国土交通省は、令和8年度の「主要建設資材需要見通し」を公表しました。主要5資材のうち、セメント、生コンクリート、普通鋼鋼材は前年度を上回る需要見通しとなっています。一方で、木材は横ばい、アスファルトは減少とされています。
発表機関 | 国土交通省 |
発表日 | 令和8年10月9日 |
対象 | 令和8年度 主要建設資材需要見通し |
増加見通し | セメント、生コンクリート、普通鋼鋼材 |
横ばい見通し | 木材 |
減少見通し | アスファルト |
推計のもと | 令和8年度建設投資見通し、資材ごとの原単位、需要実績等 |
公表された令和8年度の見通しは、次のとおりです。
資材 | 令和8年度需要見通し | 前年度比 |
|---|---|---|
セメント | 3,100万t | 1.5% |
生コンクリート | 6,100万m3 | 1.2% |
木材 | 775万m3 | ±0.0% |
普通鋼鋼材 | 1,570万t | 1.1% |
アスファルト | 75万t | ▲2.6% |
まず押さえたいのは「資材価格」ではなく「需要の向き」です
今回の発表は、資材単価そのものを示すものではありません。国土交通省は、建設投資見通しや資材ごとの原単位などを使って、令和8年度に国内でどれくらい主要建設資材が使われるかを推計しています。
そのため、この記事で経営者が見るべきなのは、「価格が上がるか下がるか」を直接読むことではなく、資材需給の方向感を把握することです。
特に、セメント、生コンクリート、普通鋼鋼材はいずれも前年度比で増加見通しです。増加率は大きくありませんが、令和7年度実績ではセメント、生コンクリート、普通鋼鋼材が前年度比で減少していたことを踏まえると、一部資材では需要が下げ止まり、持ち直す方向が示されたと見ることができます。
中小建設業にとって重要なのは、見積の前提を固定しすぎないことです
需要が増える資材では、地域や品目によって、価格、納期、手配のしやすさに差が出る可能性があります。ただし、今回の資料だけで「必ず値上がりする」「必ず不足する」とまでは言えません。
それでも、経営実務としては、見積時点の資材単価をそのまま長期間固定して考えないことが重要です。
特に次のような工事では、確認の優先度が高くなります。
- 生コンクリートの使用量が多い工事
- 鉄筋、形鋼、小形棒鋼など鋼材の比率が高い工事
- 着工まで時間が空く案件
- 契約から施工までの間に資材単価が動きやすい案件
- 協力会社や商社の見積有効期限が短い案件
中小建設業では、受注時の利益が、施工時の資材価格や外注費の変動で削られることがあります。今回のような需要見通しは、「今の見積で本当に利益が残るか」を点検するきっかけとして使うのが現実的です。
セメント・生コン・鋼材の増加は、受注計画にも関係します
今回、前年度比で増加見通しとなったのは、セメントが1.5%、生コンクリートが1.2%、普通鋼鋼材が1.1%です。大幅な増加ではありませんが、これらは建築・土木の幅広い工事に関係する基礎資材です。
つまり、需要の増加は、特定の大企業だけの話ではなく、地域の専門工事会社や元請・下請の受注環境にも影響し得る情報です。
たとえば、生コンや鋼材を多く使う案件を複数抱える会社では、受注量だけでなく、次の観点も見ておく必要があります。
- 資材の手配先に余力があるか
- 希望納期で入るか
- 単価見積の有効期限はいつまでか
- 追加発注時の単価条件はどうなるか
- 工期変更時に資材費の変動をどう扱うか
受注を増やす局面では、売上だけを見ると前向きに見えます。一方で、資材調達と原価管理が追いつかなければ、売上は増えても利益が残りにくくなることがあります。ここは経営者が早めに押さえたい点です。
アスファルトは減少見通し、舗装関連では案件の質を見る必要があります
アスファルトは、令和7年度実績が前年度比8.3%減少の77万t、令和8年度見通しは前年度比2.6%減少の75万tとされています。
この数字だけで舗装工事全体を単純に判断することはできませんが、少なくとも主要資材の中では、アスファルトは他の資材と異なり減少方向が示されている点は見ておきたいところです。
舗装関連の会社では、受注件数や売上見込みだけでなく、次のような確認が有効です。
- 利益率の低い案件に偏っていないか
- 小規模補修や維持管理工事の比率はどうか
- 使用資材の数量と実行予算が合っているか
- 外注・重機・運搬費まで含めた採算が取れているか
需要が伸びる資材もあれば、減る資材もあります。大切なのは、自社の工種に関係する資材が、どちらの方向に動いているかを分けて見ることです。
社内で確認したい3つの実務ポイント
今回の発表を受けて、中小建設会社がすぐに確認したいのは、次の3点です。
1. 見積単価の更新ルール
過去の単価表や前回案件の実績をそのまま使っていないかを確認したいところです。特に資材比率の高い工事では、見積作成時に最新の仕入条件を確認する運用が重要になります。
2. 見積有効期限と契約条件
資材業者や商社からの見積には、有効期限がある場合があります。自社の見積書にも、必要に応じて前提条件を明記しておくことが大切です。
特に、着工まで時間がある案件では、資材価格や納期の前提を曖昧にしたまま受注しないことが利益防衛につながります。
3. 工事別の粗利管理
資材需要が動く局面では、会社全体の売上や粗利率だけでは変化を見落とすことがあります。工事ごとに、材料費、外注費、労務費、運搬費を分けて見る必要があります。
「どの工事で利益が残り、どの工事で利益が削られているか」を早く把握できる会社ほど、次の受注判断がしやすくなります。
今回の見通しは、来期の利益計画を見直す材料になります
今回の国土交通省の発表は、単なる統計情報ではありません。中小建設業にとっては、来期の受注計画、見積基準、資材調達、原価管理を見直すための外部環境データとして使えます。
特に、セメント・生コン・鋼材を多く使う会社は、今後の案件について、受注時点の採算だけでなく、施工時点までの変動も見込んでおくことが大切です。
一方で、需要見通しはあくまで全国ベースの推計です。実際の影響は、地域、工種、取引先、施工時期によって変わります。だからこそ、全国の数字をそのまま結論にするのではなく、自社の工事構成に置き換えて考えることが重要です。
自社の見積・原価管理にどう落とし込むかを整理する
資材需要の見通しを見ても、「うちの場合はどの資材を重く見ればよいのか」「見積条件をどこまで変えるべきか」「工事別の利益管理をどう整えればよいのか」は、会社ごとに答えが変わります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような資材環境の変化についても、自社の工種・受注構成・見積運用に引き寄せて、何から整えるべきかを一緒に整理できます。
「まだ相談するほど整理できていない」「まずは自社への影響を壁打ちしたい」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングで落ち着いてご相談ください。