国土交通省は、令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通しについて、令和8年9月末時点の内容を公表しました。今回の資料では、応急対応の段階から、道路・河川・海岸・港湾・住宅・まちづくりなどの本復旧と再建を進める段階に入っていることが、かなり具体的な工程とともに示されています。
公表内容 | 令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し |
公表時点 | 令和8年9月末時点 |
主な進捗 | 七尾市・穴水町で災害公営住宅計64戸が完成、国道249号逢坂トンネル工区で一般交通の2車線通行を確保 |
主な見通し | 能越自動車道等・国道249号沿岸部の一部は令和9年春から令和11年春、河川復旧は令和10年度末、砂防・地すべり等は令和11年度末を目指す工程が示される |
建設会社が見る点 | 復旧工事、住宅再建、液状化対策、上下水道、除雪、観光地再生などが複数年にわたり同時並行で進むこと |
今回の発表は、被災地の方向けの復旧・復興情報であると同時に、地域の建設会社にとっては、これから数年の仕事の質と体制をどう組むかを考える材料でもあります。
復旧は「応急対応」から「本復旧・再建」の局面へ進んでいます
資料では、令和6年9月の豪雨による被災分も含め、二次災害に直結する切迫した被災箇所の応急対策は全て終了したと整理されています。
そのうえで、インフラの機能回復対策や本復旧が進み、住まいの再建、漁業の再開、観光の再生など、暮らしとなりわいの再生に向けた動きが本格化しているとされています。
建設業の目線で見ると、ここが大事です。
災害直後の応急復旧は、スピードと即応力が最優先されます。一方で、いま進んでいる本復旧・復興まちづくりは、道路、河川、港湾、住宅、上下水道、観光施設、交通ネットワークなどが絡むため、工程管理、品質管理、安全管理、住民対応、協力会社との連携がより重要になる局面です。
「とにかく直す」段階から、「地域の将来に合わせてつくり直す」段階へ移っている。今回の資料は、その変化を示していると読めます。
道路復旧は令和9年から令和11年にかけて大きな節目があります
道路分野では、国道249号沿岸部や能越自動車道等の復旧見通しが示されています。
主な内容は次の通りです。
- 国道249号沿岸部の逢坂トンネル工区では、令和8年9月18日に逢坂トンネルを活用した一般交通の2車線通行を確保
- 能越自動車道等の一部区間は、令和9年春までの本復旧完了を予定
- 能越自動車道等の残る区間は、大規模崩壊箇所の崩土撤去や大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの完了を予定
- 国道249号沿岸部の権限代行区間約53kmは、用地買収や大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの本復旧完了を予定
ここから見えるのは、道路復旧がまだ短期の話ではないということです。大型構造物、崩土撤去、別線復旧、トンネル活用、迂回路、冬期通行、除雪体制など、現場としては複雑な条件が続きます。
中小建設会社にとっては、直接の元請・下請の受注だけでなく、資機材運搬、除雪、法面、舗装、交通誘導、仮設、維持補修といった周辺業務も含めて、地域の施工力が問われる期間が続くと考えられます。
特に能登のように地形条件が厳しい地域では、「人が足りない」「機械が足りない」「冬場に工程が読みにくい」という悩みが起きやすくなります。今後の工程を見ながら、繁忙期だけでなく、冬期・出水期・観光再開期も含めた体制づくりが必要です。
河川・土砂災害対策は、令和10年度・令和11年度まで続く長期戦です
河川・土砂災害分野では、豪雨による被災箇所も含めた復旧見通しが示されています。
資料では、権限代行の河川について、本格的な復旧工事を令和7年11月に着手し、令和10年度末までに改良工事を含め全ての箇所での完了を目指すとされています。
また、直轄砂防・地すべり事業の恒久対策については、県・市町の対策箇所も含め、令和11年度末までに全ての箇所での完了を目指すとされています。
これは地域建設業にとって、非常に重い意味があります。
河川・砂防・地すべり対策は、単に土を動かす仕事ではありません。出水期の安全確保、仮設排水、河道内作業、住民や農地利用との調整、道路復旧との工程調整などが絡みます。災害復旧工事は、通常工事以上に「安全」と「段取り」が利益を左右します。
また、今回の資料では、令和7年8月6日からの大雨に対して、暫定的な安全性を確保するための対策が効果を発揮し、河岸侵食や土砂流出の軽減に寄与したことも示されています。
つまり、今後の防災工事では、発災後の復旧だけでなく、次の災害時にどこまで被害を抑えられるかがより強く問われます。施工会社側も、設計図どおりに造るだけでなく、現場条件を読み、危険の芽を早く見つけ、発注者や協力会社と共有する力がますます重要になります。
住宅再建では、地域工務店・専門工事会社の役割が続きます
住まいの再建では、災害公営住宅と自力再建の両面で進捗が示されています。
主な内容は次の通りです。
- 七尾市・穴水町で、計2地区64戸の災害公営住宅が完成し、順次入居を開始
- 災害公営住宅の計画戸数3,061戸について、全ての用地確保のめどが立った
- 全ての市町が令和7年度末までに測量・設計等に着手
- 被災者向けの災害復興住宅融資は、令和8年9月時点の金利として、返済期間20年以下1.45%、21年以上1.65%、高齢者向け返済特例2.38%が示されている
- 「いしかわ型復興住宅」モデルプラン集が公表され、モデル住宅も整備
