国土交通省は、国家機関の建築物等における吹付けアスベスト等の使用実態について、令和8年3月31日時点のフォローアップ結果を公表しました。調査対象は各省各庁が所管する国有財産の建築物等で、調査対象81,912棟のうち、吹付けアスベスト等が使用されている建物は263棟。そのうち252棟は封じ込め等の飛散防止対策済みで、未対策の施設は11棟となっています。

発表日

令和8年10月9日

調査時点

令和8年3月31日

調査対象

各省各庁が所管する建築物等のうち、国有財産(行政財産に限る。)に該当するもの

調査対象件数

81,912棟

吹付けアスベスト等が使用されている件数

263棟(前回273棟)

飛散防止対策済み

252棟(前回261棟)

飛散防止対策未実施

11棟(前回12棟)

使用可能性があるが含有量未調査

1棟(前回1棟)

国土交通省の今後の対応

各省各庁に対し、除去等の対策、使用有無の把握等について保全指導・情報提供を継続

未対策施設は大きく減っているが、現場リスクはゼロではありません

今回の発表で重要なのは、平成17年9月15日時点で702棟あった飛散防止対策未実施の施設が、令和7年度末時点で11棟まで減っていることです。国家機関の建築物では、長期的に対策が進んできたことが分かります。

一方で、「残り11棟がある」ことと、「使用可能性があるが含有量未調査の施設が1棟ある」ことは、公共建築物の改修・営繕工事に関わる会社にとって見落とせない情報です。

これは、新しい規制が始まったという発表ではありません。しかし、古い庁舎、宿舎、学校、合同庁舎などに関わる工事では、アスベストの有無を前提条件として丁寧に確認する姿勢が、引き続き必要であることを示しています。

中小建設業が見るべきポイントは「受注前の確認」です

中小建設業にとって、アスベスト関連のリスクは、施工段階だけでなく受注前から始まります。

特に公共建築物の改修、解体、設備更新、天井・壁・機械室まわりの工事などでは、見積段階でアスベスト関連の調査・対策・作業制限がどこまで整理されているかを確認することが大切です。

確認したい観点は、主に次の通りです。

  • 対象建物に吹付けアスベスト等の使用履歴があるか
  • 発注図書や仕様書に、調査結果や対策状況が明記されているか
  • 封じ込め、囲い込み、除去などの対策済み範囲がどこまでか
  • 立入禁止等の措置がある場合、施工範囲や動線に影響しないか
  • 追加調査や専門業者の手配が必要になった場合、費用と工程をどう扱うか

アスベストそのものの危険性だけでなく、経営上は、工期遅延、追加費用、専門業者手配、作業員の安全確保、発注者との責任分界が重要になります。ここを曖昧にしたまま受注すると、利益管理にも現場運営にも負荷がかかります。

「対策予定」の施設があるということは、今後も関連工事が続く可能性があります

PDFの別添では、飛散防止対策未実施の施設について、対策実施中、令和9年度以降対策予定、令和10年度以降対策予定などの備考が示されています。

この情報から読み取れるのは、国家機関の建築物におけるアスベスト対策は、終わった話ではなく、今後も一定期間続く実務テーマであるということです。

もちろん、今回の資料だけで個別工事の発注時期や内容までは断定できません。ただし、公共建築物の維持保全、改修、解体、設備更新に関わる会社は、アスベスト対応を「特殊な例外」としてではなく、古い建物を扱う際の通常のリスク管理項目として見ておく必要があります。

見積では「作業そのもの」よりも周辺条件を拾うことが重要です

アスベスト関連で利益を崩しやすいのは、除去作業そのものだけではありません。むしろ、周辺条件の見落としが後から効いてきます。

たとえば、使用箇所への立入禁止措置がある場合、現場の動線、仮設計画、資材搬入、他工種との取り合いに影響する可能性があります。対策済みの建物であっても、どの範囲が対策済みなのか、施工範囲に未確認部分がないのかを確認する必要があります。

そのため、見積・受注判断では、「アスベストがあるかないか」だけでなく、「自社の施工範囲と工程にどう影響するか」まで見ることが重要です。

中小企業ほど、追加対応を現場力で吸収しがちです。しかし、アスベストのような安全・環境に関わるテーマは、現場の努力だけで処理するのではなく、契約、見積、工程、安全管理の中に最初から織り込むべきです。

自社で整えておきたい実務対応

今回の発表を受けて、中小建設業がすぐに大きな体制変更をする必要があるとは限りません。ただし、公共建築物や築年数の古い建物に関わる会社は、次のような社内確認をしておくと実務上の守りが強くなります。

  • 営業・見積担当が、アスベスト関連情報を確認するチェック項目を持っているか
  • 現場代理人や職長が、疑わしい建材が出たときの報告ルートを理解しているか
  • 専門業者や調査会社との連携先が整理されているか
  • 追加調査・追加対策が必要になった場合の発注者協議の進め方が決まっているか
  • 安全管理と原価管理の両面で、アスベスト対応を扱えるようになっているか

ポイントは、難しい専門知識を全員に詰め込むことではありません。「気づける仕組み」と「止めて確認できる流れ」を会社として持つことです。

公共工事では、品質・安全・書類・工程がそれぞれ経営に直結します。アスベスト対応は、そのすべてに関係するテーマです。だからこそ、現場任せにせず、会社の標準動作として整理しておく価値があります。

「古い建物の仕事」を利益ある仕事にするために

今回の国土交通省の発表は、国家機関の建築物におけるアスベスト対策が着実に進んでいることを示すものです。同時に、古い建物を扱う工事では、今後もアスベストを含む既存建物リスクへの対応力が問われることも示しています。

中小建設業にとって、これは単なる安全管理の話ではありません。見積精度、工程管理、協力会社ネットワーク、発注者との協議力、現場の判断力がまとまって問われる経営テーマです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社がものづくりに集中できるよう、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、建設企業の持続的成長を支援しています。今回のような安全・法令・公共工事に関わるテーマも、「自社の場合はどこを確認すべきか」「見積や現場管理にどう落とし込むか」という整理から一緒に考えることができます。

まだ論点がはっきりしていない段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要な整理先としてご活用ください。

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