国土交通省は、令和8年度「既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型)」について、第1回公募で15件の採択プロジェクトを決定したと発表しました。あわせて、第2回公募を令和8年10月16日から開始しています。

発表内容

令和8年度既存建築物省エネ化推進事業の採択プロジェクト決定

対象

既存建築物(非住宅)の省エネ改修工事等

第1回公募結果

17件の応募、15件を採択

採択で重視された点

省エネルギー効果が高いもの、躯体(外皮)改修の割合が高いもの等

第2回公募

令和8年10月16日から開始

補助率

補助対象工事の1/3

補助限度額

5,000万円/件。設備部分は2,500万円まで

事業期間

採択年度を含め原則2年以内

今回の発表は、単なる採択結果の公表ではありません。中小建設業にとっては、「建物オーナーに省エネ改修を提案する材料が増えている」という意味があります。特に、病院、介護施設、学校、福祉施設、商業系建物などの非住宅ストックを顧客に持つ会社は、今後の改修提案の切り口として見ておきたい内容です。

今回の事業は「非住宅の省エネ改修」が対象です

今回の既存建築物省エネ化推進事業は、民間事業者等による既存建築物、特に非住宅建築物の省エネルギー性能向上に資する改修等を支援する制度です。

補助対象として示されているのは、主に次の費用です。

  • 省エネ改修工事
  • 省エネ改修工事とあわせて実施するバリアフリー改修工事
  • エネルギー計測に要する費用

工事のイメージとしては、天井・外壁などの断熱、開口部の複層ガラス化・二重サッシ化、高効率空調、換気、給湯、照明の改修などが挙げられています。

建設会社側から見ると、これは「補助金があるから設備だけ入れ替える」という話ではなく、外皮改修、設備改修、バリアフリー改修、エネルギー計測を組み合わせた総合提案型の改修案件です。

採択で重視されたのは「省エネ効果」と「外皮改修の割合」です

国土交通省は、第1回公募で17件の応募があり、そのうち15件を採択したとしています。審査では、学識経験者からなる評価委員会で決定した方針に基づき、次のような事業を優先したとされています。

  • 省エネルギー効果が高いもの
  • 躯体、つまり外皮改修の割合が高いもの
  • その他、省エネ改修として総合的に効果が大きいもの

ここは、中小建設業にとって重要です。

今後、施主に提案する際は「空調を新しくしましょう」「照明をLEDにしましょう」だけでは、制度の考え方と少し距離が出る可能性があります。もちろん設備更新は大事です。しかし、この事業では、躯体・外皮の改修を伴うことが要件の中心に置かれている点を見逃せません。

たとえば、外壁・天井の断熱、窓まわりの改修、空調更新、照明更新を別々に考えるのではなく、建物全体の省エネ効果として整理する必要があります。現場感覚で言えば、「古くなったところを順番に直す」から、「建物の性能をまとめて上げる改修計画をつくる」への転換です。

主な要件は、提案前に必ず確認したい内容です

別紙の事業概要では、補助対象となる建築物の省エネ改修工事について、主な要件が示されています。

特に押さえておきたいのは、次の点です。

  • 躯体(壁・天井等)の省エネ改修を伴うこと
  • 改修前と比較して20%以上の省エネ効果が見込まれること
  • 外皮改修面積割合が20%を超える場合は、15%以上の省エネ効果でも対象となること
  • 改修後に一定の省エネ性能に関する基準を満たすこと
  • 改修後に耐震性を有すること
  • 省エネ性能を表示すること
  • 事例集への情報提供に協力すること
  • 大規模建築物、具体的には2,000㎡以上の改修の場合、LCCO₂評価を実施すること

この要件を見ると、施工会社単独で完結しにくい案件も多いはずです。省エネ効果の算定、省エネ性能の確認、LCCO₂評価、耐震性の確認などが絡むため、設計事務所、設備設計、エネルギー計算に強い専門家との連携が受注力を左右する可能性があります。

中小建設業としては、「うちは元請ではないから関係ない」と切り離すよりも、既存顧客や元請、設計者に対して、どの部分で自社が力を発揮できるかを整理しておく方が現実的です。断熱、開口部、空調、照明、内装復旧、バリアフリー、施設を止めない工程管理など、専門工事会社にも関与できる領域はあります。