ここで中小建設業が見るべきなのは、住宅再建が「建てる仕事」だけではないという点です。
被災された方にとっては、資金、土地、家族構成、年齢、将来の暮らし方、地域に残るかどうかなど、判断しなければならないことが多くあります。工務店や住宅関連の専門工事会社には、見積を出す前の相談相手としての役割が求められます。
「この予算ならどこまでできるのか」 「補修と建替えのどちらが現実的か」 「高齢の親だけで住むなら、どんな間取りがよいか」 「地元の景観や雪、風、地震への備えをどう考えるか」
こうした相談に丁寧に応えられる会社は、復興局面で信頼を得ます。反対に、忙しさに追われて説明が粗くなると、せっかくの技術が伝わりません。
住宅再建の仕事では、施工力と同じくらい、説明力・資金制度の理解・工程の見える化が大切になります。
上下水道・液状化対策では「これからの地域インフラ」の方向性が見えます
上下水道では、水道施設の本復旧について、令和10年度末までの完了を目指すとされています。
また、本復旧にあたり、衛星技術やデジタル技術を活用した漏水調査、分散型水循環システムの技術実証なども進められています。さらに、令和8年度予算では、水道事業者が分散型システムを導入する際に必要な施設整備を財政的に支援する制度が盛り込まれているとされています。
液状化対策では、住宅傾斜の修復等への支援申請が、石川県・富山県・新潟県で計3,140件受理されていることが示されています。また、内灘町、かほく市、金沢市、羽咋市、高岡市、氷見市、射水市、新潟市などで、液状化対策を含む復興計画の作成や実証実験、対策工事が進められています。
ここから読み取れるのは、今後の建設業では、防災・減災、維持管理、デジタル調査、小規模分散型インフラへの理解が競争力になるということです。
人口減少が進む地域では、従来の大規模集中型インフラをそのまま維持するだけでは難しい場面が増えます。災害復旧をきっかけに、地域の実情に合わせた上下水道、浄化槽、道路、交通、住宅のあり方が見直されていきます。
地元の建設会社にとっては、これは単なる復旧工事ではありません。次の地域インフラの担い手になるための入口です。
和倉温泉・観光再生は、建設業にも波及します
港湾・観光分野でも進捗が示されています。
和倉温泉では、旅館建物と海沿いの護岸が大きく被災しました。資料では、営業再開済みまたは再開予定の旅館前面の護岸について、施工延長790mの復旧工事が令和8年6月25日に完成したとされています。また、和倉温泉旅館協同組合加盟の19旅館のうち、令和8年9月末までに11軒が再開したとされています。
港湾では、災害廃棄物や建設資材等の輸送を優先しながら本格復旧を進め、令和8年度末までに主要係留施設全ての本復旧完了を目指すとされています。
観光地の再生は、宿泊施設や護岸だけの話ではありません。道路、駐車場、外構、設備、内装、解体、修繕、景観、サイン、バリアフリー、電気・給排水など、多くの専門工事が関わります。
地域の観光が戻ることは、地元の雇用や飲食、商業にもつながります。建設会社にとっても、観光再生は地域経済を支える工事であり、自社の仕事を地域の未来と結び直す機会になります。
中小建設会社がいま整理しておきたいこと
今回の発表を、自社経営に引き寄せるなら、次の5点を確認しておきたいところです。
1つ目は、令和9年から令和11年にかけての人員計画です。道路、河川、砂防、住宅、港湾、上下水道が同時に動く地域では、技術者、技能者、重機、協力会社の取り合いが起きやすくなります。
2つ目は、協力会社との関係の再確認です。災害復旧では、急な工程変更や天候リスクがつきものです。単価だけでなく、連絡の速さ、現場対応力、安全意識まで含めたチームづくりが必要です。
3つ目は、安全管理の標準化です。河川、法面、崩壊地、冬期道路、仮設道路など、危険度の高い現場が続きます。現場ごとの経験に頼りすぎず、KY、作業手順、重機接触防止、土砂崩落リスク、出水時対応を会社として仕組みにしておくことが大切です。
4つ目は、住宅再建の相談対応力です。工務店や専門工事会社は、制度をすべて説明できる必要はありません。ただ、災害復興住宅融資、相談窓口、モデルプラン集など、被災者が次に確認すべき先を案内できるだけでも信頼は大きく変わります。
5つ目は、利益管理です。復旧・復興工事は社会的意義が大きい一方で、資材高、人手不足、遠隔地施工、天候待ち、交通規制などで原価が膨らみやすい仕事でもあります。使命感だけで走るのではなく、見積条件、変更対応、実行予算、日々の出来高と原価を丁寧に見る必要があります。
復興に関わる仕事は、地域から必要とされる仕事です。だからこそ、会社が疲弊しない形で続けられる体制をつくることが、地域への責任にもなります。
自社の体制に置き換えて考えるために
今回の国交省資料は、能登の復旧・復興状況を示すものですが、全国の中小建設会社にとっても学びがあります。災害の多い時代には、どの地域でも、復旧、維持管理、防災、住宅再建、地域交通、観光再生が同時に課題になります。
「自社はどの分野で地域に貢献できるのか」 「人員や協力会社の体制は、複数年の工事に耐えられるか」 「原価管理や安全管理は、災害復旧の現場に対応できる粒度になっているか」
こうした整理は、日々の現場が忙しいほど後回しになりがちです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。復旧・復興工事への関わり方、施工体制の見直し、協力会社体制、利益管理、人材確保など、「うちの場合は何から考えるべきか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ち先として必要なときにお声がけください。