいのは、外部制度をそのまま賃金表に貼り付ければよい、という話ではないことです。
会社ごとに、現場の種類、請け方、責任範囲、人員構成は違います。
だからこそ、CCUSの能力評価を、自社の評価制度や育成方針に翻訳する作業が必要になります。
「うちにはまだ早い」ではなく、小さく整えるのが現実的です
中小建設企業では、日々の現場対応が最優先です。
「CCUSの登録状況まで細かく見切れない」
「資格情報の整理が後回しになっている」
「評価制度を作り込む余裕がない」
そう感じる会社も少なくないはずです。
ただ、今回のように対象分野が広がっていく流れを見ると、技能者情報の見える化は、今後さらに当たり前になっていく可能性があります。
最初から完璧な制度を作る必要はありません。
まずは、次の一歩で十分です。
- 対象職種の技能者を洗い出す
- CCUS登録状況を確認する
- 資格・就業履歴の登録漏れを確認する
- レベル判定を受ける意味を本人に説明する
- 評価・手当・教育とのつなげ方を社内で話し合う
このくらいなら、月次の安全会議や個人面談の延長でも始められます。
大切なのは、技能者の頑張りを会社の中で埋もれさせないことです。
技能者評価を、自社の成長につなげるために
CCUSの能力評価分野が広がる流れは、建設業界全体で「経験」や「技能」を見える形で扱おうとする動きです。
型枠解体や鉄骨に関わる会社にとっては、今回の追加をきっかけに、技能者情報、資格取得、評価、処遇、採用説明を見直すよい機会になります。
「うちの場合、どこから整理すればよいか」
「CCUSと賃金・手当をどうつなげればよいか」
「若手の定着や育成に、能力評価をどう使えるか」
そうした段階でも、考える価値があります。
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