採択事業は、医療・福祉・学校系が目立ちます

採択事業一覧を見ると、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、病院、学校、福祉センターなどが含まれています。地域も、広島県、大阪府、埼玉県、和歌山県、福岡県、佐賀県、栃木県、滋賀県などに広がっています。

ここから読み取れるのは、省エネ改修の需要は大都市のオフィスビルだけの話ではないということです。

医療・福祉施設や学校は、空調・照明を長時間使う施設が多く、利用者の快適性や安全性も求められます。一方で、建物が古くなっていて、断熱性能や設備効率に課題を抱えているケースもあります。

地域の建設会社にとっては、こうした施設との関係性がすでにある場合があります。修繕対応、営繕工事、設備更新、内装改修などで出入りしている会社であれば、「次の改修は省エネ補助も含めて検討しませんか」と話を広げるきっかけになります。

中小建設業は「補助金情報」ではなく「提案の入口」として見るべきです

今回の発表で大事なのは、補助金の存在そのものよりも、発注者側の関心がどこに向かっているかです。

建物オーナーにとって、省エネ改修は、電気代・燃料費の削減だけではありません。空調の効きやすさ、室内環境、設備老朽化への対応、バリアフリー、脱炭素への説明責任など、複数の経営課題につながっています。

一方で、施主の立場では、こうした制度を自分で読み解き、要件を満たす改修計画を組み立てるのは簡単ではありません。

だからこそ、建設会社側には、「制度を使えるかどうか」だけでなく、「建物のどこを直せば経営効果が出るか」を一緒に考える姿勢が求められます。

具体的には、次のような準備が有効です。

  • 既存顧客のうち、非住宅建築物を持つ顧客を洗い出す
  • 老朽化した空調・照明・窓・外壁・屋根まわりの相談履歴を確認する
  • 省エネ計算や補助金申請に対応できる外部パートナーを確認する
  • 施設を止めにくい建物での工程管理方法を整理する
  • バリアフリー改修と同時提案できる箇所を見ておく

特に、工事金額が大きくなる改修では、施主の意思決定にも時間がかかります。第2回公募が始まったからといって、すぐに全ての案件が動くとは限りません。ただ、今のうちに顧客の建物課題を把握しておく会社ほど、次の改修需要を拾いやすくなります。

まず見るべきは「自社の顧客に対象建物があるか」です

今回の制度は、すべての建設会社に同じ形で関係するものではありません。住宅中心の会社、公共土木中心の会社、専門工事会社、設備会社、内装会社では、関わり方が変わります。

それでも、次のような顧客がいる会社は、一度確認する価値があります。

  • 病院、診療所、介護施設、福祉施設
  • 学校、研修施設、地域施設
  • 事務所、店舗、商業施設
  • 工場の事務所棟や厚生棟など、非住宅建築物
  • 空調・照明・窓・断熱に課題を感じている建物オーナー

制度の詳細な公募条件や第2回公募の締切などは、今回の発表本文・添付資料だけでは確認できない部分があります。実際に提案を進める場合は、必ず公募要領等の最新資料を確認する必要があります。

ただし、経営判断としては十分です。既存建築物の省エネ改修は、これからの改修市場で重要なテーマになると見てよいでしょう。新築だけでなく、既存ストックをどう性能向上させるか。その流れの中で、地域の建設会社や専門工事会社が果たせる役割は小さくありません。

自社の顧客にどう提案できるかを整理する

今回のような省エネ改修の制度は、資料を読んだだけでは「うちに関係があるのか」「どの顧客に声をかけるべきか」が見えにくいものです。特に中小・専門工事会社では、現場対応をしながら、補助要件、協力会社、概算提案、工程、利益管理まで同時に整理するのは簡単ではありません。

ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで、現場と経営をつなげて整理しています。今回の省エネ改修についても、「自社の既存顧客に対象となりそうな建物があるか」「どの協力会社と組むべきか」「提案前に何を確認すべきか」といった段階から壁打ちできます。

「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すればよいかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要な論点を一緒に整理する場としてご活用ください。

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